【鬼神は邪無し】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語)

鬼神は邪無し

【ことわざ】
鬼神は邪無し

【読み方】
きじんはよこしまなし

【意味】
鬼神は、曲がったことや道理にはずれたことをしないということ。

ことわざ博士
鬼神は、死者の霊魂や天地の神霊を指す言葉だよ。
助手ねこ
神霊は正しい道から外れない、という考えを表す場面で用いるニャン。

【類義語】
・鬼神に横道無し(きじんにおうどうなし)
・神明に横道なし(しんめいにおうどうなし)

「鬼神は邪無し」の語源・由来

ことわざを深掘り

「鬼神は邪無し」は、「鬼神」と「邪無し」から成る言い方です。「鬼神」は「きじん」と読み、死者の霊魂や天地の神霊を指します。「邪」は「よこしま」と読み、正しくないこと、道にはずれていることを表します。

このことわざは、鬼神をただ恐ろしいものとして見るのではなく、人間と違い、正直で曲がったところがなく、道理にはずれたことをしないものとしてとらえる考えにもとづいています。

古い形として重要なのは、『徒然草(つれづれぐさ)』(1330〜1331年ごろ成立か、鎌倉時代、吉田兼好著)第二百七段に出てくる「鬼神は邪なし」です。『徒然草』は、随想や見聞を記した随筆で、全244段、一説には243段から成る作品です。

第二百七段では、亀山殿を建てるために土地を整えていると、大きな蛇が数えきれないほど集まっている塚が見つかります。人々は、その蛇たちをこの土地の神だと考え、簡単に掘り捨てるのは難しいと述べます。

その場で一人の大臣が、「王土に居らむ蟲、皇居を建てられむに、何の祟りをかなすべき。鬼神は邪なし。咎むべからず。唯皆掘りすつべし。」と答えます。これは、天皇の治める土地にいる虫が、皇居を建てることに対して祟りをなすはずはなく、鬼神は道理に背いたことをしない、気にせず掘り捨てればよい、という意味です。

その後、塚は崩され、蛇は大井川に流されますが、祟りはまったく起こりません。この結末によって、「鬼神は邪なし」という言葉は、神霊を恐れすぎるよりも、正しい道理に照らして物事を見る姿勢を示すものとして読まれます。

この言い方は、後に「鬼神に横道無し」という形でも広く用いられます。「横道」は、もとは本道からそれた道を表しますが、そこから人間としての正しい道を外れること、道理にはずれたことを表す意味にもなりました。

「鬼神に横道無し」の古い用例には、光悦本謡曲『鍾馗(しょうき)』(1470年ごろ)に出る「鬼神に横道なし」があります。『鍾馗』では、鍾馗の霊が、悪鬼を滅ぼして国土を守る誓いがあると語る場面で、この言い方が用いられています。

また、室町末期成立の御伽草子『酒呑童子(しゅてんどうじ)』にも、「きじんにわうどうなきとかや」という形が出てきます。酒呑童子の物語は、源頼光とその四天王による鬼退治を描いた作品として、絵巻、草双紙、浄瑠璃、歌舞伎などにも広がりました。

能の『大江山』にも、鬼神である酒呑童子が頼光たちに向かって「鬼神に横道なきものを」と訴える場面があります。ここでは、鬼神であっても、偽りやだまし討ちのような道を外れたことはしない、という意味で響いています。

近代には、泉鏡花の『草迷宮』(1908年、泉鏡花著)にも「鬼神に横道なし」という言い方が出てきます。助けを求める声に応じようとする場面で、情に逆らう刃はないはずだ、という考えとともに使われています。

このように、「鬼神は邪無し」は『徒然草』の形をよく伝える表現であり、「鬼神に横道無し」と同じ考えを表します。神霊や鬼神は道理に外れたことをしないという、古い信仰と道徳観が結びついたことわざです。

「鬼神は邪無し」の使い方

健太
テストで隣の席の人の答えが少し見えちゃって、書き直そうか一瞬迷ったんだよね。
ともこ
ええっ、それは絶対にダメだよ、健太くん。
健太
うん、鬼神は邪無しっていうし、神様は僕のズルを見逃さないと思って自分の力だけで解いたよ!
ともこ
正しい判断ができてよかったね、きっと神様も健太くんの正直な努力を応援してくれるよ。

「鬼神は邪無し」の例文

例文
  • 鬼神は邪無しという言葉を思い出し、彼は神前でうそをつくことをやめた。
  • 祖父は、鬼神は邪無しだから、願い事の前に自分の心を正せと教えた。
  • 鬼神は邪無しとは、神霊が道理にはずれたことをしないという古い考えを表す。
  • その物語では、鬼神は邪無しという考えが、人間のずるさと対比されている。
  • 鬼神は邪無しということわざは、恐れだけでなく正しさを重んじる心を伝えている。
  • 彼女は鬼神は邪無しを引き合いに出し、どんな時も曲がった手段を選ばないように語った。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・吉田兼好『徒然草』1330〜1331年ごろ成立か。
・『光悦本謡曲・鍾馗』1470年ごろ。
・『御伽草子・酒呑童子』室町末期成立。




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