【ことわざ】
客の朝起き
【読み方】
きゃくのあさおき
【意味】
泊まり客が、その家の人より早く起きると、もてなす側が応対に困り、迷惑になるということ。また、物事の順序が逆になって、処置に困ること。


【英語】
・put the host out.(もてなす側を困らせる)
・inconvenience the host.(もてなす側に迷惑をかける)
【類義語】
・客の朝起き宿の迷惑(きゃくのあさおきやどのめいわく)
・客の朝起きと昼の行灯置き所に困る(きゃくのあさおきとひるのあんどんおきどころにこまる)
【対義語】
・早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく)
「客の朝起き」の語源・由来
「客の朝起き」は、泊まり客が宿主やその家の人よりも早く起き出すと、もてなす側が応対に困るという、日常の作法から生まれたことわざです。「客」は、訪ねてくる人、招かれてくる人、旅人や止宿人を表す言葉です。
「朝起き」は、朝早く起きること、また、その人を指します。このことわざでは、単に早起きがよいか悪いかを問題にしているのではなく、よその家に泊まった客が、家の人の準備より先に動いてしまう点を問題にしています。
泊まり客は、食事、寝具、洗面、戸締まりなど、宿主の世話を受ける立場にあります。そのため、朝まだ準備が整わないうちに客が起きて動き始めると、宿主は急いで支度をしたり、どう扱えばよいか迷ったりします。
このことわざの異形に、「客の朝起き宿の迷惑」があります。「宿」は、やどや、はたごや、泊まりやど、旅館などを表す言葉で、ここでは客を泊める側の場所や家を指します。
「宿の迷惑」と続く形では、ことわざの意味がいっそうはっきりします。泊まり客の早起きは、客本人にはよい習慣のように思えても、もてなす側には準備を急がせる行動になりやすい、ということを表しています。
この言い方は、旅館だけでなく、知人の家に泊まる場合にも当てはまります。家ごとに朝の支度の順序があり、客が早く起きすぎると、台所、洗面所、食事の用意などの段取りを乱すことがあります。
近い言い方に、「客の朝起きと昼の行灯置き所に困る」があります。昼の行灯は、明るい昼間には役に立ちにくく、置き場所にも困るものです。そこに客の朝起きを並べることで、悪気はなくても扱いに困るものをたとえています。
このことわざは、早起きそのものを否定する言葉ではありません。自分の家で早く起きることと、よその家で相手の準備より先に起き出すこととは、意味が違うという点を教えています。
のちには、泊まり客の早起きという具体的な場面から広がり、物事の順序が逆になって処置に困ることにも用いられるようになりました。先に来るべきものと後に来るべきものが入れ替わると、受ける側が対応しにくくなるという考えが土台にあります。
「迷惑」は、ある行為によって他の人が不利益を受けたり、不快に感じたりすることを表します。また、どうしてよいか迷うこと、とまどうことも表します。このことわざでは、その両方の意味が重なっています。
客は、もてなされる立場であると同時に、相手の暮らしや準備を乱さないように気を配る立場でもあります。「客の朝起き」は、よい習慣でも、場所や相手の都合によっては迷惑になることがあると教えることわざです。
つまり、このことわざは、相手の家にいるときには、自分の都合だけで動かず、もてなす側の段取りを思いやることが大切だと伝えています。小さな行動にも、相手への気配りが必要だという生活の知恵がこめられています。
「客の朝起き」の使い方




「客の朝起き」の例文
- 友人の家に泊まった翌朝、六時に居間へ出るのは客の朝起きになりかねない。
- 旅館で朝食の時間よりずっと早く食堂へ行けば、客の朝起きとして迷惑になることがある。
- 相手の家の都合を考えずに早く動き出すのは、客の朝起きと同じだ。
- 招かれた先では、客の朝起きにならないよう、家の人の動きに合わせることも大切だ。
- 準備が整う前に参加者が集まりすぎて、係の人は客の朝起きのように対応に困った。
- 早起きはよい習慣だが、泊まり先では客の朝起きにならないよう注意が必要だ。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。























