【ことわざ】
犬と猿
【読み方】
いぬとさる
【意味】
仲の悪い間柄のたとえ。互いにいがみ合い、気が合わない関係をいう。


【英語】
・be on very bad terms(非常に仲が悪い)
・fight like cats and dogs(激しく、何度も言い争う)
【類義語】
・犬猿の仲(けんえんのなか)
・犬と猫(いぬとねこ)
・水と油(みずとあぶら)
・氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず)
【対義語】
・馬が合う(うまがあう)
・水魚の交わり(すいぎょのまじわり)
「犬と猿」の語源・由来
「犬と猿」は、犬と猿という二つの動物を、仲の悪いものの代表として並べた言い方です。もとは、実際の犬と猿の性質を細かく述べる言葉というよりも、「犬と猿のように合わない」という、世間に広く通じるたとえとして用いられてきました。現在でも、人と人、家同士、組織同士などが強く反発し合う関係を表します。
古い用例として、室町末から近世初めごろの狂言『竹生島参』に、「むかしより犬と猿とは、中のわるいものじゃと申まするが」とあります。ここでは、犬と猿が昔から仲の悪いものだという前提で語られており、この時代にはすでに、犬と猿を不仲のたとえにする言い方が、人々に分かる形で使われていたことが分かります。
この用例が出てくる狂言『竹生島参』は、太郎冠者が主人に無断で出かけたあと、竹生島へ参ったと答え、島で見たことを語るという筋立ての作品です。太郎冠者は、島の様子をそのまま話すのではなく、秀句、つまり駄洒落や語呂合わせを交えながら語ります。その会話の中で、犬と猿が同じ場にいるなら、仲の悪い様子があったのではないか、という発想が自然に持ち出されます。
さらに、野村八良校『狂言記 下』(1926年・大正15年、有朋堂書店)所収の『狂言記外編』にも、『竹生島詣』の形で同じ趣向が伝わっています。この本文では、主人が「世の世話に、中のわるいものを犬と猿とのやうなと云ふ」と述べています。ここでの「世の世話」は、世間でよく言うたとえに近い意味であり、「犬と猿とのやうな」という言い回しが、仲の悪さを表す決まったたとえとして使われていたことを示します。
のちには、同じ考えを漢字二字でまとめた「犬猿」や、「犬猿の仲」という形も広く用いられるようになりました。「犬猿の仲」は、犬と猿のように互いにいがみ合う関係を表す言い方です。「犬と猿」は、もとの動物の取り合わせをそのまま言う形であり、「犬猿の仲」は、そのたとえをさらに短く固定した形といえます。
このことわざは、単に好みが少し違う相手に使うよりも、会うたびに言い争う、互いに相手を受け入れにくい、協力しようとしてもすぐに反発してしまうような関係に向いています。古い狂言の会話にも、現代の言い方にも共通しているのは、「相手と並ぶだけで対立が起こりそうだ」という、強い不仲のたとえとしての働きです。
「犬と猿」の使い方




「犬と猿」の例文
- 二人は犬と猿のように、会議のたびに意見をぶつけ合う。
- 兄と弟は小さいころ犬と猿だったが、今では互いに助け合っている。
- 隣の部署とは犬と猿の関係で、共同作業がなかなか進まない。
- あの二人を同じ係にすると、犬と猿のように言い争いが始まる。
- 犬と猿の仲だった両家が、祭りの準備をきっかけに話し合うようになった。
- 彼らは犬と猿ほど気が合わず、同じ計画に参加してもすぐ対立する。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編『小学館 プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・野村八良校『狂言記 下』有朋堂書店、1926年。























