【ことわざ】
愛想尽かしは金から起きる
【読み方】
あいそづかしはかねからおきる
【意味】
男女や夫婦の仲で、相手に冷たくなったり別れを考えたりする原因は、金銭の問題であることが多いということ。お金のだらしなさや生活の不安が、愛情や信頼を失わせることを表す。


【英語】
・When poverty comes in at the door, love flies out of the window(貧乏が戸口から入ると、愛は窓から飛び出す)
・When poverty comes in at the doors, love leaps out at the windows(貧しさが戸口から入ると、愛は窓から飛び出す)
【類義語】
・金の切れ目が縁の切れ目(かねのきれめがえんのきれめ)
・夫婦喧嘩も無いから起こる(ふうふげんかもないからおこる)
「愛想尽かしは金から起きる」の語源・由来
このことわざの中心にある「愛想」は、人に接するときの態度という意味のほか、人に対する好意や信頼感を表す言葉です。「愛想を尽かす」といえば、あきれて好意や親しみをなくし、相手を見限ることを指します。つまり「愛想尽かし」は、心の中の好意がなくなるだけでなく、その気持ちが冷たい態度や別れの言葉として外に出るところまで含む表現です。
「愛想が尽きる」という言い方は、室町時代中期ごろの『義経記』にも「あいそうもつきて」という形で出てきます。また、江戸時代前期の俳諧撰集『鷹筑波』(1638年)にも、好意がなくなる意味につながる用例があります。早い時期から、「愛想」は単なる人当たりのよさだけでなく、人への好意や信頼そのものを表す言葉として使われていました。
「愛想尽」という名詞は、近松門左衛門の浄瑠璃『生玉心中』(1715年ごろ・江戸時代中期)に「あいそづかし」という形で出てきます。この用例では、相手に対する好意や愛情が持てなくなって、つれなく扱う言葉や態度という意味がすでに表れています。後には、料理屋などの勘定や勘定書を「愛想尽」と呼ぶ使い方も生まれましたが、このことわざの中心は、あくまで人の気持ちが離れるという意味にあります。
さらに「愛想づかし」は、浄瑠璃(じょうるり)や歌舞伎(かぶき)の世話物における、別れの場面を表す言葉としても重みを持ちました。そこでは、恋愛関係にある男女の間に葛藤(かっとう)が起こり、女が男の出世や金策、義理のために、心にもなく縁を切ろうとする場面を指します。近松門左衛門の『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』あたりに始まり、江戸時代中期以後に型として定まったと考えられます。
この演劇上の「愛想づかし」では、女が本心では男を思っていても、事情に迫られて冷たくふるまいます。その真意を男が理解できず、本当の心変わりと思い込むため、悲劇へ進むことが多くありました。ここでは、恋心そのものよりも、義理、金策、生活上の事情が男女の仲を動かしてしまうという見方が強く出ています。
「愛想尽かしは金から起きる」は、このような「愛想尽かし」という言葉に、「金から起きる」という原因の説明が結びついたことわざです。「金」は、金属ではなく、貨幣・金銭・お金を指します。お金の不足、金づかいのだらしなさ、借りた金を返さないことなどが、親しい関係の信頼をこわす原因になりやすい、という経験則を短く言い表しています。
「愛想尽かしも金から起きる」という形も使われます。「は」と「も」の違いはありますが、どちらも、男女や夫婦の仲が金銭問題によって冷えたり、別れにつながったりすることを表します。近いことわざに「金の切れ目が縁の切れ目」がありますが、こちらは金銭で成り立つ関係一般にも広く使われます。それに対して「愛想尽かしは金から起きる」は、男女や夫婦など、より親しい間柄の気持ちの冷え込みを強く表すことわざです。
古い言い方では、女性が男性に冷たくなる場面を中心に述べられることが多くありました。しかし、現代の使い方では、性別を決めつけるよりも、金銭への不誠実さが愛情や信頼を損なうという戒めとして読むのが自然です。お金は生活を支える大切なものですが、扱い方を誤ると、人と人との心のつながりまで傷つけることがある、という教えを含んだことわざです。
「愛想尽かしは金から起きる」の使い方




「愛想尽かしは金から起きる」の例文
- 度重なる借金が原因で婚約が破談になり、愛想尽かしは金から起きるという結果になった。
- 夫が生活費を入れずに遊び歩いたため、妻の心が離れ、愛想尽かしは金から起きる形となった。
- 恋人に何度も金を貸して返してもらえず、愛想尽かしは金から起きるという言葉を思い出した。
- 愛想尽かしは金から起きるというように、金銭の約束を軽く見ると親しい仲も続きにくい。
- 家計のことを話し合わずに浪費を重ねれば、愛想尽かしは金から起きるのも無理はない。
- 友人の姉は相手の金づかいの荒さに疲れ、愛想尽かしは金から起きると言われるような別れ方をした。
主な参考文献
・日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松井俊諭「愛想づかし」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Elizabeth Knowles ed.,『Little Oxford Dictionary of Proverbs Second Edition』Oxford University Press、2016年。























