【ことわざ】
朝雨に傘要らず
【読み方】
あさあめにかさいらず
【意味】
朝の雨はすぐにやみ、長く降り続かないので、出かけるときに傘の用意はいらないということ。


【英語】
・Morning rain soon clears.(朝の雨はすぐ晴れる)
・A morning shower soon passes.(朝のにわか雨はすぐ過ぎる)
・Rain before seven, clear by eleven.(朝早い雨は昼前には晴れる)
【類義語】
・朝雨に鞍置け(あさあめにくらおけ)
・朝雨は女の腕まくり(あさあめはおんなのうでまくり)
・卯時雨に笠を脱げ(うのときあめにかさをぬげ)
【対義語】
・朝焼けは雨、夕焼けは晴れ(あさやけはあめ、ゆうやけははれ)
・朝虹は雨、夕虹は晴れ(あさにじはあめ、ゆうにじははれ)
「朝雨に傘要らず」の語源・由来
このことわざは、朝に降る雨についての昔からの観天望気の知恵を、そのまま短く言い表したものです。ここでいう「朝雨」は朝のうちの雨、「傘要らず」は、その雨は長引かないから傘はいらない、という見立てです。
大事なのは、だれか一人の考えから生まれた言葉ではなく、毎日の暮らしの中で天気を見てきた人びとの経験が後ろにあることです。天気予報のない時代には、空の色、雲の流れ、風の向き、雨の降り方が、その日の行動を決める大切な手がかりでした。
このことわざと同じ考え方をもつ古い言い方は、今の形だけでなく、いくつかの別形でも伝わっています。つまり、「朝の雨はすぐ上がる」という考えそのものが先に広まり、そのあと生活の道具や言い回しの違いに応じて、形を少しずつ変えながら受けつがれてきたと考えられます。
その古い例として分かりやすいのが、『諺苑(げんえん)』に見える「卯時雨に笠を脱げ」です。『諺苑』は1797年(寛政9年・江戸時代後期)に成ったことわざ集で、この言い方の説明に「朝雨にかさいらず」という意味がそえられています。
「卯時雨」は早朝に降る雨のことですから、「笠を脱げ」は、もう雨具を気にしなくてよい、という判断になります。ここではまだ今の表記そのものではありませんが、朝の雨は長引かないという考えが、江戸時代後期にははっきりことわざとして言い表されていたことが分かります。
同じ仲間のことわざに「朝雨に鞍置け」もあります。これは、朝の雨はすぐ晴れるのだから、馬に鞍を置いて外出の支度をしなさい、という意味で、雨をおそれて出かけるのをやめる必要はない、という気持ちまで含んでいます。
また、農家の言い方として「朝雨蓑要らず」という形も伝わっています。ここでは「傘」ではなく「蓑」が出てきますが、言いたいことは同じで、朝の雨は長く続かないから重い雨具を気にしなくてよい、という生活の知恵です。
さらに、「朝雨は女の腕まくり」という古いことわざもあります。今では言い回しの感じがかなり古くなっていますが、朝の雨はそれほどおそれるものではなく、すぐにやむことが多い、という点では「朝雨に傘要らず」と同じ流れにある表現です。
このように見ていくと、「朝雨に傘要らず」は一つだけぽつんと生まれた言葉ではありません。笠、傘、蓑、鞍といった語を入れ替えながら、朝の雨の扱い方を教える天気のことわざとして、広く言い伝えられてきた言葉だと分かります。
なお、このことわざは、どんな土地でも、どんな季節でも必ず当たるという決まりを言ったものではありません。昔の人が暮らしの中で積み重ねた経験を短くまとめた言葉であり、とくに早朝のにわか雨についての知恵として伝えられてきたところに、このことわざの味わいがあります。
今の表記は「朝雨に傘要らず」と書くことが多いですが、「朝雨に傘いらず」と書かれることもあります。表記に少し違いがあっても、朝の雨はすぐやむことが多いので、必要以上に心配しなくてよいという意味は変わりません。
「朝雨に傘要らず」の使い方




「朝雨に傘要らず」の例文
- 朝の通学時間に降っていた小雨はすぐに上がり、まさに朝雨に傘要らずだった。
- 西の空が明るかったので、祖父は朝雨に傘要らずと言って畑へ向かった。
- 駅へ向かうときに雨粒が落ちてきたが、母は朝雨に傘要らずだと落ち着いていた。
- 遠足の朝にぱらついた雨も長く続かず、朝雨に傘要らずという言葉どおりの空模様になった。
- 朝雨に傘要らずとはいうものの、山の天気では当てにしすぎないほうがよい。
- 急な小雨を見てあわてたが、空を見上げると朝雨に傘要らずと思える明るさが残っていた。























