【ことわざ】
浅い川も深く渡れ
【読み方】
あさいかわもふかくわたれ
【意味】
簡単そうに見えることでも油断せず、十分に注意して行うべきだという教え。小さなことだからと軽く見て失敗してはならない、という戒め。


【英語】
・Better safe than sorry.(用心するに越したことはない)
・Look before you leap.(行動する前によく確かめよ)
・Think twice.(もう一度よく考えよ)
【類義語】
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
・念には念を入れよ(ねんにはねんをいれよ)
・勝って兜の緒を締めよ(かってかぶとのおをしめよ)
【対義語】
・危ない橋を渡る(あぶないはしをわたる)
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
「浅い川も深く渡れ」の語源・由来
このことわざは、浅い川なら安全だと決めつけず、深い川を渡るときと同じように注意して進め、という実際の行動から生まれた言い方です。川が浅く見えても、流れの速さや川底の状態までは見た目だけで分からない、という暮らしの感覚が土台にあります。
昔は今ほど橋が多くなく、川を歩いて渡ることも少なくありませんでした。そのため、浅そうに見える場所でも足を取られたり流されたりするおそれがあり、この言い方は切実な注意として受け止められていたのです。
古い例として確かめられるのは、1656年(明暦2年・江戸時代前期)の『世話尽(せわづくし)』です。そこでは巻二の「曳言之話」に、あさき川もふかふ渡れ という形で載っています。
『世話尽』は、皆虚(かいきょ)が編んだ俳諧の手引き書です。五巻から成る江戸時代前期の書物で、世の中で使われていたことばや俗語、ことわざなどを集めてまとめたものです。
国立国会図書館の解説によれば、この書物の巻二には諺などが集められていました。そこにこのことわざが入っていることから、1656年(明暦2年・江戸時代前期)までには、すでに言いならされた表現として広く通じていたことが分かります。
ここで大事なのは、川の深さそのものより、油断しやすい場面でこそ注意せよ、という教えです。大きな危険に気をつけるのは当たり前で、むしろ小さなことを軽く見ないところに、このことわざの重みがあります。
古い形では「浅き川」となっており、今は「浅い川」と言いかえることが多いですが、教えの中身は変わりません。また、古い仮名づかいの「ふかふ」は、今の「深く」に当たります。
このことわざが長く受け継がれたのは、実際の川渡りだけでなく、人の行動全体にそのまま広げやすかったからです。簡単そうな仕事、慣れた作業、よく知っている相手ほど、気のゆるみから失敗が起こるという感覚に、よく合う言い方だったのです。
類義のことわざに「石橋を叩いて渡る」があることからも、日本語では、危なさが小さく見える場面でももう一段用心する姿勢が大切にされてきたことが分かります。安全そうに見えるものをそのまま信じ切らず、まず確かめてから進むという考え方が共通しています。
一方で、このことわざは、ただ怖がれという意味ではありません。危険を大きく言い立てるのではなく、気を抜かずに確かめながら進めばよいという、落ち着いた慎重さを勧めるところに特色があります。
今では実際に川を歩いて渡る場面は少なくなりましたが、このことわざは、学校の実験、道具の扱い、約束の確認、事務手続きなどにもそのまま当てはまります。昔の生活から生まれた言い方が、今もなお、小さなことほど丁寧に向き合えという教えとして生き続けているのです。
「浅い川も深く渡れ」の使い方




「浅い川も深く渡れ」の例文
- 理科の実験では、浅い川も深く渡れという気持ちで薬品の量を量り直した。
- 母は、浅い川も深く渡れと言って、旅行前日に薬と保険証をもう一度確かめた。
- 小さな約束でも、浅い川も深く渡れのつもりで集合時間を前の日に確認した。
- 運動会の放送係は、浅い川も深く渡れを忘れず、原稿の順番とマイクの音量を先に確かめた。
- 新人の私は、浅い川も深く渡れの姿勢で入力ミスを一件ずつ見直した。
- インターネットの手続きでも、浅い川も深く渡れと思って送信前に氏名と住所を確認した。























