【ことわざ】
義理と褌欠かされぬ
【読み方】
ぎりとふんどしかかされぬ
【意味】
男に褌が欠かせないように、人との関係で守るべき義理も欠くことのできない大切なものだということ。


【類義語】
・義理を立てる(ぎりをたてる)
【対義語】
・義理張るより頬張れ(ぎりばるよりほおばれ)
「義理と褌欠かされぬ」の語源・由来
「義理と褌欠かされぬ」の「義理」は、ここでは、物事の筋を通し、人との関係に応じた務めを果たすことを指します。「褌」は、腰に巻いて下半身を覆う布で、かつて男子が日常的に身につけていた下着です。人として守るべき義理と、身につけるのが当然であった褌とを並べ、どちらも欠かせないものだと説いています。
まじめな教えを、褌という身近な品物に結び付けたところに、このことわざのおもしろさがあります。形の上では、「義理とかけて褌と解く。その心は、どちらも欠かされぬ」という三段なぞに近く、意外な二つを並べることで、義理の大切さを印象深く伝えています。
「義理」と「褌」を組み合わせた古い用例は、雑俳(ざっぱい)の『雲鼓評万句合(うんこひょうまんくあわせ)』(1750年・江戸時代中期)に出てきます。そこには、「何事も義理と褌で持たしゃば」とあります。現在と同じ形ではありませんが、何事も義理と褌によって保たれるという言い方から、この二つがともに欠かせないものとして、すでに一組にされていたことが分かります。
その後、ことわざや古い言い回しを集めた『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序・江戸時代、松葉軒東井編)や『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)にも、同じ系統の言い方が収められました。『諺苑』は、当時の俗語やことわざをいろは順に配し、その意味や出典を記した書物です。
このことわざには、「義理と褌は掛かねばならぬ」「義理と褌はせねばならぬ」などの別形もあります。褌を身につけることを、古くは「褌をかく」といいました。そのため、「掛かねばならぬ」という形では、褌を身につけなければならないという具体的な意味が、義理を守らなければならないという教えと重なっています。
また、ある時期から、結びの部分を省いた「義理と褌」という形も広まり、上方のいろはかるたの一部に採り入れられました。結論まで言わなくても、「義理」と「褌」を並べるだけで、どちらも欠かせないという意味が通じるほど、この取り合わせがよく知られるようになったのです。
昭和27年の壺井栄の小説『二十四の瞳(にじゅうしのひとみ)』には、「ぎりと ふんどしゃ かかしちゃ なるまい」という言葉が出てきます。これは、「義理と褌は欠かしてはならない」という意味の、方言を交えた言い方で、江戸時代から続くことわざが、昭和になっても人々の会話の中で生きていたことを伝えています。
このように、「義理と褌欠かされぬ」は、男子の身近な必需品であった褌をたとえに用い、世間を渡るには義理を忘れてはならないと説いたことわざです。主眼はあくまで義理の大切さにあり、少しこっけいな取り合わせによって、人との信頼を守る教えを覚えやすく表しています。
「義理と褌欠かされぬ」の使い方




「義理と褌欠かされぬ」の例文
- 義理と褌欠かされぬと考え、忙しくても恩師の退職を祝う会に出席した。
- 以前助けてもらった友人が困っているなら、義理と褌欠かされぬで今度はこちらが力を貸す番だ。
- 義理と褌欠かされぬという言葉どおり、父は世話になった近所の人への礼を忘れなかった。
- 長年会社を支えてくれた取引先への恩を返すのは、義理と褌欠かされぬというものだ。
- 義理と褌欠かされぬと、祭りの準備を手伝ってくれた仲間全員にきちんと礼を述べた。
- 遠方で暮らしていても、義理と褌欠かされぬと心得て、親戚の大切な祝いには便りを送った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松葉軒東井編、宗政五十緒校訂『たとへづくし―譬喩尽』同朋舎、1979年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・『雲鼓評万句合』1750年。
・壺井栄『二十四の瞳』光文社、1952年。























