【故事成語】
木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くす
【読み方】
きのながきをもとむるものはかならずそのこんぽんをかたくす
【意味】
大きな発展や長く続く成果を望むなら、まず根本となる基礎をしっかり固めなければならないという教え。


【英語】
・lay a strong foundation.(しっかりした基礎を築く)
【類義語】
・本立ちて道生ず(もとたちてみちしょうず)
【対義語】
・砂上の楼閣(さじょうのろうかく)
「木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くす」の故事
「木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くす」は、中国・唐の魏徴が、太宗李世民に差し出した文章『諫太宗十思疏』に出てくる一節にもとづきます。原文は「求木之長者、必固其根本」で、木が大きく伸びることを望む者は、まずその根もとをしっかりさせなければならない、という意味です。
魏徴は、580年から643年に生きた唐の政治家で、太宗に仕え、よく諫言した人物として知られます。史書の編修にも関わり、太宗の政治を支えた代表的な臣下の一人でした。
太宗李世民は唐の第2代皇帝で、在位は626年から649年です。その治世は「貞観の治」と呼ばれ、唐の基礎を確立し、繁栄と平和の時代を開いた時期として知られます。
『諫太宗十思疏』は、貞観十一年、西暦637年に魏徴が太宗へ差し出した奏章です。この文章では、君主が国を長く安定させるために考えるべき十の心得を挙げ、徳を積み、欲を慎み、臣下の言葉をよく受け入れることを勧めています。
この言葉は、文章の冒頭近くで、木・水・国を並べる形で述べられています。魏徴は、木を長く伸ばしたいなら根本を固め、水の流れを遠くまで届かせたいなら泉の源を深くし、国を安らかにしたいなら徳義を積まなければならない、と説きました。
ここでいう「木」は、目に見える成果や発展をたとえています。「根本」は、その成果を支える基礎、つまり学問なら基本の理解、政治なら徳と信頼、生活なら日々の積み重ねに当たります。
魏徴はさらに、泉の源が深くなければ流れは遠くへ行かず、根が固くなければ木は長く伸びず、徳が厚くなければ国は治まらない、と続けています。これは、表に出る大きな結果だけを求めても、それを支えるものが弱ければ長続きしないという考えです。
このたとえは、太宗への政治上の忠告として使われています。国を安定させたいなら、宮殿を立派にしたり力を示したりするよりも、まず君主自身が倹約を守り、民を思い、徳を厚くすることが必要だと述べているのです。
同じ文章には、根を切って木の茂ることを求め、源をふさいで水の流れを長くしようとするようなものだ、という逆のたとえも出てきます。基礎を壊しながら成果だけを望むことの無理を、読者に分かりやすく示しています。
この言葉は、もとは国を治める者への戒めでしたが、後には広く、どんな物事にも基礎が大切だという教えとして受け取られるようになりました。勉強でも仕事でも、長く続く力を身につけるには、まず根本を固めることが欠かせないという意味で使われます。
「木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くす」の使い方




「木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くす」の例文
- 新しい事業を急いで広げる前に人材育成を進めるのは、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすという考えにかなっている。
- 英語が上手になりたいなら、単語と文法をおろそかにしてはならず、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすである。
- 強いチームを作るには、派手な作戦より毎日の基礎練習が大切で、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすといえる。
- 町の将来を考えるなら、まず教育と安全を整えるべきで、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすという教えが当てはまる。
- 美しい建物を建てるには地盤調査と基礎工事が欠かせず、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすを思わせる。
- 研究で大きな発見を目ざすなら、基本となる資料の読み込みが必要で、木の長きを求むる者は必ず其の根本を固くすという姿勢が求められる。
主な参考文献
・劉昫等『旧唐書』後晋、10世紀中頃。
・魏徴『諫太宗十思疏』637年。
・呉楚材・呉調侯編『古文観止』清、1694年ごろ。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・旺文社編『旺文社世界史事典 三訂版』旺文社、2000年。























