【故事成語】
一挙手一投足
【読み方】
いっきょしゅいっとうそく
【意味】
細かな一つ一つの動作や行動。また、ほんのわずかな努力や骨折り。


【英語】
・one’s every move(人のすることすべて、一挙一動)
【類義語】
・一挙一動(いっきょいちどう)
「一挙手一投足」の故事
「一挙手一投足」は、唐の文人である韓愈の文章『応科目時与人書』に出てくる表現にもとづきます。この文章は、『全唐文』巻五五三にも収められており、力のある人に自分の苦しい状況を理解してほしいという願いを、たとえ話で伝えたものです。
その文章では、海や大河のほとりにいる特別な生き物が、水を得れば風雨を起こして天にのぼるほどの力を持つのに、水がないために干からびて苦しむ、というたとえが語られます。高い山や険しい道に隔てられているわけではないのに、自分では水にたどりつけず、かわうそに笑われるような状態にある、という内容です。
このとき、「力有る者」がその苦しみを哀れんで水のある所へ移してくれるなら、それは「一舉手一投足之勞」、つまり一度手を挙げ、一度足を動かすほどのわずかな手間にすぎない、と述べています。ここでの「一挙手一投足」は、もともと「ほんの少しの労力」という意味で使われています。
しかし、その生き物は、自分が普通のものとは違うという誇りを持ち、頭を下げ、耳を垂れ、尾を振って哀れみを乞うようなことはしない、と語ります。そのため、力のある人がそばに来ても、じっと見るだけで助けてくれるとは限らない、という緊張した場面になります。
韓愈は最後に、自分がまさにその生き物に似ている、と結びます。自分の才能や志を生かすには、力のある人の助けが必要であり、その助けは相手にとってはごく小さな手間である、という気持ちを、このたとえにこめているのです。
日本語では、まず「一挙手一投足の労」のように、わずかな努力や骨折りを表す言い方として受け入れられました。近代の用例では、田山花袋の『春潮』(1903年)に、少しの手間という意味で使われた例が示されています。
一方で、明治時代には「細かい一つ一つの動作や行動」という意味も広がりました。徳富蘇峰の『将来之日本』(1886年)には、行動のすべてを指す意味に近い用例が示されています。
このように、「一挙手一投足」は、もとは「手を一度挙げ、足を一度動かすほどのわずかな労力」を表しました。そこから、手足の動きそのものに目を向ける言い方として、「細かな一つ一つの動作や行動」という現在よく使われる意味へ広がった表現です。
「一挙手一投足」の使い方




「一挙手一投足」の例文
- 観客は、決勝戦に出た選手の一挙手一投足を息をのんで見守った。
- 面接では、言葉だけでなく一挙手一投足にも落ち着きが求められる。
- 赤ちゃんの一挙手一投足がかわいらしく、家族は思わず笑顔になった。
- 舞台に立つ役者の一挙手一投足には、長い練習の成果が表れていた。
- 記者たちは、新しい市長の一挙手一投足に注目していた。
- 祖父は、初めて茶道を習う孫の一挙手一投足を静かに見守った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・韓愈『応科目時与人書』唐。
・董誥等編『全唐文』清、1814年。























