【鰯の頭も信心から】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

鰯の頭も信心から

【ことわざ】
鰯の頭も信心から

【読み方】
いわしのあたまもしんじんから

【意味】
鰯の頭のようにつまらないものでも、信じる人には尊くありがたいものに思われるということ。物事をかたくなに信じる人を、皮肉っていう場合にも用いる。

ことわざ博士
信心の力によって、客観的には価値が乏しいものまで特別に見えることを表しているよ。
助手ねこ
迷信や思い込みをからかう場面にも、信じる心の不思議さをいう場面にも用いるニャン。

【英語】
・Faith can turn even the simplest of things into something of great value(信じる心によって、ごくつまらないものにも大きな価値があるように思える)

【類義語】
・白紙も信心次第(しらかみもしんじんしだい)

「鰯の頭も信心から」の語源・由来

ことわざを深掘り

「鰯の頭も信心から」は、節分の夜に焼いた鰯の頭を柊(ひいらぎ)の枝にさして、門や軒、窓に置く習俗と深く関わることわざです。この鰯の頭は、鬼を退散させるためのまじないとして用いられました。

鰯は、日本人にとって古くからなじみの深い魚で、庶民の食べ物として広く用いられてきました。一方で、鯛などに比べると卑しい魚と受け取られる面もあり、ことわざの中では「つまらないもの」の代表として扱われやすくなりました。

節分の行事では、焼いた鰯の強いにおいと柊のとげによって、鬼を近づけないと考えました。鰯の頭と柊を戸口にさす風習は、魔よけの形として伝えられ、「鰯の頭も信心から」ということわざも、この節分行事に由来します。

「鰯の頭」という形そのものの古い用例としては、『山之井(やまのい)』(1648年・江戸時代前期、北村季吟著)に、節分の都の習俗として「外面にはいはしのかしらとひらぎのえだを鬼の目つきとてさし出し」とあります。鰯の頭と柊の枝を外へ出し、鬼を防ぐものとして用いた様子がうかがえます。

ことわざとしての早い段階の例には、『毛吹草(けふきぐさ)』(寛永15年〈1638年〉序・江戸時代前期、松江重頼編)があります。俳諧に関わる書物の中に見えることから、この言い方は江戸時代前期にはすでに知られていた表現だといえます。

また、『東海道名所記(とうかいどうめいしょき)』(万治年間成立・江戸時代前期、浅井了意撰)六には、「鰯(いはし)のかしらも信じからなれども」という形が出てきます。ここでは、現在の「信心から」とは少し違う「信じから」という形が使われています。

この「信じから」は、信じ方しだいだ、という意味をもつ言い方です。のちに「信心から」という形に整い、神仏を信じる心や、信じることそのものの力を表す言葉として、ことわざの形が固まっていきました。

『風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん)』(1763年・江戸時代中期、平賀源内作)には、「節分の狗骨(ひひらぎ)、鰮(イワシ)の頭も信仰からとはいへども」という形が出てきます。この用例では、「信心」ではなく「信仰」が使われ、節分の鰯の頭と柊をめぐる発想が、笑いや風刺を含む文脈に入っています。

「頭」の読み方にも変化があります。古くは「かしら」と読む形が多く、江戸時代中期ごろから「あたま」という読みも現れ、現在では「あたま」が主流になっています。

このことわざには、皮肉としての働きが強くあります。つまり、外から見れば価値のないものをありがたがっている人を、少し冷ややかに見る言い方として使われてきました。

一方で、古くは、つまらないものでも信心しだいでご利益があるという、信心を肯定する使い方もありました。この二つの向きが並んで残ったため、「信じる心の不思議さ」と「信じ込みすぎへの皮肉」の両方を含むことわざになりました。

のちには、京のいろはかるたにも「鰯の頭も信心から」が含まれ、広く覚えられることわざとして定着しました。節分の身近な風習から生まれた言い方が、人の信じる心や思い込みを表す言葉へ広がったのです。

現在では、宗教だけでなく、占い、お守り、験担ぎ、根拠の薄い思い込みなどにも用いられます。ただし、人が大切にしている信仰や心の支えを軽く扱う響きもあるため、相手を傷つけないよう、使う場面には注意が必要です。

「鰯の頭も信心から」の使い方

健太
兄ちゃんが、試験の朝に、ただの古い消しゴムを机に置くと落ち着くって言っていたよ。
ともこ
何年も使った消しゴムだから、兄さんには特別なお守りみたいに思えるんだね。
健太
お父さんは、鰯の頭も信心からだなって笑っていたよ。でも兄ちゃんは本気で大事にしているみたい。
ともこ
からかいすぎないほうがいいね!それで落ち着いて実力を出せるなら、心の支えになるもの。

「鰯の頭も信心から」の例文

例文
  • 祖母は古い木片を家のお守りとして大切にしており、家族は鰯の頭も信心からと思って見守った。
  • 友人は試合前に同じ靴下をはくと勝てると信じていて、鰯の頭も信心からというほかなかった。
  • 根拠の薄い占いを絶対だと言い張る彼の態度には、鰯の頭も信心からという皮肉が当てはまる。
  • ただの小石でも本人が幸運の石だと信じれば、鰯の頭も信心からで心強く思えるものだ。
  • 高価な道具よりも古い鉛筆を合格のお守りにする姿を見て、母は鰯の頭も信心からとほほえんだ。
  • 鰯の頭も信心からとはいえ、病気の治療を迷信だけに頼るのは危うい。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・松江重頼編『毛吹草』寛永15年序。
・北村季吟『山之井』1648年。
・浅井了意『東海道名所記』万治年間成立。
・平賀源内『風流志道軒伝』1763年。




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