【ことわざ】
一生添うとは男の習い
【読み方】
いっしょうそうとはおとこのならい
【意味】
男性が女性を口説くとき、「一生愛して離れない」と約束するのは、よくある決まり文句だということ。甘い言葉をそのまま信じすぎないよう戒める意味をもつ。


【英語】
・He that speaks me fair and loves me not, I’ll speak him fair and trust him not(うわべは親切でも愛がない相手は、こちらも丁寧に接するが信用しない)
【類義語】
・信言は美ならず、美言は信ならず(しんげんはびならず、びげんはしんならず)
「一生添うとは男の習い」の語源・由来
このことわざは、中国古典の特定の故事から生まれたものではなく、日本語の恋愛や婚姻に関わる言い回しをもとにした表現です。「一生添う」とは、一生をともにして夫婦として暮らすことを思わせる強い約束です。「添う」には、そばを離れずにいるという意味のほか、夫婦になる、連れ添うという意味があります。
「添い遂げる」という言葉にも、夫婦となって一生暮らすという意味があります。古い用例では、『清原宣賢式目抄』(一五三四年)に、夫婦として添い通す意味の「そいとけず」が出てきます。また、歌舞伎『幼稚子敵討』(一七五三年)には、困難があっても夫婦になる決意を表す「添とげる心」が出てきます。これらは、「添う」「添い遂げる」が、ただ近くにいるだけでなく、夫婦として一生をともにする意味をもって使われてきたことを示します。
一方、「習い」は、しきたり、ならわし、習慣、また世間で当たり前とされることを表す言葉です。そのため「男の習い」は、男性の生まれつきの性質を断定する言い方ではなく、昔の社会で「男性が女性を口説くときによくある言い方」という、皮肉をふくんだ言い回しとして働きます。
「口説く」という言葉は、もともと、くどくどと訴える、熱心に説く、頼み込むという意味をもちました。男女の間では、相手に自分の恋心を受け入れてもらおうとして言い寄る意味で使われます。一五三五年ごろの『京大二十冊本毛詩抄』には、男女の間で相手をなびかせようとする「口説く」の古い用例が出てきます。
このことわざでは、「一生添う」という重い約束と、「習い」というやや軽い言葉が組み合わさっています。重い約束であるはずの「一生ともにいる」という言葉を、口説くときのありふれた文句としてとらえるため、そこに皮肉が生まれます。聞き手にとっては大切な約束に聞こえても、言った人が必ず守るとは限らない、という冷静な見方を表しています。
現在では、男女関係そのものだけでなく、甘い約束や大げさな言葉をすぐに信じないようにという戒めとしても理解できます。ただし、現代の使い方では、すべての男性を一まとめに決めつける言葉としてではなく、言葉の美しさと本心が必ずしも同じではないことを示す、古い皮肉をふくむことわざとして受け止めるのがよいでしょう。
「一生添うとは男の習い」の使い方




「一生添うとは男の習い」の例文
- 彼の甘い約束を聞いて、祖母は一生添うとは男の習いだから行動を見なさいと言った。
- 一生添うとは男の習いというように、立派な言葉だけで相手の誠実さを判断してはいけない。
- 友人は一生添うとは男の習いを思い出し、勢いだけの告白をすぐには信じなかった。
- 結婚をにおわせる言葉を何度も聞かされ、一生添うとは男の習いということわざが頭に浮かんだ。
- 一生添うとは男の習いとは、甘い言葉の裏に本当の責任があるかを見きわめるための戒めである。
- ドラマの主人公が大げさな愛の言葉を口にする場面は、一生添うとは男の習いの例として分かりやすい。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・Thomas Preston編『A Dictionary of English Proverbs and Proverbial Phrases』Whittaker & Co.、1880年。























