【ことわざ】
甲斐無き星が夜を明かす
【読み方】
かいなきほしがよをあかす
【意味】
体の弱い人は自分の健康に気をつけるため、かえって長生きするというたとえ。弱々しい光の星が、一夜を通して朝まで光りつづける姿にたとえた言い方。


【英語】
・A creaking door hangs longest.(きしむ戸ほど長くもつ。弱そうな人が、かえって長く生きる)
【類義語】
・一病息災(いちびょうそくさい)
「甲斐無き星が夜を明かす」の語源・由来
「甲斐無き星が夜を明かす」は、中国の古い人物や事件をもとにした故事成語ではなく、夜空の星の姿を人の生き方に重ねたことわざです。いまにも消えそうな弱い星が朝まで光りつづけるという見立てから、体の弱い人がかえって長命であることを表します。
「甲斐」は、もともと「行動の結果として現れるしるし」や「期待できるだけの値うち」を表す言葉です。「甲斐無い」は、その甲斐がない、つまり効果がない、値うちがない、ふがいない、という意味をもつ言い方です。
古い用例では、『竹取物語』(9世紀末〜10世紀初め成立、平安時代前期)に「あなかひなのわざや」とあり、思いどおりにならないことを「かひなし」と言ったという説明が添えられています。のちに「甲斐無い」は、望んだ結果が得られないことや、取るに足りないことを表す語として広く使われるようになりました。
このことわざの「甲斐無き星」は、役に立たない星というより、強く輝く力がなく、たよりなく見える星を指す表現です。明るく強い星は山の陰に隠れてしまうことがあっても、弱々しい星が朝まで残る、という対比によって、外から見た強さだけでは寿命や持ちこたえる力は分からない、という考えを表しています。
「夜を明かす」は、寝ないで朝を迎える、一晩中過ごすという言い方です。『竹取物語』にも「夜をあかし日を暮す」という古い用例があり、人が夜を過ごして朝を迎える意味で使われています。このことわざでは、その言い方を星に移し、星が夜通し空に残って朝を迎えるように表しています。
つまり、このことわざは、星の強い弱いを人の体の強い弱いに重ねた表現です。見た目には弱々しい星が、ていねいに夜を越すように、体の弱い人も自分を守るために用心し、結果として長く生きることがあります。そこには、強そうに見えることだけを頼みにしてはいけない、という生活の知恵も含まれています。
「一病息災」も、少し病気のある人のほうが体を大切にして長生きするという考えを表す言葉です。「甲斐無き星が夜を明かす」は、その同じ考えを、弱い星が朝まで光るという詩的な比喩で言い表したものといえます。
「甲斐無き星が夜を明かす」の使い方




「甲斐無き星が夜を明かす」の例文
- 病弱だった祖母は食事と休息に気を配り、甲斐無き星が夜を明かすように九十歳を越えた。
- 若いころから持病のある父は無理を避けて働き、甲斐無き星が夜を明かすという言葉どおり長く元気に暮らした。
- 体の弱い友人は毎日体調を記録しており、甲斐無き星が夜を明かすという生き方をしている。
- 頑丈だと油断していた兄より、慎重に暮らした弟のほうが長命で、甲斐無き星が夜を明かすと思わされた。
- 町内の老人会では、病気がちだった人ほど節制を守り、甲斐無き星が夜を明かす例として語られた。
- 甲斐無き星が夜を明かすというように、弱さを知っている人は自分を守る工夫を重ねる。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・Jennifer Speake ed., 『The Oxford Dictionary of Proverbs Fifth Edition』Oxford University Press.2008年。























