【ことわざ】
金は三欠くに溜まる
【読み方】
かねはさんかくにたまる
【意味】
義理・人情・交際の三つを犠牲にするほどでなければ、金はたまらないということ。世間並みの生活を続けながら財産を築くことの難しさを表す。


「金は三欠くに溜まる」の語源・由来
「金」は金銭を指し、「三欠く」は三つのものを欠くこと、「溜まる」は蓄えが増えることを表します。このことわざで欠くものとされる三つは、義理・人情・交際です。
人との関係を保つには、冠婚葬祭や頼まれ事、日々の付き合いなどで、金を使わなければならない場面が生じます。そうした支出まで断つほど徹底しなければ、思うように金はたまらないという発想を、短い一句にまとめたものです。
「三欠く」は、「三つを欠く」という内容を一続きの言い方に縮めた表現です。「義理を欠く」「人情を欠く」「交際を欠く」と同じ形を三度重ねることで、人付き合いを犠牲にするほどの厳しい節約を、印象深く表しています。
ただし、このことわざは、義理や人情を捨てることを無条件に勧める言葉ではありません。金をためることばかりを優先し、人との結び付きを顧みない金持ちへの皮肉やねたみを込めて使う場合もあります。
「溜まる」は、物事が少しずつ集まって多くなることを意味します。特に、蓄えが増える場合には「貯まる」とも書きますが、このことわざは「金は三欠くに溜まる」の形で辞典に掲げられています。
この表現に関係する古い記録として、『倉吉打吹ライオンズクラブ会報』第48号(昭和49年、倉吉打吹ライオンズクラブ発行)に掲載された、林秀夫「昔人間たわごと」があります。そこでは、金もうけの秘訣として語られる「三欠く主義」を取り上げ、その考え方を批判しています。
ただし、この昭和49年の文章で挙げられている三つは、「義理」「恥」「情」です。現在の「金は三欠くに溜まる」で一般的な「義理」「人情」「交際」とは組み合わせが異なり、同じ「三つを欠く」という発想にも、いくつかの形があったことが分かります。
さらに、1982年刊のことわざ辞典を資料母体とした2009年の研究には、「金は三欠くに溜まる」が、日本の金銭に関することわざの一つとして掲げられています。昭和後期には、現在と同じ形が、辞典に収録されるまでに定着していました。
昭和49年の「三欠く主義」と、1982年に収録された「金は三欠くに溜まる」との直接のつながりは断定できません。しかし、昭和後期には、金をためるには人として大切なものまで欠かなければならないという考えを、「三欠く」で表す言い方が複数の形で用いられていました。
現在の形では、三つが「義理・人情・交際」に定まり、世間並みの暮らしや人付き合いを続けていては、金は容易にたまらないという意味を表します。人間関係を保つことと財産を築くことが両立しにくい場合があるという、暮らしの中の厳しい見方が込められています。
このように、「金は三欠くに溜まる」は、蓄財には並大抵ではない節約が必要だと強調すると同時に、金だけを優先して義理や人情を失う生き方への批評も伝えることわざです。
「金は三欠くに溜まる」の使い方




「金は三欠くに溜まる」の例文
- 祖父は、交際費まで切り詰めなければ財産は築けないとして、金は三欠くに溜まると言った。
- 祝い事や見舞いが重なって貯金が減り、母は金は三欠くに溜まるという言葉を思い出した。
- 彼は金は三欠くに溜まるを地で行くように、人との付き合いをすべて断って貯蓄に励んだ。
- 社長は金は三欠くに溜まると考え、人情を顧みない経費削減を進めた。
- 金は三欠くに溜まるとはいうものの、信頼まで失っては商売は長続きしない。
- 金は三欠くに溜まるということわざには、蓄財の厳しさと金持ちへの皮肉が込められている。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・尚学図書編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・銭清・浮田三郎「日本語と中国語における『金銭』に関する諺対照比較研究2」『ニダバ』第38号、西日本言語学会、2009年。
・倉吉打吹ライオンズクラブ『倉吉打吹ライオンズクラブ会報』第48号、1974年。























