【ことわざ】
烏を鵜に使う
【読み方】
からすをうにつかう
【意味】
能力のない者を、才能を必要とする重要な地位に置くことのたとえ。


【英語】
・not the right person for the job.(その仕事にふさわしい人ではない)
【類義語】
・不適任(ふてきにん)
・力不足(ちからぶそく)
【対義語】
・適材適所(てきざいてきしょ)
「烏を鵜に使う」の語源・由来
「烏を鵜に使う」は、烏を鵜の代わりに使おうとしても、魚を捕る役には立たないという見立てから生まれた言い方です。鵜は水にもぐって魚を捕らえる水鳥で、鵜飼ではその力を利用して魚を捕ります。
この言葉の背景には、鵜飼(うかい)という漁があります。鵜飼は、鵜を用いて魚をとる漁法で、特に鮎漁と結びついて知られてきました。
烏も鵜も黒っぽい鳥ですが、役目はまったく違います。鵜は水中にもぐって魚を捕ることができますが、烏をその代わりにしても、鵜飼の役目は果たせません。
古い用例として、『愚管抄(ぐかんしょう)』(1220年ごろ・鎌倉時代初期、慈円著)巻七に、「何事にも、さながらからすをうにつかはるることにて侍めれば」とあります。これは、「何事につけても、まるで烏を鵜として使われるようなことです」という意味に近い表現です。
『愚管抄』は、歴史の流れを「道理」によって考えようとした史論書です。その中でこの表現が使われていることから、鎌倉時代初期には、すでに「ふさわしくない者を重要な役目に用いる」という比喩として通じていたことが分かります。
同じ発想は、『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』(1254年・鎌倉時代中期、橘成季著)にも出てきます。この説話集は、約700話の説話を内容ごとに分けて集めた中世の作品です。
『古今著聞集』には、猿が烏を捕まえ、人が鵜を使って魚を捕らせるのを見まねして、烏に同じことをさせようとする話があります。猿たちは烏の足に長い葛(かづら)を付け、川へ連れて行きます。
その話には、「烏を鵜に使ふためしはなけれども」とあります。烏を鵜の代わりに使う例はないけれども、猿たちは不思議な思いつきをした、という文脈です。
しかし、烏は水に投げ入れられても魚を捕る役には立たず、死んでしまいます。この場面は、姿が似ていても役目に合う力がなければ、代わりにはならないことをはっきり示しています。
近い発想をもつ言い方に、「鵜の真似する烏」があります。『十訓抄(じっきんしょう)』(1252年・鎌倉時代中期、作者不詳)には、「鵜のまねする烏に似たり」とあり、自分の能力や身の程を考えずに人のまねをして失敗することのたとえとして使われています。
さらに、『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』(1310年ごろ・鎌倉時代後期、藤原長清撰)にも、「烏が鵜の真似」に近い形の歌が収められています。烏と鵜を対比し、魚を捕れない烏を鵜に重ねる発想が、和歌や説話の中にも広がっていたことが分かります。
「鵜の真似する烏」は、烏自身が鵜のまねをして失敗することに重きがあります。一方、「烏を鵜に使う」は、烏を鵜の役目につける側の判断の誤りに重きがあります。
このように、「烏を鵜に使う」は、鵜飼という具体的な漁のしくみと、中世の文献に出てくる古い比喩を背景にして定着したことわざです。現在では、仕事や役目に合わない人を大切な位置につけることを戒める言葉として用いられます。
「烏を鵜に使う」の使い方




「烏を鵜に使う」の例文
- 絵が苦手な人をポスター係の中心にするのは、烏を鵜に使うようなものだ。
- 経験のない人を急に大会運営の責任者にすれば、烏を鵜に使う結果になりかねない。
- 足の遅い選手をリレーのアンカーにするのは、烏を鵜に使う配置だ。
- 料理をしたことのない友人に調理班の班長を頼むのは、烏を鵜に使うことになる。
- 専門知識のない人を技術班の中心に置けば、烏を鵜に使うような失敗が起こる。
- 人を選ぶときは、烏を鵜に使うことにならないよう、役目に合う力をよく見たい。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・慈円『愚管抄』1220年ごろ。
・橘成季『古今著聞集』1254年。
・『十訓抄』1252年。
・藤原長清撰『夫木和歌抄』1310年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























