【ことわざ】
神の神庫も梯のままに
【読み方】
かみのほくらもはしだてのままに
【意味】
どれほど困難なことでも、それに合った手段を用いれば成し遂げられるということ。


【英語】
・Where there’s a will, there’s a way.(強い意志があれば、目的を果たす方法は見つかる)
【類義語】
・為せば成る(なせばなる)
「神の神庫も梯のままに」の語源・由来
「神庫(ほくら)」とは、神に供える宝物や武器などの神宝を納めておく倉のことです。「梯立(はしたて)」は、はしごを立てること、または立てたはしごを表し、後世には「はしだて」とも読まれました。
このことわざは、『日本書紀(にほんしょき)』(720年成立・奈良時代、舎人親王ら編)の垂仁天皇八十七年二月の条に出てきます。『日本書紀』は、神代から持統天皇の時代までを年代の順に漢文で記した、日本最初の勅撰の歴史書です。
物語の中心となる五十瓊敷入彦命(いにしきいりひこのみこと)は、垂仁天皇の皇子です。『日本書紀』によれば、五十瓊敷入彦命は千振りの剣を作って石上神宮(いそのかみじんぐう)に納め、その神宝を管理していました。
やがて年老いた五十瓊敷入彦命は、妹の大中姫命(おおなかつひめのみこと)に、自分に代わって神宝を管理するよう頼みました。大中姫命は、『日本書紀』に登場する垂仁天皇の皇女です。
しかし、大中姫命は、自分は力の弱い女性なので、高い神庫へ上ることはできないといって辞退しました。当時の「神庫」は高い造りをもつ倉を指し、上るためには、はしごが必要でした。
これに対して、五十瓊敷入彦命は、神庫が高くても、自分がはしごを作って立てればよいのであり、倉へ上ることに苦労はないと答えました。高い倉そのものを低くするのではなく、上るための道具を用意しようとしたのです。
そのあと、『日本書紀』は「故、諺に曰はく」と前置きし、「天之神庫随樹梯之」ということわざを記しています。北野本の訓では、「神の神庫も樹梯の随に」という形で読まれています。
ここでいう「梯のままに」とは、はしごを立てれば、それに従って高い所にも上れるということです。どれほど高く近寄りがたい場所でも、そこへ届く手段さえ整えれば、上ることができるという考えを表しています。
大中姫命は、最終的に神宝の管理を物部十千根大連(もののべのとおちねのおおむらじ)に任せました。『日本書紀』は、この出来事を、物部氏が石上神宮の神宝を管理するようになった由来として記しています。
古い本文では「天の神庫」「樹梯」と表され、伝来した訓には「神の神庫も樹梯の随に」という形があります。現在では、「神の神庫も梯のままに」という形で、高い神庫へはしごを掛けるという具体的な話から離れ、難しい問題にも適切な方法があることを説くことわざとして用いられます。
このことわざが重んじているのは、ただ願ったり、むやみに努力したりすることではありません。目の前の困難に合った「はしご」、つまり方法や手段を見つけて実行すれば、手の届かないように思えた目標にも近づけると教えているのです。
「神の神庫も梯のままに」の使い方




「神の神庫も梯のままに」の例文
- 神の神庫も梯のままにというから、難しい課題も手順を分けて取り組めば解決の道が見えてくる。
- 祖父は、神の神庫も梯のままにと考え、重い荷物を運ぶために滑車を取り付けた。
- 神の神庫も梯のままに、地域の人々が資材と人手を出し合ったことで、祭りを開くことができた。
- 資金不足で計画を諦めかけたが、神の神庫も梯のままに、寄付を募る仕組みを整えて実現へこぎ着けた。
- 神の神庫も梯のままにという言葉どおり、作業に合った道具をそろえると仕事は大きく進んだ。
- 海外との共同研究も、通訳と通信環境を整えれば進められると、彼は神の神庫も梯のままにを引いて仲間を励ました。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注『日本書紀 上 日本古典文学大系67』岩波書店、1967年。
・舎人親王ら編『日本書紀』720年。
・Cambridge University Press & Assessment, Cambridge Dictionary, “where there’s a will, there’s a way”.























