【睚眥の怨み】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

睚眥の怨み

【故事成語】
睚眥の怨み

【読み方】
がいさいのうらみ

【意味】
ちょっとにらまれた程度の小さな怨み。ほんのわずかな怨み。

ことわざ博士
「睚」はにらむこと、「眥」はまなじりを表し、人の目つきに発したごく小さな怨みをいうんだよ。
助手ねこ
相手のささいな態度をいつまでも怨む場合や、小さな怨みを大げさに扱う場合に用いるニャン。

【英語】
・a petty grudge.(ささいな怨み)

【類義語】
・小怨(しょうえん)
・微恨(びこん)

【対義語】
・大徳は小怨を滅す(だいとくはしょうえんをめっす)

【スポンサーリンク】

「睚眥の怨み」の故事

故事成語を深掘り

「睚眥の怨み」は、中国の歴史書『史記(しき)』(前漢、司馬遷撰、前91年ごろ完成)の「范雎蔡沢列伝」にもとづく表現です。『史記』は黄帝から前漢の武帝までを扱う史書で、人物の伝記を大きな柱として歴史を描いた書物です。

もとの言葉は、「一飯之德必償,睚眥之怨必報」です。一度食事を受けたほどの小さな恩にも必ず報い、にらまれたほどの小さな怨みにも必ず報いる、という意味で、恩も怨みも忘れない范雎(はんしょ)の性格を表しています。

范雎は中国の戦国時代、はじめ魏(ぎ)に仕えた人物です。須賈(しゅか)に従って斉(せい)へ行ったとき、斉の王から贈り物を受けそうになったため、須賈は范雎が魏の秘密を斉に漏らしたのだと思い込みました。

須賈の報告を受けた魏斉は怒り、范雎を打たせ、あばらを折り、歯を傷つけ、死んだように見えた范雎を簀で巻いて便所に置かせました。范雎は見張りに頼んでそこから逃れ、名を張禄と改めて身を隠しました。

その後、范雎は秦(しん)に入り、秦の昭王に認められて力を得ます。秦王に進言し、やがて秦の政治の中で重い地位に上がったことが、『史記』の同じ列伝に順を追って記されています。

のちに須賈が魏の使者として秦へ来ると、范雎は貧しい身なりで須賈に会いました。須賈は相手が秦の相になった范雎だと知らず、あわれんで食事を与え、綈袍(ていほう:厚い絹の綿入れ)を贈りました。

須賈が相手の正体を知って謝ると、范雎は須賈の罪を数えました。しかし、綈袍をくれた行為に昔の知人としての情けが残っていたとして、須賈の命だけは助けます。この場面は、わずかな恩をも忘れずに返す面をよく表しています。

一方で、范雎は自分をひどい目にあわせた魏斉への怨みを忘れませんでした。『史記』には、范雎がかつて困っていた自分を助けた人々へ財物を分けて報いたあと、「一飯之德必償,睚眥之怨必報」と記されています。

ここでいう「睚眥」は、目を怒らせてにらむこと、また怨みを表す言葉です。そこから「睚眥の怨み」は、深い憎しみではなく、少しにらまれた程度のごく小さな怨みを指す表現として受け継がれました。

日本語では、室町時代中期の『文明本節用集(ぶんめいほんせつようしゅう)』に用例があり、明治時代には二葉亭四迷の『浮雲』(1887〜1889年)にも「睚眥の怨」の形が出てきます。中国古典の句から生まれた表現が、漢文を学ぶ教養の中で日本語にも入り、硬く改まった言い方として使われるようになったのです。

現在の「睚眥の怨み」は、ただ「怨み」と言うよりも、相手の小さな態度や一瞬の目つきにまでこだわる、狭く執念深い心を表しやすい言葉です。人間関係では、受けたことの大きさだけでなく、それをどう受け止めるかが問われるため、この故事成語には、小さな怨みに心をとらわれすぎないようにという戒めも読み取れます。

「睚眥の怨み」の使い方

健太
きのうの班決めで、翔太くんが少しむっとした顔をしただけなのに、太一くんがまだ怒っているよ。
ともこ
それだけで掃除当番の相談にも入らないの? 少し心配だね。
健太
うん。睚眥の怨みみたいに、小さなことでずっと根に持っているように見えるんだ。
ともこ
放課後にみんなで声をかけよう。ちゃんと話せば、きっと気持ちもほどけるよ!
【スポンサーリンク】

「睚眥の怨み」の例文

例文
  • 睚眥の怨みを抱いて、軽い注意をいつまでも責めるのはよくない。
  • 彼は会議で一度反対されただけで、睚眥の怨みを忘れなかった。
  • 友人の何気ない視線まで睚眥の怨みとして受け取ると、人間関係が苦しくなる。
  • 上司は睚眥の怨みに近い感情を仕事に持ち込まず、公平に判断した。
  • 弟はからかわれた一言を睚眥の怨みにして、夕食の間も口をきかなかった。
  • 政治の場で睚眥の怨みにこだわれば、大事な判断を誤る。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静著『字通 普及版』平凡社、2014年。
・二葉亭四迷『浮雲』1887〜1889年。
・司馬遷『史記』前漢、前91年ごろ。


逆引き検索

言葉が思い出せないときも、意味や使う場面から探せます。

スポンサーリンク



講談社刊行・全3冊

運営者・北澤篤史の著書

ことわざ・四字熟語・漢字熟語を、マンガで楽しく学べる図鑑シリーズです。

※Amazon・楽天の購入先にはアフィリエイトリンクが含まれます。

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉の表紙
ことわざ

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉

試験によく出ることわざを、マンガと解説で楽しく学べる一冊。

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉の表紙
四字熟語

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉

四字熟語をマンガで理解し、意味・漢字・使い方を覚えたい人へ。

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑の表紙
漢字熟語

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑

似た意味・同じ読みの漢字熟語の違いを、マンガと用例で学べる一冊。