【ことわざ】
空馬に怪我なし
【読み方】
からうまにけがなし
【意味】
何も持っていない者は、損をするはずがないということ。無一文の者は損のしようがないというたとえ。


【英語】
・have nothing to lose.(失うものがない)
【類義語】
・裸馬に怪我なし(はだかうまにけがなし)
・裸で物を落とす例なし(はだかでものをおとすためしなし)
「空馬に怪我なし」の語源・由来
「空馬に怪我なし」の「空馬」は、人や荷物を載せていない馬のことです。「空」という字には、中身がない、からである、という意味があり、このことわざでは、背に何も負っていない馬を表しています。
馬に人や荷物が載っていると、馬が倒れたり暴れたりしたとき、人が落ちたり荷物が壊れたりして損が出ます。しかし、何も載せていない馬であれば、たとえ転んでも、少なくとも荷物を失う心配はありません。
この具体的な見立てから、財産や持ち物のない人は、盗まれたり壊されたりして失うものがない、という意味へ広がりました。ことわざの「怪我」は、体の傷そのものだけでなく、損害を受けることまで含めて考えると分かりやすくなります。
同じ発想をもつ言い方に、「裸馬に怪我なし」があります。こちらも、身を守る道具や荷物を付けていない馬を思わせる表現で、財産を持たない者は損のしようがないという意味を表します。
また、「裸で物を落とす例なし」という類義のことわざもあります。裸なら落とす持ち物がないという、さらに分かりやすい形で、もともと何も持っていない者は損害を受けようがないことを述べています。
古い用例としては、明治時代の小説『当世商人気質(あきゅうどかたぎ)』(1886年、饗庭篁村著)に、「殻馬(カラウマ)に怪我(けが)なし。裸参り追剥(おひはぎ)に逢ず、是より損の仕やうなければ」とあります。ここでは「空馬」ではなく、「殻馬」という表記で出ています。
この用例の文脈では、何も持たずに出かける者は、追剥に出会っても奪われる物がない、という理屈で語られています。馬のたとえと、裸で物を持たない人のたとえが重なり、損のしようがないという意味がはっきり表れています。
「殻馬」という表記は、からっぽであることを強く示す書き方です。現在では「空馬に怪我なし」と書く形が一般的で、「空馬」を「からうま」と読み、人や荷物を載せていない馬として理解します。
このことわざは、貧しいことを積極的にほめる言葉ではありません。多くを持つ人には、それを守る心配や失う不安もつきまとう一方、持たない人には、その分の損がない、という逆説的な見方を表しています。
現在では、財産の話だけでなく、失うものがないので思い切って挑戦できる場面にも使えます。ただし、自分について軽く言う場合はよいとしても、他人に向けると、その人を持たない者と決めつける響きが出るため、使い方には注意が必要です。
「空馬に怪我なし」の使い方




「空馬に怪我なし」の例文
- 貯金も持ち物も少ない彼は、空馬に怪我なしと考えて、新しい土地で仕事を探すことにした。
- 失う地位も名誉もない若い挑戦者は、空馬に怪我なしの気持ちで強豪に向かっていった。
- 会社を始める前の彼には守るものが少なく、空馬に怪我なしで思い切った計画を立てられた。
- 高価な道具を持っていなかったため、盗難の知らせを聞いても、空馬に怪我なしと笑っていた。
- 空馬に怪我なしというように、何も持たずに旅へ出た彼は、盗難の心配をほとんどしなかった。
- 新人のうちは失敗しても失う立場が小さいので、空馬に怪我なしのつもりで意見を出してみるべきだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・饗庭篁村『当世商人気質』1886年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























