【ことわざ】
櫂は三年櫓は三月
【読み方】
かいはさんねんろはみつき
【意味】
櫂の扱い方は、櫓の扱い方に比べてずっと難しいということ。転じて、何事も一人前になるには簡単ではなく、技術の習得には時間と努力がいるというたとえ。


【英語】
・Practice makes perfect.(練習を重ねれば上達する)
【類義語】
・棹は三年櫓は三月(さおはさんねんろはみつき)
・顎振り三年(あごふりさんねん)
「櫂は三年櫓は三月」の語源・由来
櫂は三年櫓は三月は、中国古典の人物や事件に由来する故事ではなく、船を操る実際の技術から生まれたことわざです。櫂(かい)は、人の力で船を進める棒状の船具で、棒の先を翼のように平たく削り、舷にかけて水を掻き、船を進めるものです。その名も「掻く」と関係づけられ、水を掻く道具であることが分かります。
櫂という船具は古くから日本語の中にあり、『日本書紀(にほんしょき)』(720年成立、奈良時代の史書)に、船を進める道具を表す古い用例が示されています。ここから、櫂そのものが、ただ水に差し入れる棒ではなく、船の進み方を左右する大切な道具として古くから意識されていたことが分かります。
一方の櫓(ろ)は、和船を漕ぎ進める道具の一つです。櫓杭(ろぐい)を支点にして、押す時にも引く時にも推進力を生み出すため、船を進める道具として櫂より効率がよい面をもつと説明できます。古い用例としては、『枕草子(まくらのそうし)』(10世紀末ごろ成立、清少納言著)に、櫓を押して歌を歌う場面が出てきます。
櫓と櫂を合わせた「櫓櫂(ろかい)」という形も古くからあり、『太平記(たいへいき)』(14世紀後半成立、南北朝時代の軍記物語)には「櫓かいも無れ共」という用例が出てきます。また、『和漢船用集』(1766年・江戸時代中期)では、和船の構造に関わる言葉として「櫓櫂」が使われています。船を動かす道具として、櫓と櫂が並べて意識されていたことが分かります。
このことわざでは、櫓は三月で扱えるようになるが、櫂を使いこなすには三年かかる、という強い対比によって、技術の難しさを表しています。三年と三月は、正確な修業期間を示すというより、習得にかかる手間の差を印象深く示す言い方です。
表記には、「櫂」のほかに「棹(さお)」を用いる近い形もあります。「棹は三年櫓は三月」という言い方は、櫂を棹に置きかえた類義のことわざとして扱われ、船を操る道具の違いをもとに、同じように見える技術でも難易に差があることを表します。
そこから現在では、船の操作だけに限らず、料理、楽器、スポーツ、職人の仕事、勉強など、どのような分野でも一人前になるのは容易ではない、という意味で用いられます。すぐに上達しない人を責める言葉ではなく、むしろ時間をかけて身につけることの重みを伝えることわざといえます。
「櫂は三年櫓は三月」の使い方




「櫂は三年櫓は三月」の例文
- 櫂は三年櫓は三月というように、伝統工芸の細かな手仕事は数日で身につくものではない。
- 新しい楽器を始めた弟は、櫂は三年櫓は三月の気持ちで毎日少しずつ練習している。
- 料理人の包丁さばきは簡単そうに見えるが、櫂は三年櫓は三月で、長い修業が必要だ。
- 櫂は三年櫓は三月だから、部活動で急に上手な先輩と同じ動きができなくても焦ることはない。
- 職場の機械操作は見た目より奥が深く、櫂は三年櫓は三月と先輩に教えられた。
- 櫂は三年櫓は三月を胸に、祖父は孫に将棋の基本を根気よく教え続けた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。























