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【家鶏を賤しみて野雉を愛す】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

家鶏を賤しみて野雉を愛す

【故事成語】
家鶏を賤しみて野雉を愛す

【読み方】
かけいをいやしみてやちをあいす

【意味】
身近にある価値あるものや古くから親しんだものを軽んじ、遠くにある新奇なものをむやみにありがたがることのたとえ。

ことわざ博士
家鶏を賤しみて野雉を愛すは、見慣れたものの価値を見落とし、珍しいものを実際以上に高く評価する人の傾向を表すんだよ。
助手ねこ
自分の家・学校・地域などにある優れたものを軽く見て、外から来たものばかりをほめる場面に用いるニャン。

【英語】
・The grass is always greener on the other side.(他人のものや遠くの境遇は、自分のものよりよく見える)

【類義語】
・家鶏野鶩(かけいやぼく)
・遠きは花の香(とおきははなのか)

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「家鶏を賤しみて野雉を愛す」の故事

故事成語を深掘り

「家鶏」は家で飼う鶏、「野雉」は野にすむ雉(きじ)のことです。いつも目にする鶏を軽んじ、珍しい野の雉を好むという姿が、身近なものよりも外の新しいものをありがたがる人の心を表しています。

この故事成語のもとには、中国の東晋時代における、書家たちの評判をめぐる逸話があります。中心となる人物は、書に優れていた庾翼(ゆよく)と、後に書の名人として広く知られる王羲之(おうぎし)です。

庾翼は若いころ、王羲之と並び称されるほどの書の名手として知られていました。しかし、後に王羲之の評判が高まると、若者たちは庾翼の書よりも王羲之の書を熱心に学ぶようになりました。

庾翼は荊州にいたとき、都の人へ送った手紙の中で、「小兒輩賤家雞,愛野雉」と不満を述べました。これは、若者たちは家の鶏を軽んじて野の雉を好み、みな王羲之の書を学んでいる、という意味です。

この言葉の「家鶏」は、若者たちが以前から見慣れていた庾翼自身の書を指します。「野雉」は、当時しだいに評判を高めていた王羲之の書を、目新しく珍しいものにたとえた言い方です。

庾翼は、自分の書が劣るために捨てられたのではなく、若者たちが新しい評判に心を奪われたのだと考えていました。そこで、身近な家鶏を軽んじ、珍しい野雉を愛すると、皮肉を込めて言ったのです。

ただし、この言葉は庾翼自身の不満から出たものであり、庾翼と王羲之の書の優劣を客観的に決めた言葉ではありません。後には書道の世界を離れ、見慣れたものを十分に評価せず、新しく珍しいものへ飛びつくことを戒める表現へと広がりました。

南斉時代の王僧虔が著した『論書』にも、この逸話に近い記述があります。そこには「小兒輩乃賤家雞,皆學逸少書」とあり、「野雉」の部分はありませんが、若者たちが家鶏を軽んじ、逸少、すなわち王羲之の書を学んだという話の骨組みは共通しています。

『論書』は、唐の張彦遠が編んだ『法書要録(ほうしょようろく)』(9世紀後半成立)に収められました。『法書要録』は、後漢から唐までの書に関する文献を集めた書物で、この逸話が後世へ伝わるうえで重要な役割を果たしました。

さらに、『太平御覧(たいへいぎょらん)』(983年成立・北宋、李昉ら編)巻九百十八には、「賤家雞,愛野雉」を含む、より詳しい形が記されています。『太平御覧』は、今では失われたものを含む多くの古書から文章を集めた書物で、この故事の古い形を現在に伝えています。

日本では、南北朝時代の義堂周信による『空華集(くうげしゅう)』(1359〜1368年ごろ成立)に、「家鶏野鶩」という関連する形が出てきます。「野鶩」は野生のあひるを指し、「野雉」と鳥は異なりますが、家にあるものを退け、外の珍しいものを求めるという対比は共通しています。

こうして、庾翼が書の流行を嘆いて用いた「家鶏」と「野雉」のたとえは、身近なよいものを軽んじ、遠くの珍しいものばかりを尊ぶことへの戒めとして定着しました。新しいというだけで価値が高いと思い込まず、見慣れたものの長所にも目を向けることの大切さを伝える故事成語です。

「家鶏を賤しみて野雉を愛す」の使い方

健太
ともこちゃん、最新の海外製の文房具セットを買ったんだって?
ともこ
そうなの、デザインがすごく珍しくて。でも使ってみたら、いつもの消しゴムの方がずっとよく消えるの。
健太
あはは、まさに家鶏を賤しみて野雉を愛すだね。身近にあるものの良さに気づかないで、遠くの珍しいものばかりありがたがっちゃうことさ。
ともこ
本当にその通りだわ。これからは、いつもそばにある道具の使いやすさをもっと大切にしないとね。
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「家鶏を賤しみて野雉を愛す」の例文

例文
  • 自分の学校の優れた合唱部を軽く見て、遠方の有名校ばかりをほめるのは、家鶏を賤しみて野雉を愛す態度だ。
  • 地元の伝統工芸を古くさいと退け、海外の似た製品だけをありがたがるのは、家鶏を賤しみて野雉を愛すというものだ。
  • 長年会社を支えてきた社員の案を読まず、外部の専門家の提案だけを評価すれば、家鶏を賤しみて野雉を愛すとの批判を受ける。
  • 祖父から教わった技術を軽んじ、新しく紹介された方法へすぐ飛びつく息子を、父は家鶏を賤しみて野雉を愛すと戒めた。
  • 町の文化財に目を向けず、遠くの観光地ばかりに憧れるのは、家鶏を賤しみて野雉を愛すことになりかねない。
  • 国内に蓄積された研究を読まず、外国の新説だけを尊ぶ姿勢は、家鶏を賤しみて野雉を愛すに等しい。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・王僧虔『論書』南斉時代。
・張彦遠編『法書要録』9世紀後半。
・李昉ほか編『太平御覧』983年。
・義堂周信『空華集』1359〜1368年ごろ。





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