【ことわざ】
借りて借り得貸して貸し損
【読み方】
かりてかりどく、かしてかしぞん
【意味】
借りたものを返さずにすむことがあるため、借りる側は得をし、貸す側は返してもらえずに損をすることがある、ということ。貸し借りには、貸す側の不利や危うさがあることをいう。


【英語】
・Neither a borrower nor a lender be.(借り手にも貸し手にもなるな)
・Lend your money and lose your friend.(金を貸すと友を失う)
【類義語】
・貸した物は忘れぬが借りたものは忘れる(かしたものはわすれぬがかりたものはわすれる)
・金を貸せば友を失う(かねをかせばともをうしなう)
・金の貸し借り不和の基(かねのかしかりふわのもと)
【対義語】
・借りる八合、済す一升(かりるはちごう、なすいっしょう)
「借りて借り得貸して貸し損」の語源・由来
「借りて借り得貸して貸し損」は、中国の古い人物や事件に由来する言葉ではなく、金銭や物の貸し借りをめぐる日常の経験から生まれたことわざです。借りる側と貸す側の立場の違いを、「得」と「損」の対比で短く言い表しています。
「借りる」は、あとで返す約束で、人の物を一時的に自分のもののように使うことを指します。古くは四段活用の「借る」から変化し、近世後期の江戸語で「借りる」の形が広まり、現在の共通語になりました。
一方、「貸す」は、あとで返してもらう約束で、一時的に他人へ金銭や物品を渡すことを指します。この語は古く、『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)や『伊勢物語』(10世紀前半成立、平安時代前期)にも用例があり、物や場所を相手に使わせる意味で古くから使われてきました。
また、「貸し」は、動詞「貸す」の連用形が名詞になった言葉で、あとで返してもらう約束で金品を与えること、またはその金品を表します。この「貸し」は、「借り」と向かい合う言葉であり、貸す人と借りる人の関係をはっきり分ける働きをもっています。
このことわざの前半にある「借り得」は、借りた側が返さずにすめば、結果として利益を得る、という皮肉を含みます。「利益」は、もうけや得になることを表す言葉で、「得」はその意味に近い語として用いられます。
後半の「貸し損」は、貸したにもかかわらず返ってこなければ損になる、という意味です。「損」は利益を減らすことや不利益を表し、さらに「ぞん」は動詞の連用形などについて、その行動が結果として不利益に終わることを表します。
つまり、「借りて借り得」と「貸して貸し損」は、借りる行為と貸す行為を同じ形で並べながら、結果は反対になると述べています。音の上でも「借りて」と「貸して」、「得」と「損」が対になっており、覚えやすい言い回しになっています。
このことわざは、借りた人が返さないことを正しいとする言葉ではありません。むしろ、貸したものが返ってこないことがあるという世間の経験を、やや冷ややかに言い表したものです。
同じ考え方に近い言葉として、「貸した物は忘れぬが借りたものは忘れる」があります。人に貸したものはよく覚えているのに、人から借りたものは忘れがちだという身勝手さを表し、このことわざと同じく、貸し借りにひそむ不公平さを示しています。
また、「金を貸せば友を失う」は、金銭がからむと親しい間柄でも仲たがいしやすい、という戒めです。「借りて借り得貸して貸し損」も、ただ損得を述べるだけでなく、人間関係をこわさないためには貸し借りに慎重であるべきだという教訓につながります。
反対の考え方を示す言葉には、「借りる八合、済す一升」があります。人から物やお金を借りたら、少し多めに返すか、お礼を添えて返すのが常識だという意味で、借りた側の礼儀と責任を強く表しています。
このように、「借りて借り得貸して貸し損」は、貸し借りの形だけを見れば対等に思えても、実際には返すかどうかによって貸した側が損をしやすい、という世の中の経験から生まれた言い方です。軽い調子の言葉に見えますが、約束を守ることと、安易に貸し借りをしないことの大切さを伝えています。
「借りて借り得貸して貸し損」の使い方




「借りて借り得貸して貸し損」の例文
- 友人に何度も本を貸したが戻ってこず、借りて借り得貸して貸し損だと感じた。
- 道具を貸すたびに返却を催促することになり、借りて借り得貸して貸し損という言葉を思い出した。
- 親しい間柄でも金銭の貸し借りは、借りて借り得貸して貸し損になりやすい。
- 会社の備品を安易に貸し出すと、借りて借り得貸して貸し損のような結果になることがある。
- 貸したゲームソフトが返ってこないままなので、借りて借り得貸して貸し損とはこのことだ。
- 借りて借り得貸して貸し損にならないよう、貸すときは相手と返す日を決めておくべきだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・集英社『imidas 会話で使えることわざ辞典』集英社。
・William Shakespeare, 『Hamlet』1600〜1601年ごろ。























