【ことわざ】
烏を鷺
【読み方】
からすをさぎ
【意味】
正しくないことを正しいように言いくるめ、筋の通らない主張を無理に押し通すことのたとえ。黒を白ということ。


【英語】
・say that black is white.(黒を白だと言い張る)
【類義語】
・鷺を烏(さぎをからす)
・鹿を指して馬となす(しかをさしてうまとなす)
・這っても黒豆(はってもくろまめ)
【対義語】
・是是非非(ぜぜひひ)
「烏を鷺」の語源・由来
「烏を鷺」は、黒い烏を白い鷺だと言い張ることから生まれた言い方です。烏は黒い鳥の代表として、鷺は白い鳥の代表としてとらえられ、両者の色の違いが、正反対のものを表すたとえになりました。
「烏」という字には、からす、また黒いという意味があります。烏の体が黒く、目の位置が分かりにくいことから、「鳥」の字の目に当たる一画を省いた形になったという説明もあります。
一方、「鷺」はサギ科の鳥を表す字です。白鷺は、羽毛が純白のサギの総称で、古くから白さを印象づける鳥として扱われてきました。
このため、烏と鷺は「黒」と「白」の対照として用いられました。「烏鷺(うろ)」には、からすとさぎ、黒と白、さらに黒白の碁石に見立てた囲碁という意味があります。
このことわざの古い用例として、『犬子集(えのこしゅう)』(1633年・江戸時代初期、松江重頼編)に「白ずみは烏を鷺のたとへ哉〈徳元〉」とあります。『犬子集』は、江戸初期の俳諧集で、発句や付句を集めた貞門俳諧初期の重要な撰集です。
この句では、「烏を鷺」という表現が、黒いものを白いもののように言い立てるたとえとして使われています。すでに江戸時代初期には、正反対のものを言葉で入れ替える比喩として通じていたことが分かります。
同じ発想を反対の順にした「鷺を烏」もあります。こちらは、白い鷺を黒い烏だと言い張る意味で、物の道理をことさらに言い曲げることを表します。
「鷺を烏」の古い形は、土井本『周易抄(しゅうえきしょう)』(1477年・室町時代後期)にも出てきます。そこには「鷺をも烏と云はば烏でさうと云はうぞ」とあり、時勢に合わせて、白い鷺を烏だと言えば烏だと言うだろう、という文脈で使われています。
つまり、「烏を鷺」と「鷺を烏」は、どちらも白黒が明らかに違うものを、無理に反対のものとして言い立てる発想をもっています。前者は黒い烏を白い鷺に、後者は白い鷺を黒い烏にする形で、道理を逆に曲げることを表します。
のちには、単に色の違いだけでなく、正しいことと正しくないこと、理に合うことと理に合わないことを、言葉で入れ替えて押し通す意味へ広がりました。「黒を白ということ」という説明は、このことわざの核心をよく示しています。
現在の「烏を鷺」は、明らかな間違いを認めず、もっともらしい言い方で正当化しようとする場面に用いられます。言い訳やこじつけを批判する響きが強いため、人に向けて使うときは、相手を責める言い方になりやすい表現です。
「烏を鷺」の使い方




「烏を鷺」の例文
- 明らかに計算をまちがえているのに正解だと言い張るのは、烏を鷺の言い分だ。
- 責任者が失敗を成功だと説明したため、会議では烏を鷺のような空気になった。
- 証拠が残っているのに知らないと言い続けるのは、烏を鷺と言いくるめるに近い。
- 店の表示ミスを客の読み違いだとする説明は、烏を鷺の理屈だった。
- 約束の時間に遅れたのを時計のせいにするのは、烏を鷺とするような言い訳だ。
- 事実と違う報告をもっともらしく語っても、烏を鷺の主張は長く通らない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『犬子集』1633年。
・『土井本周易抄』1477年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























