【慣用句】
活を入れる
【読み方】
かつをいれる
【意味】
柔道などの術で、気絶した人の息を吹き返らせること。転じて、刺激を与えて元気づけること。


【英語】
・energize(元気づける、活気づける)
・breathe new life into.(新しい活力を与える)
【類義語】
・元気付ける(げんきづける)
・螺子を巻く(ねじをまく)
・発破を掛ける(はっぱをかける)
【対義語】
・水を差す(みずをさす)
「活を入れる」の語源・由来
「活を入れる」の「活」は、単に「生き生きしている」という意味だけでなく、気絶した人の息を吹き返らせる柔道などの術を指す言葉としても使われてきました。この「活」を施すことから、「活を入れる」という言い方が生まれました。
もとの意味では、気絶した人の急所をついたり、もんだりして、息を吹き返らせることを表します。体に刺激を加えて意識を戻す行為であるため、「入れる」は、相手に生命力や働きを取り戻させる動作として結びついています。
「活」そのものの用例としては、明治時代の幸田露伴『いさなとり』(1891年)に、柔道などの術としての「活(クヮツ)」が出てきます。ここでは、気絶した人を「活す」ことができるという文脈で使われ、現代の比喩的な意味よりも、蘇生の術としての意味が前面に出ています。
「活を入れる」という形では、落語「つよがり」(1890年、三代目三遊亭円遊)に用例があります。気絶して倒れた人に対して、脇肋(わきぼね)のあたりをねらって「活(クヮツ)を入れる」と表しており、ここでも文字どおり息を吹き返らせる行為を指しています。
この段階での「活を入れる」は、現在のような「励ます」という言い方ではなく、体に直接働きかけて意識を戻す技術に近い意味です。弱って動かないものに刺激を与え、再び働かせるという考えが、後の比喩的な意味へつながっていきました。
その後、「活を入れる」は、人や組織の元気を回復させる意味にも広がりました。有島武郎『或る女』(1919年)には、「活(クヮツ)を入れられたやうになって」という用例があり、声によって人々が勢いづく様子を表しています。
この用例では、実際に気絶した人を蘇生させているのではありません。声や働きかけによって、気持ちのゆるみや弱りを立て直すという、現在の「刺激を与えて元気づける」という意味に近い使い方です。
表記で注意したいのは、「喝を入れる」ではなく「活を入れる」と書く点です。「喝」は、禅宗で修行者をしかるときなどに大きな声で発する言葉を指し、「活」とは意味の出発点が異なります。
「喝」は大声や叱声に関わる言葉なので、強く叱って励ます場面から混同されやすい表記です。しかし、「活を入れる」の本来の筋は、生命力や活気を戻す「活」にあり、気絶した人を息づかせる意味から、元気のない人や組織を奮い立たせる意味へ移ったものです。
現在の「活を入れる」は、ただ厳しく怒ることではなく、相手がもう一度前向きに動き出せるよう刺激を与える言い方です。もとの蘇生の意味を思うと、弱ったものに力を戻す、という芯をもった慣用句だと分かります。
「活を入れる」の使い方




「活を入れる」の例文
- 監督は試合前の短い言葉で、緊張していた選手たちに活を入れる。
- 売り上げが落ちた店に新しい企画を加え、店全体に活を入れる。
- 先生の励ましの一言が、落ち込んでいたクラスに活を入れるきっかけとなった。
- 長い会議で集中力が切れた社員たちに、部長が休憩後の目標を示して活を入れる。
- 祖父は朝の散歩を始めてから、毎日の生活に活を入れることができた。
- 発表前に友人が声をかけてくれたことで、不安だった気持ちに活を入れることができた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・幸田露伴『いさなとり』1891年。
・三代目三遊亭円遊「つよがり」1890年。
・有島武郎『或る女』1919年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























