【故事成語】
金蘭の契り
【読み方】
きんらんのちぎり
【意味】
心から理解し合い、固い信頼で結ばれた親友どうしの交わり。


【英語】
・a close bond of friendship.(固く結ばれた親密な友情)
【類義語】
・金蘭の交わり(きんらんのまじわり)
・断金の交わり(だんきんのまじわり)
・莫逆の友(ばくぎゃくのとも)
【対義語】
・犬猿の仲(けんえんのなか)
「金蘭の契り」の故事
「金蘭の契り」は、中国の古典『易経(えききょう)』「繫辞上(けいじじょう)」に出てくる言葉にもとづきます。『易経』は、もとは占いのための書物でしたが、後に易の意味や思想を説く解説が加わりました。そのうち「繫辞伝」は上下二編から成り、紀元前後ごろまでに成立していました。
「繫辞上」では、「同人」という卦(け:易を構成するしるし)の言葉を取り上げています。そこには、初めは泣き叫んでいても、後には笑い合うようになるという内容があり、それに続いて、人が心を合わせることの強さが説かれています。
原文には、「二人同心、其利断金。同心之言、其臭如蘭」とあります。これは、「二人が心を同じくすれば、その鋭い力は金属さえ断ち切り、心を同じくする二人の言葉は蘭のように香る」という意味です。
ここでいう「金」は、黄金の美しさを表すのではなく、断ち切ることが難しい固い金属を指します。二人の心が一つになれば、固い金属を切るほどの大きな力を生み出せるというたとえです。
「蘭」は、よい香りを放つものとして用いられています。互いに心を許した人どうしが交わす言葉は、蘭の香りのように気高く、相手の心を喜ばせるという意味です。
この二つのたとえから、前半の「金」と後半の「蘭」を合わせた「金蘭」という言葉が生まれました。したがって、「金蘭」は、金色の蘭や「金より固い蘭」を意味するのではなく、金属を断つほど強い結び付きと、蘭のように香り高い言葉とを一つにまとめた表現です。
やがて中国では、「金蘭」に、約束や結び付きを意味する「契」を加えた「金蘭契」という形が使われるようになりました。唐代の詩人、白居易は、親しい友人に寄せた『代書詩一百韻寄微之』の中で、「分定金蘭契」と詠み、二人の固い友情は運命によって定められたものだと表しています。
この用例では、もとの『易経』にあった二つの比喩が、すでに「金蘭契」という一まとまりの言葉になっています。心を同じくして助言を交わし、喜びも苦しみも共にする友人関係を表す言い方として、唐代には広く用いられていたことが分かります。
日本では、江戸時代後期の俳文集『鶉衣(うずらごろも)』(1787年、横井也有著)に、「久しく金蘭の契ありて」という用例があります。長く固い友情を結んできた相手からの頼みを断ることができない、という文脈で使われています。
その後、「金蘭の契り」のほか、「金蘭の交わり」「断金の交わり」「金蘭」などの形も定着しました。「金蘭の契り」は、単に仲がよいというだけでなく、互いの心を深く理解し、困難にも力を合わせて立ち向かえるほどの、固く気高い友情を表す故事成語です。
「金蘭の契り」の使い方




「金蘭の契り」の例文
- 二人は幼いころから苦楽を共にし、金蘭の契りを結んでいた。
- 遠く離れて暮らすようになっても、二人の金蘭の契りは変わらなかった。
- 戦乱の中で互いの命を救った二人は、金蘭の契りを交わした。
- 祖父は、金蘭の契りで結ばれた親友から届いた手紙を大切に保管している。
- 立場が異なっても率直に忠告し合える二人の間には、金蘭の契りがあった。
- 長年にわたって互いの研究を支えた二人は、金蘭の契りで結ばれた友として知られた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・『易経』
・白居易『白氏文集』唐代。
・横井也有『鶉衣』1787年。























