【ことわざ】
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥
【読み方】
きくはいっときのはじきかぬはいっしょうのはじ
【意味】
知らないことを人にたずねるのは、その時だけ恥ずかしく感じるが、聞かずに知らないままでいると、長く恥をかくことになるという教え。


【英語】
・Better to ask the way than go astray(道に迷うより道をたずねるほうがよい)
・He who asks is a fool for five minutes, but he who does not ask remains a fool forever(たずねる者は少しの間だけ愚かに見えるが、たずねない者はずっと愚かなままでいる)
【類義語】
・問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥(とうはいったんのはじ、とわぬはまつだいのはじ)
・聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥(きくはいっときのはじ、きかぬはまつだいのはじ)
【対義語】
・知ったかぶり(しったかぶり)
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」の語源・由来
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」は、知らないことをたずねるその場の恥と、たずねないまま無知でいる長い恥とを対比することわざです。現在の形では「聞く」が用いられますが、古くは「問うは」という形が広く使われ、「一時」は「当座(とうざ)」「一旦(いったん)」、「一生」は「末代(まつだい)」「万代」「一期」などとも言いました。
古い用例として重要なのは、『虎寛本狂言・庖丁聟』(室町末〜近世初)に出てくる「とふは当座の恥、問ぬは末代の恥」という形です。狂言(きょうげん)は、室町時代に成立した、せりふを中心とする古典芸能です。この用例では、知らないままにしていれば必ず恥をかくだろう、という文脈で使われています。
ここでの「問ふ」は、分からないことを人にたずねるという意味です。「当座の恥」は、その場だけの恥を表し、「末代の恥」は、長く残る大きな恥を表します。現在の「一時の恥」と「一生の恥」の対比は、この「当座」と「末代」の対比を、より分かりやすい言い方に整えたものといえます。
江戸時代後期には、『諺苑(げんえん)』(1797年、太田全斎著)に「聞は一時の恥、聞かぬは末代の恥」という形が出てきます。『諺苑』は、俗語や俗諺(ぞくげん)を集め、いろは順に配して語釈や出典を示した書物です。この段階では、古い「問う」の形から、現在に近い「聞く」の形へ移っていることが分かります。
「聞く」と「問う」は、どちらも人にたずねて知るという働きをもつ言葉です。ただし、「問う」はやや改まった響きをもち、「聞く」は日常の会話でも自然に使われる言葉です。そのため、ことわざが広く使われるうちに、「問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥」から、「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」へと、より親しみやすい形に定着していったと考えられます。
近代の用例としては、中里介山『大菩薩峠』(1913〜1941年)に、「聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥」という形が出てきます。この用例では、「聞くは末代の恥、聞かぬは一時の恥」と取り違えた言い方を正す場面で用いられ、ことわざの対比の順序が重要であることを示しています。
このことわざの中心は、「知らないことそのもの」よりも、「知らないことを知ろうとしない態度」を戒める点にあります。その場で質問するのは少し恥ずかしくても、聞けば知識や理解を得られます。反対に、聞かずに済ませると、誤解や失敗を長く引きずることがあります。そこから、学ぶ姿勢を大切にする教えとして、今も学校や仕事、日常生活で使われています。
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」の使い方




「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」の例文
- 分数の計算方法を分からないままにせず、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と思って先生に質問した。
- 初めての駅で乗り換えに迷ったので、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と考え、駅員に行き方をたずねた。
- 仕事の手順をあいまいなまま進めるより、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥で、先輩に確認するほうがよい。
- 薬の飲み方が分からなかったため、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と思い、薬剤師にたずねた。
- 友人は楽譜の読み方を何度も質問し、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥を実践して上達した。
- 書類の書き方を知ったふりで提出すれば失敗するので、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥を忘れないようにした。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・『虎寛本狂言・庖丁聟』室町末〜近世初。
・中里介山『大菩薩峠』1913〜1941年。






















