【ことわざ】
切る手遅かれ
【読み方】
きるておそかれ
【意味】
重大な決断や物事の実行は、軽率に急がず、十分に考えてから行えという戒め。


【英語】
・Look before you leap.(行動に移る前に、結果をよく考えよ)
【類義語】
・急いては事をし損ずる(せいてはことをしそんずる)
【対義語】
・善は急げ(ぜんはいそげ)
「切る手遅かれ」の語源・由来
「切る手遅かれ」は、処刑で人の首を切ることを急いではならない、という厳しい場面をもとにしたことわざです。命を奪う処分は、いったん実行すれば元に戻せないため、疑いや迷いが残っているうちは執行を急がず、十分に考えるべきだという教えを表します。
この言葉の「切る手」は、刃物を持つ手そのものだけでなく、人を切る行為を実行しようとする動きを指します。「手」には、行為を行う人や、その働きを表す用法があり、ここでは、処刑を実行する側の動作を短く表しています。
「遅かれ」は、「遅くあれ」という意味をもつ命令の形です。そのため、言葉全体では、「切ろうとする手は遅くあれ」、つまり「すぐには切らず、まず立ち止まって考えよ」という強い戒めになります。
このことわざが重んじるのは、単に行動を遅らせることではありません。事実を確かめ、関係する人の話を聞き、誤りがないかを考えたうえで、取り返しのつかない決定を下すよう求めています。
処刑というもとの場面では、判断を遅らせている間に新しい事実が明らかになったり、処分を見直す余地が生まれたりします。しかし、先に首を切ってしまえば、あとで誤りに気づいても、救うことはできません。この取り返しのつかなさが、「切る手遅かれ」という言い方の核心です。
そこから意味が広がり、処刑に限らず、重大な決断や実行を急がないよう戒める表現として用いられるようになりました。人を辞めさせる、契約を打ち切る、大切な物を処分するなど、実行したあとに元の状態へ戻すことが難しい場合によく当てはまります。
似た教えを表す「急いては事をし損ずる」は、急ぐとかえって失敗することを戒めます。それに対して、「切る手遅かれ」は、失敗を防ぐだけでなく、相手や物事を切り捨てるような重大な判断では、実行する前の熟慮が特に大切だと教えています。
一方、「善は急げ」は、よいと分かっていることは、ためらわずに実行せよという教えです。「切る手遅かれ」は、事情が十分に分からないまま、取り返しのつかない判断を下そうとするときに用いるため、何でも遅らせればよいという意味ではありません。
このように、「切る手遅かれ」は、人の命に関わる処分を急がないという考えから、重要な決断の前には十分に調べ、考え、悔いのない判断を下すべきだという教えへと広がったことわざです。決断の速さよりも、その判断が正しく、取り返しのつくものであるかを見極めることの大切さを伝えています。
「切る手遅かれ」の使い方




「切る手遅かれ」の例文
- 社員を解雇する前に十分な聞き取りを行うべきだと、社長は切る手遅かれの姿勢を示した。
- 長年続いた契約を一度の失敗だけで打ち切るのは、切る手遅かれの教えに反する。
- 部員を大会の選手から外すかどうかは、切る手遅かれで慎重に判断しなければならない。
- 歴史ある建物の取り壊しを決める前に、切る手遅かれとして保存の方法をもう一度検討した。
- 友人との付き合いを断つ前に、切る手遅かれと思い直して、誤解がないかを確かめた。
- 祖父の家を売却する話が出たが、家族は切る手遅かれと考え、結論を翌月まで延ばした。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary.』























