【故事成語】
青は藍より出でて藍より青し
【読み方】
あおはあいよりいでてあいよりあおし
【意味】
教えを受けた者が努力を重ね、教えた者よりもすぐれることのたとえ。


【英語】
・Some pupils surpass their teachers.(弟子の中には先生をしのぐ者もいる)
【類義語】
・出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)
「青は藍より出でて藍より青し」の故事
この言葉のもとになったのは、中国・戦国時代末期の思想書『荀子(じゅんし)』の「勧学(かんがく)」篇です。『荀子』は、荀況(じゅんきょう)とその学派の著作を集めた書物で、学ぶことや礼によって、人が自らを高めていく道を説いています。
「勧学」篇の冒頭には、「君子曰:學不可以已。青、取之於藍,而青於藍;冰、水為之,而寒於水。」とあります。やさしく言い換えると、「学ぶことは途中でやめてはならない。青い染料は藍(あい:青色の染料を採る植物)から取るが、もとの藍よりも青い。氷は水からできるが、水よりも冷たい」という意味です。
ここでの「青」と「氷」は、もとになったものに学びや働きが加わり、初めの状態を越えていく例として挙げられています。したがって、原文では、初めから師匠と弟子だけを述べているのではなく、学びを続ければ、人はもとの自分より高いところへ進める、という教えを表しています。
現在の言い方にある「出でて」は、本文の伝わり方とも関わっています。『荀子』の本文には「青、取之於藍」、すなわち「青は藍より取る」とする形がありますが、唐代には「取」を「出」と記す本文も伝わっていました。そのため、「藍より出でて」という形や、「出藍(しゅつらん)」という縮めた言い方が生まれました。
日本では、平安時代中期の『世俗諺文』(1007年)に、漢文の形で「青取之藍而青於藍」に当たる表現が出てきます。この段階では、『荀子』の文を受け継いだ、青い染料が藍より青くなるという比喩が、学びや成長を表す古い教えとして伝えられていました。
鎌倉時代の『十訓抄(じっきんしょう)』(1252年)では、さまざまな才芸について、子孫が父祖を越えることは容易ではないという文脈で、「藍よりも青からんこと」に触れています。また、日蓮の『上野殿御返事』(1279年)では、亡き父に劣らない子をたたえる場面で、藍より青く、水より冷たい氷になぞらえる言い方が用いられています。ここでは、師弟だけでなく、父から子へ受け継がれたものが、さらにすぐれた姿となることを表していました。
南北朝時代の『筑波問答』(1357〜1372年ごろ)には、「あゐより出てあゐよりあをく、水より出て水より寒し」という、現在の形に近い日本語の表現が出てきます。さらに、室町時代の『応永本論語抄』(1420年)では、もとの数より大きく記すことを、藍から出た青が藍より青いことになぞらえており、この表現が「もとから生まれたものが、もと以上になる」という広い意味でも使われていたことが分かります。
江戸時代前期の『童観鈔』(1625年)では、青が藍より青く、氷が水より冷たいというたとえに続いて、学問に励めば弟子が師匠よりまさるという意味が示されています。ここで、古い中国の学問の教えが、現在よく知られる「弟子が師を越える」という意味と、はっきり結び付いています。
その後、この言葉は「出藍の誉れ」とも言われ、近代以降は、とくに弟子や教え子が師を越えることをほめる表現として広まりました。宮本百合子の『婦人と文学』(昭和23年)にも、「あいよりあおし」という形で、門下の中からひときわすぐれた人物が現れたことを表す用例があります。藍から生まれた青が藍より深く美しくなるように、教えを受けた人が努力によって教えた人を越えることを、喜びと敬意をこめて表す言葉として定着したのです。
「青は藍より出でて藍より青し」の使い方




「青は藍より出でて藍より青し」の例文
- 弟子の陶芸家が師匠を越える評価を受けたのは、まさに青は藍より出でて藍より青しである。
- 長年指導を受けた棋士が師匠に勝ち、青は藍より出でて藍より青しとたたえられた。
- 若い料理人が師から学んだ技を磨き、新しい名物料理を生み出した姿は、青は藍より出でて藍より青しを思わせる。
- 研究室で育った教え子が世界的な成果を挙げ、教授は青は藍より出でて藍より青しだと喜んだ。
- 工房の後継者が師の技術を受け継ぎながらさらに精巧な作品を作り、青は藍より出でて藍より青しの評判を得た。
- かつて教えた選手が自分の記録を更新したとき、監督は青は藍より出でて藍より青しの思いで拍手を送った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・荀況撰『荀子』前三世紀ごろ成立。
・楊倞注、王先謙集解『荀子集解』思賢講舍、1891年。























