【ことわざ】
膿んだものは潰せ
【読み方】
うんだものはつぶせ
【意味】
災いや害のもとになるものは、放置せず、思い切って根本から取り除くべきだというたとえ。


【英語】
・Stop the rot(悪い状態が広がる前に食い止める)
【類義語】
・膿を出す(うみをだす)
【対義語】
・臭い物に蓋をする(くさいものにふたをする)
「膿んだものは潰せ」の語源・由来
「膿んだものは潰せ」は、膿のたまったはれものを処置する様子を、災いや問題の根本的な解決に重ねたことわざです。「膿んだら潰せ」という形でも使われます。
「膿む」は、傷やはれものが膿をもつことです。古い用例は『聖語蔵本成実論天長五年点』(828年・平安時代前期)にあり、「熟れる癰は壊れやすい」という内容の中で、化膿したはれものを表しています。
「膿」は、もともと化膿した部分に生じる液体を指しますが、そこから、始末しなければすっきりしない弊害や、組織の内部にたまった悪いものを表す比喩にも広がりました。
はれものが破れて膿が出る状態は、古くから身近なものとして、言葉に表されてきました。『日葡辞書(にっぽじしょ)』(1603〜1604年・安土桃山時代から江戸時代初期)には、はれものの表面が破れて膿が出ることを「口があく」と表す用法があります。
江戸時代には、「膿んだものが潰れる」という形を用いた別の言い回しもありました。竹田出雲の浄瑠璃『蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』(1734年・江戸時代中期、竹田出雲著)には、「うんだものが潰れた共一言の返答せず」とあります。
この用例は、縁談の返事を求められても、膿んだはれものが潰れたとさえ言わないほど、一言も答えない様子を表しています。現在の「膿んだものは潰せ」とは意味が異なりますが、膿んだものが潰れるという具体的な光景が、すでに日常の比喩として使われていたことを示しています。
明治時代には、化膿した所が潰れて膿が出ることを表す「膿潰(のうかい)」という言葉も用いられました。増山守正の『西京繁昌記(さいきょうはんじょうき)』(1877年・明治時代前期、増山守正著)に、その用例があります。
このような身体の変化を表す言葉を背景に、「膿」は次第に、集団や社会の内部にたまった不正、弊害、わだかまりなどにもたとえられるようになりました。「膿を出す」は、組織に積み重なった弊害を取り除き、本来あるべき状態へ戻すことを表します。
「膿んだものは潰せ」の「潰せ」は、問題を力任せに壊すという意味ではありません。原因を残したまま小さく取り繕うのではなく、再び同じ問題が起こらないよう、災いのもとを断つことを求める言い方です。
これと反対の発想を表すのが、「臭い物に蓋をする」です。不都合な事実を一時しのぎの方法で隠すのに対し、「膿んだものは潰せ」は、隠さずに原因へ手を入れ、問題そのものを解決することを勧めます。
なお、このことわざは、身体のできものを自分で潰すよう勧める言葉ではありません。実際に膿がたまった場合は、原因や状態に応じて、薬による治療や医療機関での排膿などが必要になることがあります。
現在では、長く放置された不正、繰り返し起こる失敗、深まった対立などに対し、表面上の処置で済ませず、原因から改めるべきだという教えとして使われています。
「膿んだものは潰せ」の使い方




「膿んだものは潰せ」の例文
- 委員会は、膿んだものは潰せの考えで、会計の不備を根本から改めた。
- 何度も同じ連絡ミスが起きたため、担任は膿んだものは潰せと、手順そのものを見直した。
- 友人同士の誤解を放置せず、膿んだものは潰せと腹を割って話し合った。
- 会社は膿んだものは潰せの方針を掲げ、不正を生む古い制度を廃止した。
- 地域では事故が続く交差点について、膿んだものは潰せと安全対策を一から改めた。
・ - 問題を隠すだけでは再発するため、膿んだものは潰せという姿勢が必要となる。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.
・『聖語蔵本成実論天長五年点』828年。
・『日葡辞書』1603〜1604年。
・竹田出雲『蘆屋道満大内鑑』1734年。
・増山守正『西京繁昌記』1877年。























