【運は天に在り】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

運は天に在り

【ことわざ】
運は天に在り

【読み方】
うんはてんにあり

【意味】
人の運命や物事の成否は天命によるもので、人の力だけではどうすることもできないということ。

ことわざ博士
「運は天に在り」は、結果を人知の及ばないものとして受け止める考えを表すよ。
助手ねこ
勝負や重大な決断に際し、結果を天に任せて覚悟を決める場面で用いるニャン。

【英語】
・Man proposes, God disposes(人が計画しても、最終的な成り行きは神が決める)

【類義語】
・運否天賦(うんぷてんぷ)
・人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ)

「運は天に在り」の語源・由来

ことわざを深掘り

「運は天に在り」の「運」は、人の意思や努力だけでは決められない巡り合わせや運命を指します。「天」は、人間を超えた力によって物事の成り行きを定めるものを表し、全体では「運命の決定は天にある」という意味になります。

この言い方の古い用例は、『太平記(たいへいき)』(14世紀後半成立・南北朝時代、作者未詳)の巻第二十九に出てきます。『太平記』は、鎌倉幕府の滅亡から南北朝の内乱を経て、室町幕府が形を整えていくまでを描いた軍記物語です。

巻第二十九には、京都で足利尊氏(あしかがたかうじ)側の軍勢と戦う桃井直常(もものいただつね)・直信(ただのぶ)兄弟の軍が、前後から攻められる場面があります。兵たちに退こうとする様子が現れると、兄弟はわざわざ馬から飛び降り、敷物の上に座りました。

そのとき、二人は「運は天にあり、一足も引事有べからず。只討死をせよ」と命じます。運命は天に任せ、一歩も退かず、命を惜しまず戦えという厳しい覚悟を、兵たちに求めた言葉です。

この古い用例では、「運は天に在り」は、何もせずに幸運を待つ言葉ではありません。勝敗や生死の最終的な行方は人間には決められなくても、自分の取るべき行動は自分で決め、恐れずに進もうとする態度を表しています。

江戸時代に入ると、この重々しい言葉は、笑いを生む言い回しにも使われました。安楽庵策伝の笑話集『醒睡笑(せいすいしょう)』(1623年・江戸時代前期成立)の巻五には、「運在天、吾刀在質屋」とあります。運は天にあるが、自分の刀は質屋にあるという、武士の苦しい懐事情をからかった表現です。

また、「運は天にあり、ぼた餠は棚に有り」という、音の似た言葉を続けるしゃれも生まれました。深刻な覚悟を表すことわざが広く知られていたからこそ、身近な食べ物を結び付けたもじりが、笑いとして成り立ったのです。

後世には、上杉謙信(うえすぎけんしん)の居城である春日山城(かすがやまじょう)の壁書として伝わる文章の冒頭にも、「運は天にあり。鎧は胸にあり。手柄は足にあり」と置かれました。この壁書では、運を天に任せる一方、身を守る備えや功績は、自らの心構えと行動にかかっていることを説いています。

ただし、「運は天に在り」ということわざ自体は、上杉謙信が生まれるより前の『太平記』にすでに出ています。そのため、謙信が初めて作った言葉ではなく、古くからあった言い方を、戦いに臨む心構えとして用いた伝承と捉えるのが適切です。壁書の文章は、布施秀治の『上杉謙信伝』(大正6年)にも収められています。

明治時代には、福沢諭吉の『新女大学(しんおんなだいがく)』(明治32年)で、娘の結婚を富くじにたとえ、「中るも中らざるも運は天に在り」と用いています。ここでは、戦場の生死ではなく、将来を予測しにくい結婚の行く末を表しており、ことわざの用法が人生一般へ広がっていたことが分かります。

古い用例では「あり」と仮名で書かれ、近代の文章では「在り」とする表記も使われています。表記は異なっても、結果には人間の力が及ばない部分があると認め、そのうえで覚悟を決めて行動するという意味は共通しています。

「運は天に在り」の使い方

ともこ
明日は市の合唱コンクールだね。他の学校も上手だから、少し緊張するな……。
健太
音程も歌い方も、みんなで何度も練習したよ。あとは運は天に在りだ!
ともこ
そうだね。結果ばかり心配しないで、舞台では練習してきた力を出し切ろう。
健太
うん! どんな結果でも悔いが残らないように、胸を張って歌おう。

「運は天に在り」の例文

例文
  • 試験勉強は十分にやり切ったので、あとは運は天に在りと結果を待った。
  • 決勝戦を前に、選手たちは運は天に在りと覚悟を決めて競技場へ向かった。
  • 十分な準備を整えた社長は、最後は運は天に在りだと新事業の開始を決断した。
  • 手術を受ける祖父は、医師を信じ、運は天に在りと静かに当日を迎えた。
  • 長い航海へ出る船員たちは、運は天に在りと心を定めて港を離れた。
  • できる限りの対策を講じた以上、運は天に在りと結果を受け入れるほかはない。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『太平記』14世紀後半成立。
・安楽庵策伝著、鈴木棠三校注『醒睡笑 上』岩波書店、1986年。
・福沢諭吉『新女大学』1899年。
・布施秀治『上杉謙信伝』謙信文庫、1917年。




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