【ことわざ】
売り出し三年
【読み方】
うりだしさんねん
【意味】
商売を始めた初めの三年間は利益が少なく苦しいが、辛抱して続ければ、やがて基礎と信用ができて軌道に乗るという教え。


【英語】
・Rome wasn’t built in a day(大きな仕事は短期間では成し遂げられない)
【類義語】
・商い三年(あきないさんねん)
「売り出し三年」の語源・由来
「売り出し三年」は、商売を始めても、すぐには十分な利益や信用を得られないため、初めの数年間を辛抱して基礎を築くことが大切だという経験を、短くまとめたことわざです。特定の人物の逸話ではなく、商売を営む人々の実感から生まれた教えです。
ここでの「売り出し」は、安売りや特売を行うことではありません。商品を売り始めること、さらに広くは、新しく店や商売を始めることを表しています。
「売り出し」という言葉の古い用例は、式亭三馬の滑稽本(こっけいぼん)『浮世床(うきよどこ)』(1813〜1814年・江戸時代後期、式亭三馬著)に出てきます。この作品では、物を売り始めることを表す言葉として使われています。
この用例は、「売り出し三年」ということわざそのものではありませんが、江戸時代後期には、「売り出し」が商売を始めることに関わる言葉として使われていたことを示しています。ことわざの「売り出し」にも、この意味が受け継がれています。
後半の「三年」は、開店から三年目になれば必ず利益が出ると保証する数字ではありません。店の評判が広まり、なじみの客が増え、仕入れや販売の仕方が整うまでには、相応の時間と辛抱が必要だということを表しています。
よく似たことわざに、「商い三年」があります。これは、商売で利益を上げられるようになるまでには三年ほどかかるので、その間は辛抱するようにという教えです。
商売を長く続けることの大切さを説く教えは、さらに古い文献にも現れています。北条団水の浮世草子(うきよぞうし)『日本新永代蔵(にっぽんしんえいたいぐら)』(1713年・江戸時代中期、北条団水作)には、「商は牛の涎(ヨダレ)、万事せかぬが大器なりと」とあります。
この一節は、牛の涎が細く長く垂れるように、商売も利益を急がず、気長に続けるべきだという意味です。「売り出し三年」と表現は異なりますが、商売では短い期間の成果に一喜一憂せず、根気よく続けることが大切だという考えは共通しています。
日本のことわざでは、「三年」が、辛抱や修練に必要な期間を表すことがあります。「石の上にも三年」などと同じく、すぐに結果を求めず、一定の年月をかけて取り組むよう促す数字として用いられています。
ただし、「石の上にも三年」が物事全般について忍耐を説くのに対し、「売り出し三年」は、商売を始めた直後の苦しい時期に焦点を当てています。利益だけでなく、客からの信用や店の評判を少しずつ築くことを重んじる言葉です。
現在では、店を開いた場合だけでなく、新しい事業や仕事を始め、すぐには成果が出ない場面にも用いられます。ただし、本来は、商売が軌道に乗るまでの辛抱を説いたことわざです。
「売り出し三年」は、初めの不振だけを見て商売を諦めるのではなく、日々の仕事を積み重ね、客の信用を得るまで粘り強く続けるよう教えています。短い言葉の中に、商売の土台は一朝一夕には築けないという戒めが込められています。
「売り出し三年」の使い方




「売り出し三年」の例文
- 父は売り出し三年と心得て、開店直後の赤字にも焦らず、地道に客を増やした。
- 売り出し三年というから、店主は一時の不振で閉店を決めず、商品の改善を続けた。
- 祖母は新しい食堂を始めた娘に、売り出し三年の覚悟で信用を築くよう励ました。
- 起業したばかりの彼は、売り出し三年を胸に、利益よりも顧客との信頼を優先した。
- 商店街の先輩は、売り出し三年なのだから、一年目の売上だけで商売を諦めてはいけないと助言した。
- 売り出し三年は、商売が軌道に乗るまで辛抱強く基礎を固める大切さを教える。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・式亭三馬『浮世床』1813〜1814年。
・北条団水『日本新永代蔵』1713年。























