【羽觴を飛ばす】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

羽觴を飛ばす

【故事成語】
羽觴を飛ばす

【読み方】
うしょうをとばす

【意味】
宴席で酒杯を盛んにやり取りし、にぎやかに酒盛りをすること。

ことわざ博士
「羽觴」は酒杯を指し、「飛ばす」は杯が次々と行き交うほど宴が盛んなことを表すよ。
助手ねこ
詩酒の宴や祝いの席で、人々が盛んに酒を酌み交わす場面に用いるニャン。

【類義語】
・献酬(けんしゅう)
・酌み交わす(くみかわす)

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「羽觴を飛ばす」の故事

故事成語を深掘り

「羽觴を飛ばす」は、中国・唐代の詩人、李白の散文『春夜宴桃李園序(しゅんやとうりえんにうたげするのじょ)』に出てくる「飛羽觴而醉月」という一節をもとにした故事成語です。李白は盛唐を代表する詩人で、701年に生まれ、762年に亡くなりました。

この作品は、春の夜、李白が一族の若者たちと花の咲く園に集まり、酒を飲みながら詩を作った宴の序文です。伝本によって題名には「桃李園」「桃花園」などの違いがありますが、春の園で開かれた詩酒の宴を描く点は共通しています。

文章の初めで李白は、天地を万物の宿、月日を永遠の旅人にたとえ、夢のように短い人生の中で、喜びを味わえる時はどれほどあるだろうかと語ります。そして、美しい春の景色に招かれた今こそ、夜まで集って楽しむべき時だと、宴へ話を進めます。

園に集まった若者たちは、詩文の才に恵まれた人々でした。花を眺めながら清らかな談論を続け、詩を作り、月の光の下で酒を酌み交わします。

その場面を表すのが、「開瓊筵以坐花、飛羽觴而醉月」です。美しい宴席を開いて花の中に座り、羽觴を盛んに行き交わせながら、月の下で酔うという意味です。

「羽觴」の「觴」は、酒を飲む杯を指します。「羽觴」は、もとは雀の姿をかたどり、頭や尾、翼を備えた杯、または早く飲む合図として羽を挟んだ杯を指したともいわれ、のちには広く酒杯そのものを表すようになりました。

「羽觴」という言葉自体は、李白よりも古くから使われています。中国・戦国時代の作品を集めた『楚辞(そじ)』の「招魂(しょうこん)」には、「瑤漿蜜勺、實羽觴些」とあり、甘く上等な酒を羽觴に満たす宴の様子が描かれています。「招魂」は、伝統的に宋玉の作とされています。

したがって、李白が「羽觴」という酒器の名そのものを作ったわけではありません。李白の表現で重要なのは、その羽觴に「飛ぶ」という動きを結び付け、杯が人々の間を素早く行き交う、活気に満ちた宴の姿を描いたことです。

ここでいう「飛ばす」は、杯を実際に空中へ投げることではありません。杯が翼を得たかのように次々と渡っていく様子を表しており、日本語では「羽」と「飛ばす」が響き合う表現としても受け取られました。

日本では、平安時代の菅原道真が自ら編んだ『菅家文草(かんけぶんそう)』(900年・平安時代前期)に、「惜春何到曲江頭、遙憶羽觴浪上浮」とあります。ここでは、水の流れに浮かぶ羽觴を遠く思い起こす形で使われており、「羽觴」という言葉が日本の漢詩文にも早くから取り入れられていたことが分かります。

「羽觴を飛ばす」に近い日本語の古例は、一条兼良が著した『公事根源(くじこんげん)』(1422年ごろ・室町時代前期)に出てきます。同書は曲水宴について述べたあと、「羽觴を飛すなどいふも此事なるべし」と記しています。

曲水宴とは、曲がりくねった水の流れに酒杯を浮かべ、その杯が自分の前を過ぎるまでに詩を作る宴です。『公事根源』では、水上を杯が次々に流れる姿と「羽觴を飛ばす」とを結び付けて理解しています。

ただし、李白の原文には、曲水宴とは明記されていません。もとの一節は、花の中に座り、月を仰ぎながら杯を盛んに回す宴の勢いを描いたもので、日本では、曲水に浮かぶ杯の優雅な姿とも重ねながら受け継がれました。

こうして「羽觴を飛ばす」は、特定の酒器や曲水宴だけを指す言葉ではなく、宴席で酒杯を盛んにやり取りし、酒盛りを楽しむことを表す故事成語として定着しました。華やかで風雅な酒宴を思わせる、古典的な趣のある表現です。

「羽觴を飛ばす」の使い方

健太
昨日、おじいちゃんの古希のお祝いがあって、親戚がみんな集まったんだよ。
ともこ
それは楽しそうだね、どんな様子だったの?
健太
みんなが笑顔で、次から次へとお酒の杯を交わして、すごくにぎやかな宴会だったんだ。
ともこ
まさに羽觴を飛ばすという言葉通りの、華やかでおめでたい席だったんだね!
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「羽觴を飛ばす」の例文

例文
  • 花見の宴では、一同が羽觴を飛ばす春の夜を楽しんだ。
  • 詩人たちは月明かりの下で羽觴を飛ばすように、次々に詩を披露した。
  • 戦勝を祝う宴が開かれ、将兵は夜更けまで羽觴を飛ばすようだった。
  • 久しぶりに集まった旧友たちは、思い出を語りながら羽觴を飛ばす時間を過ごした。
  • 祝賀の席では、招待客が羽觴を飛ばすように主人の栄誉をたたえた。
  • 物語には、文人たちが庭園で羽觴を飛ばす華やかな場面が描かれている。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・白川静『字通』平凡社、1996年。
・星川清孝著『古文真宝(後集) 新釈漢文大系16』明治書院、1963年。
・『楚辞』「招魂」戦国時代。
・李白『春夜宴桃李園序』唐、8世紀。
・菅原道真『菅家文草』900年。
・一条兼良『公事根源』1422年ごろ。


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