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【悪事千里を走る】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

悪事千里を走る

【ことわざ】
悪事千里を走る

【読み方】
あくじせんりをはしる

【意味】
悪い行いや悪いうわさは、たちまち遠くまで知れ渡るということ。

ことわざ博士
このことわざは、悪いことそのものだけでなく、よくない評判があっという間に広がるときにも使うよ。こっそりしたつもりでも、人づてに伝わって思ったより遠くまで広がってしまう、というこわさを表すんだ。
助手ねこ
人の善い行いより、悪い話のほうが目立って広まりやすい、という世の中の傾きにも目を向けた言い方ニャン。

【英語】
・Bad news travels fast.(悪い知らせや悪いうわさはすぐ広まる)

【類義語】
・人の口に戸は立てられぬ(ひとのくちにとはたてられぬ)
・隠すより現る(かくすよりあらわる)
・好事門を出でず悪事千里を行く(こうじもんをいでずあくじせんりをゆく)

【対義語】
・好事門を出でず(こうじもんをいでず)
・人の噂も七十五日(ひとのうわさもしちじゅうごにち)

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「悪事千里を走る」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざのもとになった形は、中国の古い言い回し「好事不出門、悪事行千里」です。意味は、よい行いはなかなか外に伝わらないのに、悪いことは千里もの遠くまで伝わってしまう、というものです。今の「悪事千里を走る」は、この後半が日本語のことわざとして広く使われるようになった形です。

この言い回しが出てくる原典としてよく知られるのが、『北夢瑣言』です。これは10世紀の中国で孫光憲(そんこうけん)がまとめた書物で、唐の末から五代にかけての人びとの逸話を集めたものです。巻六の話の中で、この句が印象的に語られています。

その話に関わる人物が、後晋の宰相であった和凝(かぎょう)です。和凝は若いころ、艶っぽい小唄を作ることで名を知られていましたが、高い地位に就いてからは、それが自分の立場にふさわしくないとして、昔の作を焼き捨てさせたと伝えられます。

ところが、作った歌そのものを消そうとしても、その評判までは消えませんでした。話の中では、その名声が異民族にまで伝わっていたとされ、そこで作者は、まさに「悪は千里を行く」と述べています。ここから、よくない行いだけでなく、体面を傷つけるような悪い評判もまた、遠くまで広がるものだという考え方が読み取れます。

大切なのは、この「悪事」が、今の感覚でいう大きな犯罪だけを指しているわけではないという点です。もとの話から分かるのは、世間から好ましくないと受け取られること、名誉を傷つけるうわさ、立場にふさわしくない評判まで含めて、広く使われていたということです。だから今でも、このことわざは「悪いうわさ」の広まりについて自然に用いられます。

日本でこの言い方がかなり古くから使われていたことも、文献で確かめられます。古い例としてよく挙げられるのは、南北朝時代ごろに成った『曽我物語』で、すでに「悪事千里をはしる」とあることが知られています。日本では、中世の段階でこの表現が受け入れられていたことになります。

さらに、『明徳記』にも1392年(明徳3年・南北朝時代末期)から1393年(明徳4年・室町時代初期)ごろの例があり、世に隠しておけない出来事が広まる文脈で使われています。つまり、このことわざは、単なる書物の中の漢文句ではなく、日本語の文章や語りの中でも早くから生きた言葉になっていたのです。

その後も、この表現は形を少し変えながら使われ続けました。日本では「悪事千里を行く」という形もあり、さらに後半を縮めた「悪事千里」という言い方も行われています。1585年(天正13年・安土桃山時代)には『多聞院日記』に「悪事千里」の例があり、意味がよく通じる言葉として定着していたことが分かります。

江戸時代に入ってからも、このことわざはしばしば用いられました。『新可笑記』や『大和俗訓』などにも見え、悪いことやそしりは漏れやすいという教えと結びついて語られています。こうして、学問の言葉というより、世の中のありさまを言い当てることわざとして広まっていきました。

表現の形にも、少し変化があります。もとの中国の句は「行く」で、日本でも「行く」「伝ふ」の形がありましたが、今の日本語では「走る」がもっとも広く使われています。遠くへ勢いよく広がる感じが、「走る」という日本語によっていっそうはっきり伝わるようになったのでしょう。

また、このことわざは「好事門を出でず」と対にして理解すると、意味がさらによく分かります。善い行いは目立たず、悪いことはすぐに人の口にのぼる。そうした人間社会のかたよりを、短い言葉で鋭く言い表しているのです。

このように、「悪事千里を走る」は、中国の古い句を出発点としながら、日本で早くから使われ、形を少し変えつつ今まで残ってきたことわざです。もともとの話をたどると、ただ「悪いことはばれる」というだけでなく、悪評は想像以上の速さで広がる、だから行いにも言葉にも慎重でありたい、という戒めがこもっていることが分かります。

「悪事千里を走る」の使い方

ともこ
理科の観察カード、昨日の夜にお兄さんのノートを写したって本当? 朝からその話がクラス中に広がっているよ。
健太
うっ……休み時間に一人だけに打ち明けたのに、もう隣の組まで知られているのか。
ともこ
こういうときに悪事千里を走るって言うんだね。もうごまかさないで、自分で観察しなかったことを先生に話したほうがいいよ。
健太
そうするよ! 書き直せるかは分からないけど、先に正直に謝ってから、今日の分は自分で観察し直すよ。
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「悪事千里を走る」の例文

例文
  1. 試験中に友だちの答えをのぞいたことがすぐに学年じゅうへ広まり、悪事千里を走るを思い知らされた。
  2. 町内会の募金を勝手に別の買い物に使ったことが知れ渡り、悪事千里を走るという通りの結果になった。
  3. 会社の書類をこっそり持ち出したうわさが取引先にまで伝わり、悪事千里を走るの重さが現れた。
  4. 文化祭の出し物で不正に投票を集めたことが当日中に広まり、悪事千里を走るとはこのことだと皆が言った。
  5. 友人の秘密を面白半分で言いふらしたことが本人の耳にもすぐ入り、悪事千里を走ると言うほかなかった。
  6. 店の産地表示をごまかした話が遠くの客にまで届き、悪事千里を走るということわざそのままの事態になった。




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