【ことわざ】
秋の日は釣瓶落とし
【読み方】
あきのひはつるべおとし
【意味】
秋は日が沈み始めると、たちまち暮れて暗くなること。秋の日暮れの早さをたとえた言い方。


【英語】
・It gets dark early in autumn.(秋は日暮れが早い)
・Night falls quickly on an autumn day.(秋の日はすぐに暮れる)
・The autumn sun sets as quickly as a bucket dropping into a well.(秋の日は釣瓶が井戸に落ちるように早く沈む)
【類義語】
・秋の日の鉈落とし(あきのひのなたおとし)
・釣瓶落し(つるべおとし)
【対義語】
・春の日は暮れそうで暮れぬ(はるのひはくれそうでくれぬ)
「秋の日は釣瓶落とし」の語源・由来
このことわざの土台にあるのは、昔の井戸で使った釣瓶という道具です。釣瓶は、縄や竿の先につけて井戸水をくむ桶のことで、言葉そのものは720年(養老4年・奈良時代)の『日本書紀(にほんしょき)』にも出てくるほど古いものです。
釣瓶を井戸へおろすと、桶はまっすぐ下へ、すばやく落ちていきます。その動きの速さから、「釣瓶落とし」は、何かが急に落ちるさまをたとえる言い方になりました。
このことわざでいちばん大事なのは、秋になると夕方が思った以上に早く進む、という実感です。朝から晩まで一日が極端に短いというより、日が傾いてから暗くなるまでが早い、という感じを言い表しています。
釣瓶を使う井戸は、川や湧き水を使いにくい土地で広く用いられました。だからこそ、釣瓶がすとんと落ちる速さは、昔の人にとってだれにも伝わりやすい、身近なたとえだったのです。
秋の日暮れが早く感じられるのは、日の入りの時刻が早まるだけではありません。日の入りのあとに空がうす明るい時間を薄明といいますが、秋はこの時間も短く、日が沈むと間もなく暗くなります。
そのため、「釣瓶落とし」は大げさな言い方に見えても、季節の感じをとてもよくつかんだ表現です。実際に太陽が井戸へ落ちるわけではなく、それほど速く暮れるように感じる、というたとえなのです。
今の形がはっきり書かれた古い例としてよく挙げられるのは、1862年(文久2年・江戸時代後期)の歌舞伎『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)』です。そこでは、もうすぐ日が暮れることを知らせるせりふの中に、このことわざが自然に使われています。
その後も、1876年(明治9年・明治時代前期)の歌舞伎『牡丹平家譚(なとりぐさへいけばなし)』に同じ言い方が出てきます。明治のころには、舞台の言葉としてもすぐ通じるほど、この表現が広く親しまれていたことが分かります。
さらに、井原西鶴に関わる江戸時代の注記には、天和・貞享ごろ、つまり1681年から1688年(天和元年〜貞享5年・江戸時代前期)には、すでに「秋の日は釣瓶落とし」という諺が知られていたことを思わせる記述があります。そう考えると、この言い方は江戸の町の暮らしの中で少しずつ定着していったのでしょう。
近い言い方として「秋の日の鉈落とし」も伝わっています。まっすぐ鋭く落ちるものにたとえて、秋の夕暮れの早さを言い表そうとした点は同じです。
つまり、このことわざの由来は、井戸の釣瓶がすとんと落ちる動きの速さにあります。そのわかりやすい比喩が、秋の夕方は油断するとすぐ暗くなるという人々の実感に重なり、長く使われ続けてきたのです。
「秋の日は釣瓶落とし」の使い方




「秋の日は釣瓶落とし」の例文
- 運動会の片づけをしているうちに、秋の日は釣瓶落としで校庭が急に暗くなった。
- 山道の下りでは、秋の日は釣瓶落としと思って、明るいうちに歩き出した。
- 買い物に出た母は、秋の日は釣瓶落としだから五時前には帰ろうと言った。
- 秋祭りの準備では、秋の日は釣瓶落としなので、提灯は明るいうちにつるした。
- 外回りの仕事では、秋の日は釣瓶落としを考えて、訪問の予定を早めに組み直した。
- 写真撮影では、秋の日は釣瓶落としで光がすぐ変わるため、午後の早い時間に終えた。























