【秋の日は釣瓶落とし】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語)

秋の日は釣瓶落とし

【ことわざ】
秋の日は釣瓶落とし

【読み方】
あきのひはつるべおとし

【意味】
秋の夕日は、井戸へ落ちる釣瓶のように急に沈み、たちまち暗くなるというたとえ。

ことわざ博士
秋の日暮れが急に早まる様子を、身近な道具の速い動きに重ねたことわざだよ。
助手ねこ
夕方の外出や作業を早めに切り上げる場面などで、秋の暮れやすさを表すときに用いるニャン。

【類義語】
・秋の日の鉈落とし(あきのひのなたおとし)

「秋の日は釣瓶落とし」の語源・由来

ことわざを深掘り

「釣瓶(つるべ)」は、縄や竿の先につけて、井戸の水をくみ上げるために下ろす桶(おけ)のことです。水をくむために下ろすと、釣瓶は井戸の中へすばやく落ちていきます。

このことわざは、その釣瓶の落ち方を、秋の夕日の沈み方に重ねた表現です。秋の夕方は、まだ明るいと思っていた空が急に暮れていくように感じられるため、その速さを、目に浮かぶ動きによって言い表しています。

ただし、「釣瓶落し」という言い方は、初めから秋の日暮れだけを指していたわけではありません。『平家物語(へいけものがたり)』(鎌倉時代前期の軍記物語、作者・成立年未詳)巻九には、大きな岩の下が「つるべおとしに十四五丈ぞくだったる」とあります。

この『平家物語』の用例では、夕日ではなく、足もとの地面が深く切れ落ちている様子を表しています。釣瓶が井戸へ落ちるように、「まっすぐ、急に下へ落ちる」という具体的な意味で用いられているのです。

そのような「急に落ちる」という比喩が、秋の日暮れにも結び付いていきます。秋の日が沈み始めると、間もなく暗くなる様子は、井戸へ落ちていく釣瓶の動きとよく重なります。

秋の日暮れを表す古い用例として、『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)』(1862年・江戸時代後期、河竹黙阿弥作)が挙げられます。この歌舞伎の六幕には、「秋の日の釣瓶落し」とあり、日が暮れるまで間がないため、その日は帰ろうとする場面で用いられています。

ここで使われている形は、現在の「秋の日は釣瓶落とし」ではなく、「秋の日の釣瓶落し」です。しかし、秋の夕方はすぐに暗くなるため、早めに用事を終えるという場面に用いられており、表す意味は現在のことわざとほぼ同じです。

さらに、『牡丹平家譚』(1876年・明治時代前期)にも、「秋の日の釣瓶落しに暮れ易し」という形が出てきます。幕末から明治へと時代が移っても、秋の日暮れの速さを表す言い回しとして使われていたことが分かります。

明治後期の『日本俚諺大全』(1906〜1908年)には、「秋の日は釣瓶落し」と、現在広く用いられる形に近い表現が掲げられています。江戸時代後期から明治時代前期の用例には「秋の日の」の形があり、明治時代後期には「秋の日は」の形も用いられていました。

表記には、「釣瓶落」「釣瓶落し」「釣瓶落とし」の形があります。また、同じ意味の言い方として、秋の日暮れの速さを「鉈(なた)」にたとえた「秋の日の鉈落とし」も伝わっています。

秋になると、日の沈む時刻が早まるだけでなく、日が沈んだ後に明るさが残る時間も短くなり、間もなく暗くなります。「秋の日は釣瓶落とし」は、その季節の実感を、井戸の釣瓶という身近な道具によって鮮やかに言い表したことわざです。

したがって、このことわざは、ただ秋は日が短いと述べるだけの言葉ではありません。明るいうちにと思っていたことも、少し油断すると暗くなってしまうほど、秋の夕暮れは急に訪れるという生活の実感を伝える表現です。

「秋の日は釣瓶落とし」の使い方

健太
放課後、公園でどんぐりの写生をしていたら、まだ五時前なのに暗くなってきたよ。
ともこ
ほんとうだ。秋の日は釣瓶落としっていうから、色えんぴつを片づけて帰ろう!
健太
あと一枚だけ描きたかったけれど、道が暗くなる前に帰るほうがいいね。
ともこ
続きは明日の昼休みに描こう。明るいところなら、どんぐりの色もよく見えるよ。

「秋の日は釣瓶落とし」の例文

例文
  • 秋の山道では、秋の日は釣瓶落としなので、日没前に下山できる計画が欠かせない。
  • 運動会の後片付けをしているうちに、秋の日は釣瓶落としで、校庭はたちまち薄暗くなった。
  • 祖母は、秋の日は釣瓶落としだからと、畑仕事の道具を早めにしまった。
  • 秋祭りの準備を終えて外に出ると、秋の日は釣瓶落としという通り、町並みはすでに夕闇に包まれていた。
  • 写真家は、秋の日は釣瓶落としで夕景の光がすぐ失われるため、撮影場所へ早めに向かった。
  • 配達の担当者は、秋の日は釣瓶落としで帰路が暗くなることを見込み、山間の集落を先に回った。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2005〜2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・河竹黙阿弥『勧善懲悪覗機関』1862年。
・河竹黙阿弥『牡丹平家譚』1876年。
・『日本俚諺大全』1906〜1908年。




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