【ことわざ】
鮟鱇の待ち食い
【読み方】
あんこうのまちぐい
【意味】
働きもせずに、じっと機会を待って利益を得ようとすることのたとえ。


【英語】
・wait for something to fall into one’s lap.(努力せずによい機会が舞い込むのを待つ)
【対義語】
・蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)
「鮟鱇の待ち食い」の語源・由来
「鮟鱇」は、頭と口が大きく、海底にすむ魚です。背びれの先にある誘引突起(ゆういんとっき)を動かして小魚を近づけ、口のそばまで来た獲物をすばやく取り込む性質があります。この捕食のしかたが、「待って食べる」というたとえの土台になりました。
ただし、実際の鮟鱇は、ただ口を開けて何もせずにいるだけの魚ではありません。海底で獲物を待つだけでなく、中層や表層まで泳ぎ上がって魚や海鳥を食べることもあります。そのため「鮟鱇の待ち食い」は、生物としての鮟鱇をそのまま正確に説明した言葉ではなく、人の態度をたとえるために、待ち伏せして食べる一面を強く取り出した表現です。
「鮟鱇」という魚名は、江戸時代前期の『料理物語』(1643年)にも出てきます。そこでは「鮟鱇は汁・刺身・吸い物」といった形で、食材としての鮟鱇が記されています。魚としてよく知られ、食卓や魚市場で目にされる存在だったからこそ、その姿や習性がたとえとしても受け止められやすかったといえます。
一方で、「鮟鱇」という言葉には、早くから人の姿や性質をたとえる働きもありました。室町時代の節用集には、魚としての「鮟鱇」と、人をたとえる「暗向」という表記が分けて使われた例があり、江戸時代の雑俳にも、ぼんやりした人をからかう文脈で「あんこう」が出てきます。大きな口、鈍そうな動き、獲物を待つ姿が、人間の態度を言い表す材料になっていったのです。
この流れに近い言い方に「鮟鱇の餌待ち」があります。これは、鮟鱇が餌を待つ姿のように、口を開けてぼんやりしている様子を表す言い方です。「待ち食い」は、そこからさらに一歩進んで、ただぼんやりしているだけでなく、働かずに利益や食べ物を得ようとする態度を指す表現として定着しました。
現在の「鮟鱇の待ち食い」は、単に「待つこと」をいうのではありません。十分に準備した人が落ち着いて好機を待つ場合には、ふつう用いません。自分では骨を折らず、他人の働きや偶然の機会に頼って得をしようとする様子を、少し皮肉をこめていうことわざです。
「鮟鱇の待ち食い」の使い方




「鮟鱇の待ち食い」の例文
- 班のポスター作りで何も手伝わず、表彰だけ受けようとするのは鮟鱇の待ち食いだ。
- 夕食の準備を家族に任せきりで、ごちそうだけ楽しみにしている姿は鮟鱇の待ち食いに近い。
- 企画の案も資料も出さず、成功したときだけ評価を受けようとする態度は鮟鱇の待ち食いだ。
- 友人に旅行の予約や割引の手配をすべて任せ、自分は得だけしようとするのは鮟鱇の待ち食いである。
- 地域の祭りで準備に参加せず、当日の差し入れだけ期待するのは鮟鱇の待ち食いと言われても仕方ない。
- 勉強せずに友達が答えを教えてくれるのを待つような鮟鱇の待ち食いでは、力は身につかない。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・Pearson Education『Longman Dictionary of Contemporary English Sixth Edition』Pearson Education、2014年。























