【産みの苦しみ】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

産みの苦しみ

【慣用句】
産みの苦しみ

【読み方】
うみのくるしみ

【意味】
子を産むときの激しい苦しみ。転じて、新しく物事を作り出したり、始めたりするときの苦労。

ことわざ博士
産みの苦しみは、出産の苦痛をもとに、作品・計画・組織などを形にするまでの困難をたとえた言い方だよ。
助手ねこ
結果が生まれる前の試行錯誤や、初めての事業を軌道に乗せるまでの苦労をいう場面で用いるニャン。

【英語】
・birth pangs(出産の痛み。また、比喩的に大きな変化や新しい物事に伴う苦労)

【類義語】
・産みの悩み(うみのなやみ)
・苦心惨憺(くしんさんたん)

【対義語】
・案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)

「産みの苦しみ」の語源・由来

慣用句を深掘り

「産みの苦しみ」は、もとは子を産むときの激しい苦痛を表す言い方です。「うむ」は、胎児や卵を母体の外へ出す意味と、今までなかったものを新しく作り出す意味の両方をもつため、出産の苦しみが創作や事業の苦労へ、たとえとして広がりました。

「産む」は、子や卵を母体の外へ出す意味で用いられる一方、「生む」は新しい物事を作り出す意味にも広く用いられます。そのため、実際の出産を強く意識する場合は「産みの苦しみ」、創作や事業の比喩では「生みの苦しみ」と書くことも多くあります。

古くから、日本語では出産の苦しみを表す言葉と、心や身の苦しみを表す言葉が近いところで用いられてきました。たとえば「悩む」は、肉体的に苦しむ意味として妊娠や出産の苦しみを含み、また精神的に思いわずらう意味にも広がっています。

この慣用句の土台には、命をこの世に送り出すまでには大きな痛みや努力が伴う、という実感があります。その具体的な苦痛が、新しい作品、考え、制度、事業などを世に出すまでの苦労を言い表す比喩になりました。

比喩としての用法では、単に「大変だった」というだけでなく、まだ形のないものを少しずつ形にする苦しさを表します。何度も考え直し、失敗し、工夫を重ねながら、ようやく一つの結果にたどりつく過程にふさわしい言い方です。

近代の文章にも、この比喩的な使い方が出てきます。折口信夫の評論『新しい国語教育の方角』には、言語を作り出す努力について「言語に対する生みの苦しみ」という表現があり、言葉を新しく整えていく苦労を示しています。

水野葉舟『言文一致』(1944年・昭和時代、親本『明治文学の潮流』所収)にも、明治期の文体の変化について「あの時代の『生みの苦しみ』」という表現が出てきます。ここでは、古い文体を乗り越えて新しい文章表現を作ろうとした時代の苦心を表しています。

さらに、折口信夫『歌の円寂する時』では、短歌を作る人の姿勢にふれて「生みの苦しみ」という表現が使われています。短い形の作品であっても、深い反省や表現の鍛錬を経なければならないという文脈で用いられています。

昭和後期の用例としては、中山千夏・矢崎泰久『精力舌論』(1975年)に、「生みの苦しみを味わっている」という形が出てきます。ここでは、政治や組織の動きの中で、新しい状態へ進むまでの苦労を表す言い方として用いられています。

このように、「産みの苦しみ」は、出産という具体的な痛みから出発し、新しいものが生まれる前の困難を表す慣用句として定着しました。現在では、作品づくり、企画、研究、会社の設立、制度の変更など、何かを初めて形にする場面で広く使われます。

「産みの苦しみ」の使い方

健太
自由研究のロボットがうまく動かないよ。モーターの向きを直しても、また別のところが止まっちゃうよ!
ともこ
新しいものを作るときは、産みの苦しみがあるね。完成まで何度も直すことになりそう。
健太
くやしいけど、少しずつよくなっている気はするよ。今日は配線を一つずつ確かめてみる。
ともこ
うん。苦労して完成したら、発表のときにきっと自信を持って説明できるよ!

「産みの苦しみ」の例文

例文
  • 新しい劇の台本が完成するまで、脚本家は産みの苦しみを味わった。
  • 初めての商品を開発する会社には、産みの苦しみがつきものだ。
  • 研究発表の結論をまとめるまで、班の全員が産みの苦しみを経験した。
  • 地域の祭りを一から作り直す作業は、まさに産みの苦しみの連続だった。
  • 小説家は産みの苦しみを越えて、ようやく納得のいく一章を書き上げた。
  • 新しい制度が動き出すまでには、多くの産みの苦しみがあった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、2006年。
・折口信夫『新しい国語教育の方角』。
・水野葉舟『明治文学の潮流』紀元社、1944年。
・折口信夫『歌の円寂する時』。
・中山千夏・矢崎泰久『精力舌論』話の特集、1975年。




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