【ことわざ】
嘘から出た実
【読み方】
うそからでたまこと
【意味】
嘘のつもりで言ったことが、思いがけず本当になること。


【英語】
・Many a true word is spoken in jest(冗談として口にした言葉が真実になることも多い)
【類義語】
・冗談から駒が出る(じょうだんからこまがでる)
「嘘から出た実」の語源・由来
「嘘から出た実」は、「嘘」と、それに反する「実」を結び付けた言い方です。ここでの「実」は「まこと」と読み、本当のことや、嘘偽りのない事実を指します。
したがって、言葉どおりには、「嘘から本当のことが生まれる」という意味になります。隠されていた真実が明らかになるのではなく、初めは事実ではなかった内容そのものが、その後、現実となることを表します。
現在の形が現れる最古級の用例は、人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)の『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』(1748年・江戸時代中期、二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作)にあります。この作品は、寛延元年に大坂の竹本座で初演されました。
『仮名手本忠臣蔵』は、赤穂浪士(あこうろうし)の敵討ちを題材としながら、人物名や時代を『太平記(たいへいき)』の世界へ置き換えた全十一段の作品です。史実の大石内蔵助に当たる人物を、大星由良助(おおぼしゆらのすけ)として描いています。
「嘘から出た実」が出てくるのは、七段目の「祇園一力茶屋の段」です。由良助は、遊び暮らして敵討ちの意思を失ったように装いながら、ひそかに主君の敵を討つ計画を進めています。
茶屋にいたおかるは、由良助が読んでいた密書を、手鏡に映してのぞき見ます。秘密を知られたと悟った由良助は、おかるを身請けすると持ちかけますが、その言葉の裏には、敵討ちの計画を守ろうとする厳しい意図がありました。
この場面には、「サうそから出た実でなければ根がとげぬ」とあります。初めは本心から出たのではない話であっても、実際に行えば本当のことになる、という文脈で使われています。
この古い用例には、現在の意味が、すでにはっきりと表れています。最初は嘘であった言葉が、その後の行動や成り行きによって事実に変わるという、現在と同じ仕組みです。
古くは、「嘘から出た実」のほかに、「嘘より出た実」という形も使われました。「から」と「より」は、どちらも物事の起点を示すため、ことわざの意味に大きな違いはありません。
このことわざは、後に江戸いろはかるたにも取り入れられました。古い絵札には、遊女が指を詰める場面が描かれ、軽い言葉や偽りが、思いがけず現実の出来事へと変わることを印象深く表していました。
近代には、「実」の代わりに「真」を用いた「嘘から出た真」という表記も使われています。菊池寛の『真珠夫人』(大正9年、菊池寛著)には、思いがけない成り行きで実現した結婚を、「嘘から出た真」と表す用例があります。
類義語の「冗談から駒が出る」も、冗談として口にしたことが本当になるという意味です。この言い方は、「瓢箪から駒が出る」をもじったもので、『江戸繁昌記(えどはんじょうき)』(1832~1836年・江戸時代後期、寺門静軒著)に古い用例があります。
「瓢箪から駒が出る」は、思いがけない所から意外な物が現れることを広く表します。それに対して、「嘘から出た実」は、嘘や冗談として語られた内容が、そのまま事実へと変わることに重点を置く表現です。
このように、「嘘から出た実」は、少なくとも江戸時代中期には芝居のせりふとして用いられ、その後、かるたや文学を通して広まりました。何気なく口にした嘘や冗談が、予想外の成り行きによって本当になるという、現実の不思議さを表すことわざです。
「嘘から出た実」の使い方




「嘘から出た実」の例文
- 冗談で来年は外国で働くと言っていた彼が、本当に転勤することになり、嘘から出た実となった。
- 弟は合唱大会で指揮者になるとふざけていたが、実際に選ばれて嘘から出た実になった。
- 休む口実に頭が痛いと言っていたら、本当に熱が出て、嘘から出た実となった。
- 二人は冗談で将来結婚すると話していたが、数年後に夫婦となり、嘘から出た実になった。
- いつか店を開くという彼の作り話は、仲間の協力によって嘘から出た実となった。
- 映画に出ると冗談半分で話していたところ、本当に出演の依頼が届き、嘘から出た実になった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳『仮名手本忠臣蔵』1748年。
・菊池寛『真珠夫人』1920年。























