【ことわざ】
赤犬が狐を追う
【読み方】
あかいぬがきつねをおう
【意味】
追うものと追われるものがよく似ていて、優劣や善悪などの区別がつきにくいことのたとえ。


「赤犬が狐を追う」の語源・由来
このことわざは、赤みのある毛色の犬が狐を追って走ると、追う犬と追われる狐の毛色が似ているため、一目にはどちらがどちらなのか区別しにくい、という見立てにもとづいています。犬が狐を追うという動きのある場面を用いていますが、実際に表しているのは、似たもの同士の違いを見定めにくいことです。
書物に現れる古い形として、明治39年(1906年)刊の熊代彦太郎編・幸田露伴閲『俚諺辭典(りげんじてん)』の補遺には、「赤犬が狐を追ふ」と記されています。そこでは、この言い方を新潟地方のことわざとして挙げ、赤犬の毛色は狐の毛色に似ているため、追うものと追われるものとが互いによく似て見える、という意味を示しています。
同じ記述では、赤犬と狐の姿が似通っていることを、人や物事の優劣がつけにくいことへ重ねています。もともとは目の前の光景をもとにした言い方ですが、そこから、二者の間に大きな差がなく、どちらを上と定めることも、どちらを良いと定めることも難しい場合を表すことわざとなっています。
明治43年(1910年)刊の藤井乙男編『諺語大辞典(げんごだいじてん)』にも、「赤犬ガ狐ヲ追フ」という形で収められています。そこでも、追う者と追われる者とが似ていて、差をつけにくいことのたとえとして扱われ、新潟地方のことわざであることが記されています。このように、明治期には、地方で伝わった言い方が、ことわざ辞典の中に記録されるようになりました。
昭和5年(1930年)の柳田国男『ことわざの話』では、「赤犬が狐を追ふ」に「ごちゃしてわかりにくい話」という説明が添えられています。ここでは、似たもの同士の優劣が決めにくいという意味に加えて、事情が入り組み、どちらをどのように判断すればよいのか分かりにくい場面にも、このことわざが結び付けられています。
古い資料では「追ふ」と書かれ、現在は「追う」と表記しますが、ことわざの骨組みは変わりません。赤犬と狐の似た姿を通して、争う者どうし、比べる物どうし、また、入り組んだ事情の間に、簡単には区別や優劣をつけられないことを表す言葉として伝わっています。
「赤犬が狐を追う」の使い方




「赤犬が狐を追う」の例文
- 二人の候補者は実績も主張も似通い、赤犬が狐を追うようで、どちらを選ぶべきか決めにくい。
- 兄弟の将棋の腕前は互いに一歩も譲らず、赤犬が狐を追うほど差がない。
- 二社の製品は性能も価格もほとんど同じで、赤犬が狐を追うように優劣をつけにくい。
- 地域の争いは双方の言い分に理があり、赤犬が狐を追うようで、簡単には善悪を決められない。
- 発表会の二つの作品は完成度が高く、赤犬が狐を追うというべき接戦となった。
- 委員会では二案の長所が重なり、赤犬が狐を追う状態のまま、結論を翌日に持ち越した。
主な参考文献
・熊代彦太郎編、幸田露伴閲『俚諺辞典』金港堂、1906年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂、1910年。
・柳田国男『ことわざの話』アルス、1930年。























