【ことわざ】
荒馬の轡は前から
【読み方】
あらうまのくつわはまえから
【意味】
困難な問題や扱いにくい相手には、小細工をせず、逃げずに正面から堂々と向き合うのがよいというたとえ。


【英語】
・take the bull by the horns.(困難な状況に直接・自信をもって対処する)
【類義語】
・当たって砕けよ(あたってくだけよ)
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
【対義語】
・触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし)
「荒馬の轡は前から」の語源・由来
このことわざは、「荒馬」と「轡」という、馬を扱う具体的な言葉を土台にしています。気の荒い馬に向き合うときは、後ろから近づくとかえって危なく、前から近づいて轡を扱うほうがよい。その考えを、人間が困難な問題に向き合う姿勢に移した表現です。
「荒馬」という言葉は、古くから気が荒く、乗りこなすのがむずかしい馬を表してきました。『名語記(みょうごき)』(1268年初稿、1275年増補、鎌倉時代、経尊著)は、当時の言葉を問答体で説明した書物で、その中にも「あら馬」という形が出てきます。ここでの「あら」は、手ごわく、扱いに注意を要する性質を表す言葉として働いています。
「轡」は、馬の口にはませる金具で、手綱をつけて馬を制御するための馬具です。『新撰字鏡(しんせんじきょう)』(898〜901年ごろ成立、平安時代、昌住著)にも古い言葉として関係する記述があり、また「くつばみ」という形も古くから使われました。馬を動かすには、ただ力で押さえるだけではなく、口もとに付けた轡を通して手綱をきかせることが重要でした。
馬の正面に立つことは、一見すると危険に思えます。しかし、荒馬の後ろに回れば蹴られるおそれがあり、見えないところから無理に近づくほうが危ない場合があります。このことわざには、危険をこわがって回り道をするよりも、相手や問題の正面に立ち、必要なところをしっかり押さえるほうがよい、という実際的な知恵が含まれています。
そこから現在では、馬そのものの扱いだけでなく、難しい交渉、避けてきた問題、気まずい話し合いなどに向かうときの教えとして使われます。こそこそした根回しやごまかしではなく、相手にも問題にもまっすぐ向き合う姿勢をすすめることわざです。
「荒馬の轡は前から」の使い方




「荒馬の轡は前から」の例文
- 赤字が続く企画を先送りせず、荒馬の轡は前からと考えて原因を話し合った。
- 苦手な先生への相談を避けていたが、荒馬の轡は前からと思い、放課後に質問しに行った。
- 会社の大きなトラブルほど、荒馬の轡は前からの姿勢で、最初に事実を明らかにする必要がある。
- 友人との誤解をそのままにせず、荒馬の轡は前からと決めて、直接気持ちを伝えた。
- 地域行事の準備が混乱したとき、代表者は荒馬の轡は前からと考え、全員で問題点を整理した。
- 難しい相手だからこそ、荒馬の轡は前からで、遠回しな言い方をせず誠実に説明した。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster.























