【ことわざ】
あんころ餅で尻を叩かれる
【読み方】
あんころもちでしりをたたかれる
【意味】
思いがけず、うまい話や幸運が舞い込んでくることのたとえ。


【英語】
・a windfall.(思いがけない利益・幸運)
・a lucky break.(思いがけない幸運な展開)
【類義語】
・棚から牡丹餅(たなからぼたもち)
・開いた口へ餅(あいたくちへもち)
・開いた口へ牡丹餅(あいたくちへぼたもち)
・牡丹餅で頬を叩かれるよう(ぼたもちでほおをたたかれるよう)
【対義語】
・棚から牡丹餅は落ちてこない(たなからぼたもちはおちてこない)
「あんころ餅で尻を叩かれる」の語源・由来
「あんころ餅で尻を叩かれる」は、中国の古い人物や事件に由来する表現ではなく、日本の餅菓子を使って、思いがけない幸運をおもしろく言い表したことわざです。甘くてうれしい食べ物である「あんころ餅」と、本来は催促や励ましを表す「尻を叩く」という言い方を組み合わせ、ふいに良いことが押し寄せる様子を、ややこっけいに表しています。
「あんころ餅」は、小豆の餡の中で餅をころがし、外側に餡をつけた餅を指します。近世には、すすはらいの際の間食や贈り物にも使われたとされ、咄本(はなしぼん:江戸時代に笑い話や小咄などを集めて出版した本)『万の宝』(1780年・江戸時代中期)には「景物 あんころ餠」とあります。
また、「あんころ」は「あんころもち」の略としても使われました。雑俳『川柳評万句合』明和四年(1767年)には「中入にあんころを喰ふ十三日」という用例があり、江戸時代の町人生活の中で、あんころ餅が身近な甘い食べ物として知られていたことが分かります。
一方、「尻を叩く」は、やる気を起こすように励ますこと、また、早くするように催促することを表します。このことわざでは、普通ならせかされる場面に当たる「尻を叩かれる」が、痛い棒や手ではなく、甘いあんころ餅で行われる形になります。そのため、いやな催促ではなく、思いもよらないよい話に背中を押されるような、おかしみのある表現になっています。
餅や牡丹餅を、思いがけない幸運のたとえに使う言い方は、江戸時代のことわざや戯作の中にも出てきます。黄表紙『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』(1775年・江戸時代中期、恋川春町作画)には「あいた口へもち」という用例があり、これは思いがけない幸運がやって来ることを表します。
さらに、松葉軒東井編『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序・江戸時代後期の諺語辞典)には、「棚から牡丹餠落したやうな」という形が出てきます。これは、思いもかけない幸運や、労せずに幸運を得ることを表す「棚から牡丹餅」の古い用例として示されるものです。
このように、餅や牡丹餅は、甘くてありがたい食べ物であるため、思いがけず手に入る幸運を表す比喩に向いていました。「ぼた餅で頬を叩かれるよう」も、うまい話のたとえとして挙げられ、家庭で作るうまいものとしての牡丹餅の印象と結びついています。
「あんころ餅で尻を叩かれる」は、その流れの中で、牡丹餅ではなくあんころ餅を用い、「口へ入る」「棚から落ちる」よりもさらに動きのある「尻を叩かれる」という形にしたことわざです。よいものがただ目の前に来るだけでなく、後ろから押されるように幸運が舞い込むところに、この表現らしい明るいこっけいさがあります。
「あんころ餅で尻を叩かれる」の使い方




「あんころ餅で尻を叩かれる」の例文
- 応募し忘れたと思っていた抽選に自動で参加できて、当選までしたとは、あんころ餅で尻を叩かれるような話だ。
- 閉店前の店で余ったケーキを分けてもらい、さらに割引券まで受け取って、あんころ餅で尻を叩かれる気分になった。
- 急に欠員が出たおかげで発表会に出られることになり、あんころ餅で尻を叩かれる幸運が舞い込んだ。
- 知人の紹介で思いがけずよい仕事の話が来て、あんころ餅で尻を叩かれるとはこのことだと思った。
- 旅行の予約が満室で困っていたところ、直前に広い部屋へ変更でき、あんころ餅で尻を叩かれるような展開になった。
- 落とした財布がすぐ見つかったうえ、親切な人との縁までできて、あんころ餅で尻を叩かれるような一日だった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・高橋書店編集部編『実用ことわざ新辞典 ポケット判』高橋書店、2015年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・恋川春町作画『金々先生栄花夢』1775年。























