【秋の日と娘の子はくれぬようでくれる】の意味と使い方や例文!語源由来は?(対義語)

秋の日と娘の子はくれぬようでくれる

【ことわざ】
秋の日と娘の子はくれぬようでくれる

【読み方】
あきのひとむすめのこはくれぬようでくれる

【意味】
秋の日が、暮れないように思えて急に暮れるように、大切に育てた娘も、嫁に出さないように見えて、思いのほか早く縁づくものだということ。

ことわざ博士
「くれる」は、日の「暮れる」と、娘を嫁に「くれる」とを重ねた言い方なんだよ。
助手ねこ
縁談が進みそうにないようで、思いのほか早くまとまる場面に用いるニャン。

【対義語】
・一人娘と春の日はくれそうでくれぬ(ひとりむすめとはるのひはくれそうでくれぬ)

「秋の日と娘の子はくれぬようでくれる」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざの土台には、秋になると昼の時間が短くなり、まだ明るいと思っていた夕方が、ほどなく暗くなるという季節の実感があります。「暮れる」は、太陽が沈み、あたりが暗くなって夜になることを表します。

前半の「秋の日」は、秋の一日や秋の光を指す言葉ですが、ここでは特に、夕暮れへ向かう日の短さに目が向けられています。明るさがまだ残っているように思えても、気がつけば日暮れを迎えているという移り方が、たとえの出発点になっています。

後半の「娘の子」は、親にとっての娘を指しています。「娘」は、親から見た女性の子を表し、「娘を嫁にやる」という言い方にも用いられる言葉です。このことわざでは、親が大切に育てた娘の縁談をめぐる昔の場面が背景となっています。

ここで重要なのは、「くれる」という同じ音の重なりです。秋の日については、日が「暮れぬようで暮れる」という意味になり、娘については、親が娘を嫁に「くれぬようでくれる」という意味になります。

同じ音の言葉に二つの意味を含ませる言い方を、掛詞(かけことば)といいます。このことわざでは、「くれる」という一語が、自然の移り変わりと人の縁談とを結びつけ、短い表現の中におもしろさと意外性を生み出しています。

表記には、「くれぬようでくれる」とすべてひらがなで書く形のほかに、後半の意味を明らかにするため、「呉れぬようで呉れる」と書く形もあります。ひらがなでは二つの意味が自然に重なり、「呉れる」と書けば、娘を嫁に出す側の意味が読み取りやすくなります。

このことわざは、「秋の日と娘の子はくれぬようでくれる、春の日と継母(ままはは)はくれそうでくれぬ」という対照の形でも伝わっています。秋の日と娘は、なかなかそうならないように見えて、実際には早く「くれる」ものとして並べられています。

これに対して、春の日は暮れそうでなかなか暮れず、継母は子どもに物を与えそうでなかなか与えないものとして置かれています。また、「一人娘と春の日はくれそうでくれぬ」という言い方では、親が一人娘を惜しみ、なかなか嫁に出さないことを、暮れそうで暮れない春の日に重ねています。

秋の夕暮れの早さを表す言葉には、ほかに「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」があります。河竹黙阿弥作『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)』(1862年初演・江戸時代末期)には、「秋の日の釣瓶落し」という表現が出てきます。

同じく河竹黙阿弥作『牡丹平家譚(なとりぐさへいけものがたり)』(1876年初演・明治時代)にも、秋の日が暮れやすいことを釣瓶落しにたとえる言い回しが用いられています。これらは、対象のことわざと同じ文句ではありませんが、秋の日暮れを急なものとしてとらえる比喩が、古くから言葉の中で親しまれてきたことを示しています。

「秋の日と娘の子はくれぬようでくれる」は、秋の夕方の急な変化と、縁談が思いのほか早く決まることとを、「くれる」という音で鮮やかに重ねたことわざです。季節の観察と昔の人々の暮らしを一つに結び、予想に反して事が早く進む様子を、印象深く言い表しています。

「秋の日と娘の子はくれぬようでくれる」の使い方

ともこ
地域のことわざ調べで、ひいおばあちゃんが、叔母さんの縁談は話が出るまで長かったのに、決まると早かったと言っていたよ。
健太
それなら、秋の日と娘の子はくれぬようでくれる、という昔のことわざがぴったりだね。
ともこ
秋の夕方みたいに、まだ先だと思っていた縁談が、急にまとまったということなんだね!
健太
発表では、昔の結婚の場面を表したことわざだということも、分かりやすく紹介しよう。

「秋の日と娘の子はくれぬようでくれる」の例文

例文
  • 祖母は、長く返事を待っていた叔母の縁談が急にまとまると、秋の日と娘の子はくれぬようでくれると言った。
  • 仲人は、先方が慎重なため承諾は先になると思っていたが、すぐに話が整うと、秋の日と娘の子はくれぬようでくれるを思い出した。
  • 昔の婚礼を扱う小説では、娘の結婚を急に認めた父親の心境が、秋の日と娘の子はくれぬようでくれるという言葉で表されていた。
  • 郷土のことわざを学ぶ講座で、秋の日と娘の子はくれぬようでくれるは、縁談が思いのほか早くまとまることを表す例として取り上げられた。
  • 長くためらっていた家が娘の結婚を承知したため、親戚は秋の日と娘の子はくれぬようでくれるとはこのことだと受け止めた。
  • 古い暮らしの言葉を紹介する展示では、秋の日と娘の子はくれぬようでくれるが、秋の夕暮れと娘の縁談を重ねたことわざとして示された。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・尚学図書編『故事俗信 ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・佐藤明達「『秋の日はつるべ落とし』(続き)」『天文教育』第19巻第3号、日本天文教育普及研究会、2007年。




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