【秋葉山から火事】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語)

秋葉山から火事

【ことわざ】
秋葉山から火事

【読み方】
あきばやまからかじ

【意味】
人を戒める立場にある者が、自分でその戒めに反する過ちを犯すことのたとえ。

ことわざ博士
秋葉山から火事は、守るべきことを人に説く者が、自ら同じ過ちを犯す皮肉を表すことわざなんだよ。
助手ねこ
教師が校則を破る、管理する側が決まりに背くなど、立場と行動が大きく食い違う場面に用いるニャン。

【類義語】
・火消しの家にも火事(ひけしのいえにもかじ)

「秋葉山から火事」の語源・由来

ことわざを深掘り

「秋葉山から火事」は、防火の神として敬われる秋葉山から、よりによって火事が起こるという、たいへん皮肉な取り合わせから生まれたことわざです。本来なら人々を火難から守るはずの場所が、自ら火を出すという意外さが、この言葉の核になっています。

この「秋葉山」は、静岡県浜松市天竜区にある秋葉山と、そこに鎮座する秋葉神社を指します。秋葉神社は、火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ)を祭神とし、火を防ぐ神として信仰されてきました。

秋葉山は、かつて秋葉権現(あきはごんげん)と、その別当であった秋葉寺(しゅうようじ)を合わせて呼ぶ名でもありました。秋葉寺の守護神である三尺坊権現(さんじゃくぼうごんげん)は、近世中期以降、火防の信仰と深く結び付いていきました。

中世には、この地は「秋葉大権現」と称されました。明治初年には「秋葉神社」となり、昭和二十七年には、全国の秋葉神社の総本宮として「秋葉山本宮秋葉神社」と改称されました。

秋葉山が火防の神として広く知られるようになったのは、江戸時代に入ってからです。火事が暮らしを大きく脅かした時代、人々は火災消除(かさいしょうじょ)を願い、秋葉山への信仰を深めました。

一般の人々は、秋葉講(あきはこう)という集まりをつくり、代表者が秋葉山へ参詣して、火災を免れることや家内の安全を祈りました。秋葉講の講社は、盛んな時期には全国で三万余に及んだと伝えられ、秋葉山は、火防を願う人々に広く知られた存在となりました。

また、遠江(とおとうみ)の秋葉道沿いには、秋葉山常夜灯(あきはさんじょうやとう)が数多く建てられました。村の人々が夜ごと灯明をともした常夜灯は、参詣の道しるべであると同時に、火難を避けたいという暮らしの願いを示すものでした。

このように、秋葉山は単なる山の名ではなく、「火事から守ってくれる場所」の象徴でした。だからこそ、その秋葉山から火事が出るという言い方には、守る側が守るべき務めに反するという、強い皮肉がこもります。

この火事のたとえは、やがて火災に限らず、人を導いたり、注意したり、規則を守らせたりする立場の者が、自らその過ちを犯す場合を表すようになりました。人に火の用心を説く側が自ら火を出す姿を、人の行いの矛盾に重ねたものです。

したがって、このことわざは、ただ失敗した人や、専門家が偶然失敗した場面すべてに用いるものではありません。人を戒める責任を負う者が、まさに自分の戒めていた過ちを犯したときに、その意味が最もよく当てはまります。

ことわざとしての読みは「あきばやまからかじ」と記される一方、「あきばさんからかじ」と読む形も用いられています。また、同じ発想を表す言い方として、「秋葉様の火事」という形もあります。

火を防ぐ神を祭る秋葉山が火事を出すという逆説は、人の立場と行動の食い違いを、ひと目で分かる形に表しています。「秋葉山から火事」は、指導する者ほど、まず自分の行いを正さなければならないという戒めを含むことわざです。

「秋葉山から火事」の使い方

健太
生活委員のぼくが、毎朝みんなに廊下を走らないよう呼びかけていたのに、今日、急いで走って花びんを割ってしまったよ……。
ともこ
それは秋葉山から火事だね。注意する係の健太くんが、いちばん気を付けるはずのことで失敗したんだもの。
健太
本当にその通りだよ。注意するだけで、自分が守れていなかったら説得力がないよね。
ともこ
明日からは、まず健太くんがゆっくり歩こう! そうしたら、みんなにもきっと伝わるよ。

「秋葉山から火事」の例文

例文
  • 交通安全を指導する責任者が飲酒運転で処分され、秋葉山から火事と批判された。
  • 情報管理の徹底を求めていた部署から個人情報が流出し、秋葉山から火事となった。
  • 生徒に提出期限を守るよう厳しく指導していた教師が、自ら成績資料の提出を怠るとは、秋葉山から火事である。
  • 衛生管理を監督する工場で重大な衛生違反が発覚し、秋葉山から火事の失態となった。
  • 不正防止を掲げる団体の幹部が会計を偽った事件は、まさに秋葉山から火事であった。
  • 防災訓練を取り仕切る自治会の倉庫で火気の管理不備による出火が起こり、秋葉山から火事と言われた。

主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・『日本歴史地名大系 第22巻 静岡県の地名』平凡社、2000年。


逆引き検索

言葉が思い出せないときも、意味や使う場面から探せます。



講談社刊行・全3冊

運営者・北澤篤史の著書

ことわざ・四字熟語・漢字熟語を、マンガで楽しく学べる図鑑シリーズです。

※Amazon・楽天の購入先にはアフィリエイトリンクが含まれます。

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉の表紙
ことわざ

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉

試験によく出ることわざを、マンガと解説で楽しく学べる一冊。

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉の表紙
四字熟語

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉

四字熟語をマンガで理解し、意味・漢字・使い方を覚えたい人へ。

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑の表紙
漢字熟語

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑

似た意味・同じ読みの漢字熟語の違いを、マンガと用例で学べる一冊。