【ことわざ】
雨の夜にも星
【読み方】
あめのよにもほし
【意味】
普通ならありえないと思われることが、まれには起こるということのたとえ。雨の夜には星が見えないのが普通だが、雲の切れ間から星が見えることもある、という発想にもとづく。


【英語】
・once in a blue moon.(ごくまれに起こる)
・Stranger things have happened.(もっと不思議なことも起こったことがある)
【類義語】
・雨夜の星(あまよのほし)
・網目に風たまる(あみのめにかぜたまる)
「雨の夜にも星」の語源・由来
「雨の夜にも星」は、雨の降る夜には雲におおわれて星が見えないのが普通である、という身近な経験から生まれたことわざです。ところが、雨の夜でも雲が切れれば、思いがけず星がのぞくことがあります。そこから、ふつうは起こりそうにないことでも、まれには起こる、という意味が生まれました。
このことわざでは、「雨の夜」と「星」の取り合わせが大切です。雨の夜は、空が暗く、雲が厚く、星の光を見つけにくい時間です。その中で星が見えるとすれば、それはごくまれな出来事です。つまり、この表現は、ただ「珍しい」と言うだけでなく、「ありえないと思っていたことが、思いがけず起こる」という驚きまで含んでいます。
同じ発想をもつ古い言い方に、「雨夜の星(あまよのほし)」があります。「雨夜の星」は、雨降りの夜の星という意味から、あっても見えないもの、また、きわめてまれなもののたとえとして使われます。古い用例として、浄瑠璃(じょうるり)『卯月の潤色(いろあげ)』(1707年ごろ・江戸時代中期)に、「こちと女夫はあまよのほし、どこにあるやらないやらで」という形が出てきます。ここでは、いるのかいないのか分からないほど姿が見えない夫婦を、雨の夜の星にたとえています。
さらに、雨の夜の天体を用いた表現として、「雨夜の月(あまよのつき)」もあります。『詞花和歌集(しかわかしゅう)』(1151年ごろ成立・平安時代後期、藤原顕輔撰)には、「影見えぬ君はあまよのつきなれや出でても人に知られざりけり」という歌が収められています。雨夜の月は、そこにあるはずなのに目には見えないもの、また、想像するだけで実現しないもののたとえとして使われました。
「雨夜の星」や「雨夜の月」は、雨雲の向こうにある光を「見えないもの」「まれなもの」として考える表現です。その発想を、より分かりやすく言い換えた形が「雨の夜にも星」といえます。雨の夜であっても、雲の切れ間があれば星が見えるという点に注目し、「無理だと思えることにも、まれに起こる余地がある」という意味を強めています。
類義の「網目に風たまる」も、ありえないことや不可能に近いことを表す言い方です。『古今和歌六帖』(976〜987年ごろ成立・平安時代中期)には、網の目に吹く風がとまるとしても、人の心は頼みにくい、という歌が出てきます。網の目に風がとまるほどありえない、という発想は、「雨の夜にも星」と同じく、ふつうなら起こらないことをたとえる働きをもっています。
現在の「雨の夜にも星」は、ただ望みを励ます言葉というより、めったにない出来事が実際に起こったときに使うことが多い表現です。雨の夜の雲の切れ間に星がのぞくように、常識では無理に思えたことが、まれに現実になる。その意外さと明るさを、短く印象的に表すことわざです。
「雨の夜にも星」の使い方




「雨の夜にも星」の例文
- 全員が失敗すると予想した実験が一度だけ成功し、雨の夜にも星という結果になった。
- くじ運の悪い父が一等を当てたので、家族は雨の夜にも星だと驚いた。
- 最下位だったチームが優勝候補に勝つとは、雨の夜にも星と言うほかない。
- 長年なくしたと思っていた指輪が古い机の引き出しから出てきて、雨の夜にも星のような出来事だった。
- 店を閉める直前に大口の注文が入り、雨の夜にも星と思える幸運に助けられた。
- 一度も発芽しなかった種から小さな芽が出て、雨の夜にも星のたとえがぴったりだった。
主な参考文献
・松村明監修『デジタル大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・井上宗雄・片野達郎校注『詞花和歌集』笠間書院、1970年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』.























