【ことわざ】
当たる罰は薦着ても当たる
【読み方】
あたるばちはこもきてもあたる
【意味】
悪いことをすれば、どれほど身を隠して逃れようとしても、神仏の報いは避けられないという戒め。


【英語】
・Murder will out.(悪事や秘密はいずれ明るみに出る)
【類義語】
・天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)
・天罰覿面(てんばつてきめん)
・罰は目の前(ばちはめのまえ)
【対義語】
・網呑舟の魚を漏らす(あみどんしゅうのうおをもらす)
「当たる罰は薦着ても当たる」の語源・由来
このことわざの中心にある「罰」は、ふつうの処罰というより、悪い行いに対して神仏が与える報いをいう「ばち」です。「罰が当たる」も、悪行の報いとして、神仏から現世で苦しみを与えられることを表します。
「薦」は、もとはマコモを粗く編んで作ったむしろで、のちには多くわらで作るむしろも指すようになりました。このため「薦着ても」は、粗いむしろを身にまとい、姿を隠してでも逃れようとする情景を思い浮かべさせる言い方です。
この表現は、悪い行いをした人が、目に見える場所から身を隠しても、神仏の報いまでは避けられないという発想から成っています。身を守る物としての薦と、目に見えない力としての罰とを対照させることで、罪を隠すむなしさを強く伝えています。
宮城県沿岸の民話として採録された「白馬で竜宮へ行った和尚さんと小僧さん」には、このことわざの情景を物語の形で伝える話が出てきます。この話は、気仙沼市本吉町周辺で聞き書きされた昔話の一つとして紹介されています。
その昔話では、ある和尚さんが三月の祭りの日に白馬に乗って竜宮へ行き、小僧さんが馬の尾につかまってこっそり後を追います。小僧さんは竜宮で、寺が大火にあい、和尚さんが焼け死ぬという内容の紙を見つけ、帰ってから和尚さんに知らせます。
和尚さんは火を避けようとして、津谷川へ走り、川の水でぬらした菰を身にまといます。ところが、強い風で寺の火の粉が飛び、その菰に火がついて、和尚さんは焼け死んでしまいます。話の末尾には「当たる罰は、菰かぶってても当たる」という形のことばが出てきます。
この昔話は、ことわざの情景を分かりやすく物語化した例といえます。ぬらした菰は、ふつうなら火を防ぐための道具になりそうですが、物語の中では、罪や報いから逃れるための完全な盾にはなりません。そこに、このことわざの「隠れても、逃げても、受けるべき報いは避けられない」という意味がよく表れています。
近い形として、「当たる罰は桶をかぶっても当たる」「当たる罰はすり鉢」といった言い方もあります。薦、桶、すり鉢のように、身を守ったり隠したりする物が変わっても、悪事の報いは逃れられないという考えは同じです。
現在の「当たる罰は薦着ても当たる」は、単にこわい話をする言葉ではありません。悪事を隠すよりも、悪い行いをしないこと、してしまったことは正直に改めることが大切だと教えることわざとして受け継がれています。
「当たる罰は薦着ても当たる」の使い方




「当たる罰は薦着ても当たる」の例文
- 証拠を隠しても、当たる罰は薦着ても当たるというものだ。
- 当たる罰は薦着ても当たると心得、彼は早めに謝った。
- 店の売上をごまかした責任は重く、当たる罰は薦着ても当たる。
- 家族にうそを重ねても、当たる罰は薦着ても当たるのだから、正直に話すべきだ。
- 友人の作品を自分のものとして出したなら、当たる罰は薦着ても当たる。
- 当たる罰は薦着ても当たるという教えは、悪事を隠すより改めることの大切さを示す。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・みやぎ民話の会「民話 声の図書室」プロジェクトチーム『2011.3.11 大津波に襲われた沿岸集落で、かつて聞いた《いいつたえ、むかしばなし、はなし》その3』。
・Webster’s New World College Dictionary, 5th Digital Edition, HarperCollins Publishers, 2025.























