【ことわざ】
当たらぬ蜂には刺されぬ
【読み方】
あたらぬはちにはさされぬ
【意味】
自分から関わらなければ、災いや危険に巻き込まれることはないというたとえ。蜂の巣を突くなど、自ら危険に近づかない限り刺されないという考えに基づく。


【英語】
・Keep out of harm’s way(危険な場所や状況を避ける)
・A wise man keeps away from danger(賢い人は危険から離れている)
・Let sleeping dogs lie(触れると悪くなりそうな問題には手を出さない)
【類義語】
・触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし)
・参らぬ仏に罰は当たらぬ(まいらぬほとけにばちはあたらぬ)
・君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
・七日通る漆も手に取らねばかぶれぬ(なぬかとおるうるしもてにとらねばかぶれぬ)
【対義語】
・藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)
・寝た子を起こす(ねたこをおこす)
・飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)
「当たらぬ蜂には刺されぬ」の語源・由来
当たらぬ蜂には刺されぬは、蜂そのものの性質をもとにした、身近な経験から生まれたことわざです。蜂に近づいたり、蜂の巣を突いたりしなければ刺されることはない、という具体的な場面を、危険や面倒ごとへの関わり方に移して表しています。
このことわざの「当たる」は、今の「当選する」「的中する」という意味ではなく、物事や人に直面したり、接触したりする意味に近い言い方です。つまり「当たらぬ蜂」とは、自分から近づかず、触れず、関わりをもたない蜂を表していると読めます。
蜂については、昔から「巣を刺激すれば危険が起こる」という実感が、さまざまな言い回しに取り込まれてきました。「蜂の巣をつついたよう」は、蜂の巣をつつくと多くの蜂が一斉に飛び出す様子から、大騒ぎになって手がつけられない様子を表します。この表現と同じく、当たらぬ蜂には刺されぬも、蜂の巣に手を出すか出さないかという分かりやすい対比を使っています。
実際の蜂も、巣を守るために人へ向かってくることがあります。巣に近づいたり、触れたり、刺激したりしないことが刺されないための基本であり、このことわざの比喩は、自然の中での安全なふるまいとよく結びついています。
また、このことわざには「触らぬ蜂は刺さぬ」という異形があります。「当たらぬ」と「触らぬ」は、どちらも危ないものへ直接関わらないという点で重なり、同じ発想を別の言い回しで表したものです。
同じ考え方は、蜂以外の題材にも広がっています。「触らぬ神に祟りなし」は、物事に関わりさえもたなければ災いを招かないというたとえで、「参らぬ仏に罰は当たらぬ」や「七日通る漆も手に取らねばかぶれぬ」も、直接関わらなければ害を受けにくいという発想を共有しています。
このように、当たらぬ蜂には刺されぬは、特定の人物や一つの古典の物語から生まれた言葉ではなく、危険なものへ不用意に近づかないという生活上の知恵を、蜂のたとえで短く表したことわざです。今では、争いごとや危険な誘い、面倒な人間関係などに、自分から関わらない方が安全であるという意味で使われます。
「当たらぬ蜂には刺されぬ」の使い方




「当たらぬ蜂には刺されぬ」の例文
- 壊れかけた物置に入らなければ、当たらぬ蜂には刺されぬというものだ。
- 友人同士のけんかに興味本位で口を出すのは避け、当たらぬ蜂には刺されぬと考えた。
- 怪しいもうけ話には近づかないのが一番で、当たらぬ蜂には刺されぬ。
- 危険な場所だと分かっているなら、当たらぬ蜂には刺されぬと思って通らない方がよい。
- 社内の根拠のない噂には関わらず、当たらぬ蜂には刺されぬの姿勢を貫いた。
- 知らない人からの不審な連絡には返事をせず、当たらぬ蜂には刺されぬと判断した。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『小学館プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。























