【ことわざ】
穴蔵で雷聞く
【読み方】
あなぐらでかみなりきく
【意味】
穴蔵に入って雷を聞くほど、ばかばかしいくらい用心しすぎることのたとえ。


【英語】
・overcautious(用心しすぎる)
【類義語】
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
・念には念を入れる(ねんにはねんをいれる)
【対義語】
・当たって砕けろ(あたってくだけろ)
「穴蔵で雷聞く」の語源・由来
「穴蔵」とは、地中に穴を掘って物を蓄える場所や、地下室を指す言葉です。雷の音を、外ではなく穴蔵の中で聞くという姿は、すでにかなり安全な場所に身を隠しているのに、なお怖がっている様子を思い浮かばせます。
このことわざの古い用例として、江戸時代中期の浄瑠璃(じょうるり)『愛護若塒箱(あいごのわかねぐらのはこ)』(正徳四年・1714年初演、紀海音作)に出てくる表現が知られています。この作品は、説経浄瑠璃『愛護若』の流れを受けた江戸時代の浄瑠璃作品の一つです。
『愛護若塒箱』の二段目には、「畳の上で舟を漕ぎ穴蔵(アナクラ)で雷聞く、用心深う養生も全うなさるる」とあります。畳の上で舟を漕ぐという言い方と、穴蔵で雷を聞くという言い方を並べ、用心深さを大げさに描いて笑いにしている場面です。
この古い用例では、穴蔵に「アナクラ」という読みが添えられています。一方、現在の見出しでは「穴蔵(あなぐら)で雷(かみなり)聞(き)く」という形で伝わり、「あなぐらでかみなりきく」と読むのが一般的です。
もとの表現は、雷を恐れる気持ちそのものを笑うものではありません。怖いものに用心するのは自然ですが、穴蔵という安全な場所にまで逃げ込んで雷の音を聞くとなると、用心が行きすぎている、という意味が強くなります。そこから、「ばかばかしいほど用心すること」「程度を越えて用心深いこと」を表すことわざとして定着しました。
現在このことわざを使うときは、準備や安全確認をする人をほめるよりも、必要以上に怖がっている人をやわらかくたしなめる響きになります。大切なのは、用心と臆病の境目を見分けることだといえます。
「穴蔵で雷聞く」の使い方




「穴蔵で雷聞く」の例文
- 近所の店へ行くだけなのに防災用品まで背負って出かけるのは、穴蔵で雷聞くような用心深さだ。
- 雨の予報が少し出ただけで遠足を三日前から心配し続ける兄は、穴蔵で雷聞くと言われても仕方がない。
- 資料を一度提出するだけなのに二十回も印刷し直すのは、穴蔵で雷聞くような慎重さに見える。
- 祖母は大切な指輪を家の中で三重に包んで隠し、家族から穴蔵で雷聞くと笑われた。
- 会議室の予約をしてあるのに、さらに別の部屋を二つ押さえるとは、穴蔵で雷聞くような準備だ。
- 小さな失敗を恐れて何も始められない態度は、穴蔵で雷聞くに近い。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・海音研究会編『紀海音全集 第2巻』清文堂出版、1977年。
・紀海音『愛護若塒箱』1714年初演。























