【ことわざ】
網の目から手
【読み方】
あみのめからて
【意味】
求める人や望む人が多く、あちこちから引き合いがあること。引く手あまたであること。


【英語】
・in great demand(大きな需要がある、強く求められている)
・much sought-after(多くの人に求められている)
【類義語】
・引く手あまた(ひくてあまた)
・引っ張りだこ(ひっぱりだこ)
「網の目から手」の語源・由来
「網の目から手」は、網の小さな目の一つ一つから、手が次々に差し出されるような情景をもとにした表現です。網の目は、編んだ糸や針金に囲まれたすきまを指し、古くから「網の目」の形そのものを表す言葉として使われてきました。そこから、数多いすきまの一つ一つに手が現れるほど、求める人が多いというたとえが生まれたと考えられます。
古い用例としては、江戸時代前期の浮世草子(うきよぞうし)『風流比翼鳥』(1707年)に、「されどあみのめより手を出すほどの文づかひ、返事云もむづかし」とあります。ここでは「あみのめより手を出すほど」という形で、多くの人が関わってくるため、返事をするのも難しいほどだ、という場面に用いられています。
この段階では、現在よく示される「網の目から手」だけでなく、「あみのめより手を出す」という動きのある形で使われています。網の目は数が多く、その一つ一つから手が出るという見立てによって、単に「人気がある」だけでなく、四方から求められて身動きしにくいほどの状態を、目に浮かぶ形で表しています。
江戸時代中期の雑俳(ざっぱい)にも、この表現は現れます。『川柳評万句合』明和六年(1769年)には「あみの目に手だと仲人せかすなり」という句があり、縁談や人の取り合いを思わせる場面で、望む人が多いことを「網の目に手」と言い表しています。
さらに、『川傍柳(かわぞいやなぎ)』(1780〜1783年)には、「網の目」が「網の目から手」の略として使われた例が示されています。これは、表現の全体を言わなくても、「網の目」と言えば多くの手が差し出されるたとえが通じるほど、言い回しが知られていたことを示しています。
形としては、「網の目から手」「網の目より手」「網の目に手」のように、助詞を少し変えた言い方があり、また「網の目から手が出る」「手を出す」の形でも使われました。現在の「網の目から手」は、その中から名詞的にまとまった形で残ったものです。
このことわざは、だれか一人が強く求めているというより、方々から次々と望み手が現れる状態を表します。網の目の数の多さと、そこから手が出るという少し大げさな見立てによって、「多くの人が欲しがる」「声がかかるところがたくさんある」という現在の意味につながっています。
「網の目から手」の使い方




「網の目から手」の例文
- 新しく入った人気のゲーム機は、予約の時点で網の目から手の状態だった。
- 地区の合唱大会で伴奏ができる先輩には、あちこちのクラスから声がかかり、網の目から手だった。
- 評判のよい職人には修理の依頼が重なり、まさに網の目から手となった。
- 限定販売の記念切手は、発売前から網の目から手で、すぐに売り切れた。
- 料理が上手な兄は、文化祭の屋台を手伝ってほしいと頼まれ、網の目から手の人気ぶりだった。
- その若い研究者は新しい技術に詳しく、企業からも大学からも網の目から手だった。
主な参考文献
・小学館『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・東の紙子作、奥村政信画『男色比翼鳥(風流比翼鳥)』1707年。
・『川柳評万句合』1769年。
・『川傍柳』1780〜1783年。























