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【明日夕べに及ばず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

明日夕べに及ばず

【故事成語】
明日夕べに及ばず

【読み方】
あしたゆうべにおよばず

【意味】
朝から夕方のことを考える余裕もないほど、事態が差し迫り、先のことまで考えられないこと。

ことわざ博士
明日夕べに及ばずは、目の前の危機や急用に追われ、すぐ先の見通しさえ立てられない状態を表すんだよ。
助手ねこ
災害、急病、重大な失敗への対応など、目前の処置で精いっぱいの場面で用いるニャン。

【英語】
・be in imminent peril(差し迫った危機にある)

【類義語】
・朝に夕べを謀らず(あしたにゆうべをはからず)
・朝に夕べを慮らず(あしたにゆうべをおもんぱからず)

【対義語】
・深謀遠慮(しんぼうえんりょ)
・遠謀深慮(えんぼうしんりょ)

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「明日夕べに及ばず」の故事

故事成語を深掘り

「明日夕べに及ばず」は、中国の古典『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に出てくる「朝不及夕」をもとにした言い方です。「あした」は、古くは「朝」の意味にも用いられ、「夕べ」と向かい合う言葉でした。そのため、この故事成語では「明日」を現代の「明日=あす」ではなく、「あした=朝」の意味に近く受け取る必要があります。

『春秋左氏伝』は、『春秋』の内容を史実や史話で補いながら述べる中国古典です。作者については古くから左丘明(さきゅうめい)に結びつけられてきましたが、成立や編集については複数の見方があります。いずれにしても、春秋時代の諸国の外交、戦争、人物の言動を伝える重要な文献として読まれてきました。

「朝不及夕」は、『春秋左氏伝』僖公七年の伝に、すでに切迫した場面で出てきます。斉が鄭を攻め、鄭の国が危うくなったとき、孔叔が鄭伯に国を救うための判断を促します。鄭伯が「少し待て」と言うと、孔叔は「朝不及夕、何以待君」と答えます。朝から夕方まで持つかどうかも分からないほど急なのに、どうして君主の返事を待っていられましょうか、という意味です。

この用例では、「朝」と「夕」は、一日の始まりと終わりを表すだけではありません。朝の時点ですでに夕方のことまで考える余裕がなく、国の存亡に関わる判断をすぐに下さなければならない状態を表しています。したがって、もとの言葉は単なる時間の短さではなく、危機の迫り方を強く示す表現です。

『春秋左氏伝』襄公十六年の伝にも、同じ「朝不及夕」が出てきます。魯の国の使者が晋に行き、斉との問題について助けを求める場面です。そこで「敝邑之急、朝不及夕」と述べ、わが国の急は、朝から夕方まで待つこともできないほどである、という切迫した思いを伝えています。

この襄公十六年の用例は、現在の意味にかなり近いものです。自分の国が外からの圧力に苦しみ、救援を求めるほど追いつめられているため、遠い将来の計画どころか、その日の夕方の成り行きさえ考えられない状態を表しています。ここから、「明日夕べに及ばず」は、目前の危機で手いっぱいになっているさまをいう表現として理解できます。

襄公三十一年の伝にも、「人生幾何、誰能無偷、朝不及夕、將安用樹」という形で「朝不及夕」が現れます。ここでは、人の一生はどれほどのものか、朝から夕方までのことも分からないのに、将来のために関係を築くことに何の役があるのか、という趣旨で用いられています。危機の切迫だけでなく、先々を考える余裕のなさにもつながる用法です。

また、『春秋左氏伝』昭公元年の伝には、「吾儕偷食、朝不謀夕」という近い表現も見られます。これは、朝に夕方のことをはからない、つまり先のことを考えない、または考える余裕がないという意味に通じます。この形は、日本語の「朝に夕べを謀らず」としても知られています。

「朝不及夕」と「朝不謀夕」は、字の形は少し違います。「及ばず」は、朝から夕方まで事が持ちこたえないほどの切迫を表し、「謀らず」は、夕方のことを考えたり計画したりしないことを表します。ただし、どちらも、目の前の状況が重く、先を見通すゆとりがないという点で同じ方向の意味を持っています。

日本語の「明日夕べに及ばず」は、もとの「朝不及夕」の「朝」を「あした」と読み下し、「夕」を「夕べ」と受けた形です。現代語の感覚では「明日」と書くと翌日の意味に見えやすいですが、この故事成語では、朝から夕方へという一日の中の流れが大切です。

そのため、この故事成語を使うときは、「先のことを考えたくない」という気分だけを表すのではありません。災害対応、急病、戦い、重大な失敗など、今すぐ動かなければならず、夕方や明日の予定まで考えられないほど追いつめられた場面にふさわしい言い方です。

「明日夕べに及ばず」は、朝と夕べという短い時間の対比を通して、危機の切迫を伝える故事成語です。もとは国の存亡や外交の緊急を語る重い文脈に出てくる言葉ですが、現在では、目前の対応に追われて先の見通しを立てる余裕がない状態を、簡潔に言い表す表現として用いられます。

「明日夕べに及ばず」の使い方

健太
体育館の天井から水が落ちてきて、学芸会のリハーサルを音楽室に移すことになったよ!
ともこ
今は夕方の飾り付けの相談どころじゃないね。まさに明日夕べに及ばずだね。
健太
まず楽器と衣装をぬれない場所へ運ぼう。先生への連絡も手分けして進めよう!
ともこ
うん、今日の練習予定はあとで考えよう。今は安全に片づけることを先にしよう。
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「明日夕べに及ばず」の例文

例文
  • 台風で避難所に移る人が相次ぎ、町役場は明日夕べに及ばずの忙しさとなった。
  • 祖母が急に体調を崩し、家族は明日夕べに及ばず、旅行の予定など考えられなかった。
  • 試合会場で停電が起こり、運営係は明日夕べに及ばず、まず観客の安全確認に追われた。
  • 締め切り直前に大きな誤りが見つかり、編集部は明日夕べに及ばずの状態に陥った。
  • 倉庫で火災警報が鳴り、担当者は明日夕べに及ばず、翌週の納品計画まで考える余裕がなかった。
  • 被災地では物資の配布と安否確認が重なり、職員たちは明日夕べに及ばずの状況で働いた。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北京・商務印書館・小学館共同編集『中日辞典 第3版』小学館、2016年。
・中華民国教育部『成語典』2020年。
・『春秋左氏伝』。





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