【ことわざ】
秋の夕焼け鎌を研げ
【読み方】
あきのゆうやけかまをとげ
【意味】
秋の夕焼けは翌日の晴天のしるしとなりやすいので、鎌を研いで稲刈りや草刈りの準備をせよ、ということ。


【英語】
・Red sky at night, shepherd’s delight.(夕焼けは、翌日の好天のしるし)
【類義語】
・夕焼けに鎌を研げ(ゆうやけにかまをとげ)
「秋の夕焼け鎌を研げ」の語源・由来
「秋の夕焼け鎌を研げ」は、空の色を眺めて終わる言葉ではなく、明日の仕事の支度まで促すことわざです。秋は稲刈りや草刈りに晴天が大切な季節であり、夕方に西の空が赤く晴れ渡れば、夜のうちに鎌の刃を整え、翌朝すぐに働けるようにするという生活の知恵が、この短い言葉にまとめられています。
もとになっているのは、「夕焼けの翌日は晴れやすい」という天気の見立てです。夕焼けが見えるときは、西の空がよく晴れていることが多く、日本付近では天気が西から東へ移ることが多いため、その晴れ間が翌日の天気につながりやすいのです。特に春や秋には、この見立てが当てはまりやすいとされています。
この見立てを「明日は晴れそうだ」で止めず、「鎌を研げ」という具体的な行動に結び付けたところに、このことわざの特色があります。収穫や草刈りは、雨が降れば進めにくくなる仕事ですから、晴れの兆しを見た夕方に道具を手入れし、翌日に備えることは、農家にとって実際に役立つ備えでした。
記録された形としては、全国学農聯盟編『農事必携・全国天気予知』(1948年・昭和23年、学習社)に、「秋の夕焼、鎌をとげ。(あすは晴)」とあります。ここでは、秋の夕焼けが翌日の晴れを知らせるものとして、鎌を整える行動とともに簡潔に記されており、「夕焼け」と「鎌を研ぐこと」とが、農作業の備えとして直接結び付いています。
『いまり』(1985年・昭和60年、伊万里市刊)に掲載された郷里の回想には、「明治、大正のころ」の人々が空や風から天候を知った言い伝えの一つとして、「秋の夕焼鎌をとげ」が挙げられています。これは後の時代に書き留められた回想ですが、近代の農村の暮らしの中で、この言い方が、空模様と作業の支度を結ぶ言葉として受け継がれていたことを伝えています。
地域の生活記録にも、この言葉は出てきます。『愛媛県史 民俗 下』(1984年・昭和59年、愛媛県刊)には、庄内地方に伝わった天候の知恵の一つとして「秋の夕焼鎌を研げ」が記され、『遠賀町誌』(1986年・昭和61年、遠賀町刊)には、「秋の夕焼鎌をとげ、夏の夕焼桶すけよ」という形が記されています。地域によって、秋の晴れへの備えを示す言葉が、夏の空模様を扱う言葉と組み合わされながら伝わったことが分かります。
また、このことわざには、「夕焼けに鎌を研げ」という、季節を明示しない形もあります。「秋の夕焼け鎌を研げ」という形は、稲の実る季節と翌日の晴れを待つ農作業の姿をいっそう鮮明にし、夕焼けを見てすぐに備えるという、昔の暮らしの判断を今に伝えています。
「秋の夕焼け鎌を研げ」の使い方




「秋の夕焼け鎌を研げ」の例文
- 祖父は赤く染まった西空を見上げ、秋の夕焼け鎌を研げとばかりに、翌日の稲刈りに使う鎌を手入れした。
- 収穫体験の前日、秋の夕焼け鎌を研げの言葉どおり、農園では刈り取りの道具を整えた。
- 秋の夕焼け鎌を研げを思い出した父は、晴れ間を逃さぬよう、畑の草刈りの支度を済ませた。
- 村の作業小屋では、秋の夕焼け鎌を研げにふさわしい夕空を見て、翌朝の稲刈りの段取りを確かめた。
- 雨上がりの夕方に鮮やかな夕焼けが広がり、母は秋の夕焼け鎌を研げにならって、翌日の畑仕事の用意を始めた。
- 地域の聞き書き帳には、秋の夕焼け鎌を研げという、天気を見て農作業に備える言い伝えが記されている。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・全国学農聯盟編『農事必携・全国天気予知』学習社、1948年。
・愛媛県『愛媛県史 民俗 下』愛媛県、1984年。
・遠賀町『遠賀町誌』遠賀町、1986年。
・伊万里市『いまり』第376号、伊万里市、1985年。























