【ことわざ】
一寸延びれば尋延びる
【読み方】
いっすんのびればひろのびる
【意味】
目の前の困難を何とかしのいでいけば、先に行って楽になるというたとえ。


【類義語】
・一寸延びれば尺(いっすんのびればしゃく)
【対義語】
・寸進尺退(すんしんしゃくたい)
「一寸延びれば尋延びる」の語源・由来
「一寸延びれば尋延びる」は、長さの単位を使って、当面の苦しさをしのぐことの大切さを表したことわざです。一寸はごく短い長さであり、尋はもともと両手を左右に広げたときの幅を基準にした長い単位です。このことわざでは、一尋を約六尺、すなわち一・八一八メートルほどとして考えます。
もとの考え方は、「いま一寸だけ延びることができれば、あとで一尋延びるのと同じ結果につながる」というものです。ここでいう「延びる」は、物の長さが増すことだけでなく、苦しい場面を少しでも先へつなぎ、命や望みや余地を保つという意味へ広がっています。短い一寸と長い尋を対比することで、「ほんの少しの辛抱が、後の大きな余裕につながる」という教えを強く表しています。
古い用例としては、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)に結びつく形が伝わります。『毛吹草』は俳諧(はいかい)の作法や作例を集めた書物で、俚諺(りげん:世間で言いならわされたことわざ)も収めています。ことに巻二の世話に関する部分は、早くから俚諺資料として知られました。
この古い形では、「一寸伸びれば尋伸びる」と、「伸びる」の字で示されることがあります。現在の見出しとしては「一寸延びれば尋延びる」も用いられ、「伸びる」と「延びる」は、どちらも「のびる」と読んで、短く持ちこたえたことが後の大きな余裕につながるという同じ考えを表します。
また、「一寸延びれば尋」のように後半を略した形や、「一寸延びれば尺」の形も伝わります。尋より尺のほうが短い単位ですが、どちらの形でも、一寸という小さな単位と、それより長い単位を対比して、「目の前の少しの切り抜けが、先の楽さにつながる」という発想を保っています。
このことわざは、単に「がんばればよい」と励ますだけの言葉ではありません。いま苦しい人に向かって、遠い先の大成功を急に求めるのではなく、まず当座を少ししのぐことに意味がある、と教える言葉です。そのため、病気、心配事、仕事、学習など、今すぐすべてを解決できなくても、もう少し踏みとどまれば道が開ける場面に合います。
「一寸延びれば尋延びる」の使い方




「一寸延びれば尋延びる」の例文
- 試験前の苦しい一週間を乗り切れば勉強の流れがつかめるので、一寸延びれば尋延びると思って机に向かった。
- 店の開店準備は大変だったが、最初の山場を越えれば一寸延びれば尋延びるで、仕事の手順が整ってきた。
- けがのリハビリはつらい日が続いたが、一寸延びれば尋延びると考えて、今日の目標だけをこなした。
- 家族の引っ越し作業は荷造りがいちばん苦しく、一寸延びれば尋延びるで、そこを過ぎると片付けは進みやすくなった。
- 新しい委員会の仕事に慣れるまでは不安だったが、一寸延びれば尋延びるで、数日後には役割が分かってきた。
- 交渉は最初の返事をもらうまでが難しく、一寸延びれば尋延びるという思いで、丁寧な説明を続けた。
主な参考文献
・小学館『大辞泉 第二版』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松江重頼著、新村出校閲、竹内若校訂『毛吹草』岩波書店、1943年。























