【ことわざ】
祈るより稼げ
【読み方】
いのるよりかせげ
【意味】
困難に出会ったとき、神仏に祈ってすがるだけでなく、自分で働き、努力して道を開けということ。


【英語】
・God helps those who help themselves(自ら努力する者を神が助ける)
【類義語】
・念仏申すより田を作れ(ねんぶつもうすよりたをつくれ)
・詩を作るより田を作れ(しをつくるよりたをつくれ)
・座禅組むより肥やし汲め(ざぜんくむよりこやしくめ)
【対義語】
・苦しい時の神頼み(くるしいときのかみだのみ)
「祈るより稼げ」の語源・由来
「祈るより稼げ」は、「祈る」と「稼げ」を対にして成り立つことわざです。「祈る」は、神や仏に請い願うことを表し、「稼ぐ」は、生計を立てるために一生懸命働くこと、また、働いてお金を得ることを表します。つまり、神仏に願う心そのものを否定するのではなく、困ったときに願うだけにとどまらず、自分の働きで状況を変えよという教えを、短く示しています。
「稼ぐ」という言葉は、もともと収入を得ることだけに限らず、努力する、励む、力を尽くすという意味でも使われてきました。古い用例では、『栂尾明恵上人遺訓』(1238年)に、「努力する」という意味の「かせぐ」が出ており、のちに、仕事を一生懸命に行う、働いて収入を得るという意味へ広がっています。
このことわざの力点は、「祈る」と「稼ぐ」のどちらが現実を動かすかという対比にあります。祈りは願いを心に抱く行為ですが、「稼げ」は命令形であり、すぐに行動せよという響きをもっています。そのため、「祈るより稼げ」は、幸運を待つよりも、働く・工夫する・努力するという実際の行動を選べという形で受け止められてきました。
同じ考え方をもつ言い方に、「念仏申すより田を作れ」があります。これは、極楽往生を願って念仏を唱えるより、田に出て米を作れ、すなわち、直接生活の役に立つ仕事に励めという意味です。信仰や祈りを軽んじるというより、目の前の生活を支えるためには、願うだけでなく働くことが必要だという、庶民的で実際的な考えを表しています。
また、「詩を作るより田を作れ」や「座禅組むより肥やし汲め」も、実生活に直接役立ちにくいことより、生活を支える仕事に精を出せという発想をもつ言い方です。これらのことわざは、風流・修行・祈願のような精神的な営みと、田を作る・肥やしを汲む・稼ぐといった実際の働きを対比させ、暮らしの困難を乗り越えるには、行動が欠かせないことを示しています。
「祈るより稼げ」は、こうした実益を重んじることわざの流れの中で理解できます。困ったときに神仏へ願う心は人間らしいものですが、このことわざは、願いをかなえるために、自分が何をするかを問います。そこに、他力に頼りきらず、自分の力で生活を切り開こうとする、働く人々の知恵がこめられています。
現在では、金銭を稼ぐ場面だけでなく、勉強、仕事、練習、計画の立て直しなどにも広く使えます。合格を祈るだけでなく勉強する、商売繁盛を願うだけでなく工夫して働く、成功を待つだけでなく準備するというように、「願い」を「行動」へ移す場面で生きることわざです。
「祈るより稼げ」の使い方




「祈るより稼げ」の例文
- 商売繁盛を願うだけでなく、祈るより稼げの気持ちで品物の並べ方を工夫した。
- 合格祈願に行った兄は、祈るより稼げと自分に言い聞かせて机に向かった。
- 大会で勝ちたいなら、祈るより稼げの精神で毎日の練習を積み重ねるべきだ。
- 家計が苦しいとき、父は祈るより稼げと言って休日にも働き方を見直した。
- 新しい企画が成功するか不安だったが、祈るより稼げと思い、資料作りに力を入れた。
- 祈るより稼げということわざは、願うだけでなく行動する大切さを教えている。
主な参考文献
・三省堂編修所編『新明解故事ことわざ辞典 第二版』三省堂、2016年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。























