【故事成語】
寒松千丈の節
【読み方】
かんしょうせんじょうのせつ
【意味】
厳しい状況でも節操や信念を堅く守り、変えないことのたとえ。


【英語】
・unwavering integrity.(揺るがない高潔さ)
【類義語】
・歳寒の松柏(さいかんのしょうはく)
・志操堅固(しそうけんご)
・疾風に勁草を知る(しっぷうにけいそうをしる)
【対義語】
・変節(へんせつ)
・無節操(むせっそう)
「寒松千丈の節」の故事
「寒松千丈の節」は、中国の歴史書『旧唐書(くとうじょ)』(945年・五代後晋、劉昫ら撰)に出てくる表現にもとづく故事成語です。『旧唐書』は唐の歴史を記した二十四史の一つで、本紀二十巻、志三十巻、列伝百五十巻から成る全二百巻の史書です。
もとになった句は、『旧唐書』巻一百五十五、穆寧(ぼくねい)らの列伝の末尾にある史臣評に出てきます。この巻には、穆寧、崔邠、竇群、李遜、薛戎らの人物伝が収められています。
穆寧は、唐に仕えた人物です。列伝には、穆寧が清く慎み深く、剛直で、気節を重んじた人として描かれています。
安禄山が反乱を起こしたとき、穆寧は義兵を起こし、反乱側に立った者を討ちました。また、史思明が攻めてきて使者を送って誘ったときも、その使者を斬り、反乱軍に従いませんでした。
のちにも穆寧は、強い立場の人にへつらうことを好みませんでした。列伝には、権力者に仕えることができず、またその人々からも扱いにくい人物として警戒されたことが記されています。
その人物評として、『旧唐書』には「穆秘監之剛正不奪,如寒松倚巖,千丈勁節」とあります。これは、秘書監を務めた穆寧の剛直さは奪うことができず、寒中の松が岩に寄りかかり、千丈にも及ぶ強い節を持つようである、という意味です。
ここでいう「寒松」は、寒さの中に立つ松のことです。厳しい冬でも松が緑を失わない姿を、人が苦難の中でも節操を変えない姿に重ねています。
「千丈」は、非常に高く、長いことを表す言い方です。松が高くそびえるように、穆寧の節義が大きく、揺るぎないものであることを強めて述べています。
「節」は、もとは竹や草木のふしを表す字ですが、心のうえでは「みさお」、つまり志を固く守ることも表します。そのため「千丈勁節」は、植物の固いふしの姿と、人の堅い節操の意味とが重なった表現になっています。
この松の比喩は、『論語』子罕に由来する「歳寒の松柏」とも通じます。寒い時期になって初めて松や柏がしぼまないことが分かるように、困難の時に人の節操の堅さが分かる、という考え方です。
後に日本語では、「寒松千丈」という四字の形や、「寒松千丈の節」という言い方で用いられるようになりました。いずれも、厳寒に耐える松の姿を借りて、節義をずっと堅く守り続けることを表します。
現在の「寒松千丈の節」は、単に頑固であることをほめる言葉ではありません。正しいと思う道を、苦しい時や不利な時にも曲げずに守る姿を、寒さに耐える松の気高さに重ねてたたえる故事成語です。
「寒松千丈の節」の使い方




「寒松千丈の節」の例文
- 彼は強い圧力を受けても方針を曲げず、寒松千丈の節を示した。
- 不利な立場になっても約束を守り抜く姿に、寒松千丈の節が感じられた。
- 寒松千丈の節をもつ人は、利益のために簡単に信念を変えない。
- 校長は、困難な時代にも教育の理念を守った先生を寒松千丈の節と評した。
- 友人のために正しい証言をした彼女には、寒松千丈の節があった。
- 会社が苦しい時にも公正な取引を続けた社長の姿勢は、まさに寒松千丈の節であった。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢検 漢字ペディア』公益財団法人日本漢字能力検定協会。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』Oxford University Press.
・Merriam-Webster, Incorporated『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster, Incorporated.
・劉昫ら『旧唐書』945年。























